憑依先が朱菜ちゃんだった件
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第9話 改訂版(2018/11/07)
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回は話が割と短い上、樹妖精のあの人アンチと捉えられかねない遣り取りがありますが、私は別にあの人が嫌いな訳では無い上、アンチにしたつもりもないのでその点のみご了承下さい。(笑)
【視点:リムル】
幹部メンバーと共に豚頭族の軍勢対策の会議を始め早数十分。その背後にいるであろう黒幕の予想をしていると、蒼月と蒼影が何かに反応したのか同時にピクリと一瞬だけ動いた。
「……どうかしましたか?蒼月、蒼影」
「偵察中の影分身に接触した者がいた様で、思念伝達が来ました」
「リムル様と朱菜様に取り次いで貰いたいとのことですが、如何いたしましょう?」
「俺と朱菜にか?誰だ?ガビルみたいな奴だったら会いたくないんだけど」
「無礼者の類ではありませんが、大変珍しい相手です」
「ジュラの大森林の管理者―――樹妖精です」
樹妖精!?樹妖精って、あれか?知性ある種族の雄を誘惑して、最終的には養分にしちゃうエロ&デンジャーなお姉ちゃんか?ちょっと会ってみたい気もするけど、養分にされるのは嫌だな。
………ん?今、蒼影は樹妖精をジュラの大森林の管理者って言ったよな?ってことは、その樹妖精さんが国王的ポジで、俺は地方領主みたいなもんじゃね?
…………会わないって選択肢が最初から無ぇじゃん。会わなかったら一族郎党どころか領民諸共養分にされかねないじゃん。
「……お呼びしてくれ」
「「は」」
俺が樹妖精さんをお呼びする様に言うと、蒼月と蒼影は同時に返事をし、それから大した間もなく1枚の木の葉が何処からともなくテーブルへと舞い落ちてきた。
そして、舞い落ちた木の葉がテーブルと接触すると共に旋風の様な魔素の衝撃波が発生し、木の葉の落ちた場所に1体の妖精が姿を現した。
「初めまして、“魔物を総べる者”。そして、“安寧秩序を為す者”及びその従者たる皆様。突然の訪問、申し訳ありません。私は樹妖精のトレイニーと申します。どうぞ、お見知りおき下さい」
あれ?エロいお姉ちゃんじゃなくて清楚系のお姉ちゃんが出てきたぞ。ちょっと予想外――いや、これは誘い攻めのパターンか?襲われ易い清楚系を装いながら、襲ってきた相手を捕食する的な?
ってか、トレイニーさんとやらは俺と朱菜に視線を向けながら“魔物を総べる者”、“安寧秩序を為す者”って言ってたけど、一体どういう意味だ?
………取り敢えず、魅了されない様に気をしっかり持ちつつ、失礼の無い様に応対しておこう。
「こちらこそ、御初に御目に掛かる。えー…、そういえば集落の名前を決めて無かったな。住民の殆どが鬼族で構成されてるし、鬼隠れの里でいいか。俺はこの鬼隠れの里で皇を務めているリムル=テンペストです」
「私はリムル様の補佐役である大老を務めている大筒木朱菜です。…………自己紹介も終えた所で単刀直入にお尋ねします。トレイニー様は本日、どの様なご用向きでこの里にお越しになられたのでしょうか?」
「魔物を総べる者――リムル=テンペスト。そして、安寧秩序を為す者――大筒木朱菜。あなた方に豚頭帝の討伐を依頼する為、本日は罷り越しました」
……このお姉ちゃん、笑顔で何言ってんの?
「お、俺と朱菜に豚頭帝の討伐依頼、ですか?」
「ええ、そうです。リムル=テンペスト様」
どうやら、俺の聞き間違いではない様だ。ってか、このお姉ちゃんにっこり笑顔で言い切ってきやがった。
「いきなり現れたかと思えば随分と身勝手な物言いだな、樹妖精。何故、この里に来た?今でこそ、里の住人は全員が大鬼族以上の魔物に進化しているが、つい先日まで大半が人鬼族だった。このジュラの大森林には人鬼族より有力な種族はいるだろう?」
「確かに、あなた方――元大鬼族の里が健在であれば、そちらに出向いていたことでしょう」
「……つまり、私達がこの地に移ったからトレイニー様もこの地にお越しになられたということですか?」
「そうでもあり、そうでもないと答えるのが正解です。元大鬼族の里が健在であっても、リムル様の存在は無視できなかったのでこの地には訪ねていたことでしょう。
豚頭帝と豚頭族の軍勢の襲撃を受ければ樹妖精だけでは抵抗もできず、樹人族の集落は滅ぼされるでしょう。ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです」
「俺達にとって豚頭帝が存在すること自体、まだ仮定でしかないんだが?」
「樹妖精はジュラの大森林で起こったことの殆ど把握しております。あなた方の予想通り、豚頭帝は存在していますよ?」
トレイニーさんが茶請けのうす塩風ポテチを食べながらそう言うと、現大鬼族組であるリグルド達がざわついた。ってか、トレイニーさん。緊急事態の割には落ち着き過ぎじゃないですかね?ポテチ喰いながら、「まぁ、美味しい」とか言ってる場合ですか?
「……えっと、トレイニーさん。取り敢えず、返事は保留にさせて貰っていいか?一応、俺はこの里の長だからな。里の者の安全を最優先に考えないといけないし、元大鬼族である鬼達と共に戦う気はあるが、率先して藪を突く気はないんだ」
「……承知しました」
俺が里長としての意見をはっきりと告げると、トレイニーさんは微笑を浮かべたまま返答してくれた。どうやら機嫌を損ねることは無かった様だ。そして、トレイニーさんの為の椅子と茶を用意し終えた後、俺達は会議を再開した。
「……対策会議を続ける。豚頭帝の存在が確定した訳だが、豚頭帝と豚頭族達の目的が何か、予想できる者はいるか?」
「……豚頭帝は『飢餓者』という特殊技能を生まれる時に保有すると聞いたことがあります」
「『飢餓者』?それはどんなスキルなんだ?朱菜」
「捕食した魔物の性質を一定確率で自分のものとするスキルです。同じ魔物を数多く捕食すれば、その分性質獲得の確率が上がるそうです」
「リムル様の特殊技能『捕食者』の下位互換といえるスキルですね」
「……大鬼族の里が襲撃された時も生きたまま捕食された者や亡骸を食い尽くされた者達がいました」
「貴女はそれを行った豚頭族を例外なく滅していましたね。雷を纏った腕で体を貫いたり、広範囲に広がる炎で焼殺したり、鮫の形をした水弾の衝撃で内臓を破裂させたり、真空の刃で切り刻んだり。
他にも風を乱回転させながら球状形成したものや黒炎を乱回転させながら球状形成したものをぶつけたり、灰すら残さぬ黒炎で焼殺したり、砂を使って地面に引き摺り込んで圧殺したりと、色々な方法で同族が滅されたからこそ、豚頭族は早々に大鬼族の里から撤退したのかもしれません」
「……私が里に攻め込んできた豚頭族にどういった対処を行ったか、随分と詳しいですね。トレイニー様には覗き趣味でもおありなのでしょうか?」
「先程も言いましたが、樹妖精はジュラの大森林で起こったことの殆ど把握しておりますので」
「つまり、豚頭族の軍勢が大鬼族の里に進軍していることを知っていながら、私達にそのことを教えなかったということですか?
そして、自分達の集落が滅びに直面した途端、見捨てた種族すら巻き込んで助力を求めているんですか?随分と自分勝手ですね。恥という言葉を知っていますか?」
しゅ、朱菜とトレイニーさんが笑顔で毒舌を吐き合ってる!2人共見惚れてもおかしくない笑顔の筈なのに、見惚れることもできない。ってか、2人を中心に部屋の温度が急激に下がってる気がするぞ!
ってか、話が脱線してる。今の空気を如何にかする為にも無理矢理にでも話を戻そう!
「と、取り敢えず、豚頭族の狙いはジュラの大森林に存在する大鬼族や蜥蜴人族を含む上位種を捕食し、その力を奪うってことだよな?
ってことは、ウチも高確率で狙われるな。仙鬼に帝鬼、月鬼、羅刹、修羅、忍鬼、妖鬼、大鬼王、大鬼候、大鬼将軍、大鬼族。嵐牙狼族もか?
豚頭帝にとっては御馳走の並べられたテーブルと言っても過言じゃないよな?」
「リムル様、ご自分のことをお忘れではないですか?種族は異なってもリムル様は朱菜と同属の妖怪仙人ですよ?」
「元が粘体生物だからな。俺なんて無視されそうな気もするけど、それはそれで助かるか?油断している所を逆に捕食できたら楽に倒せそうだ」
………まぁ、何はともあれ他人事ではなくなったな。紅麗達に豚頭帝を討たせてやりたいし。
「……そういえば、お伝えするのを忘れていました。此度の豚頭帝の誕生に魔人が関与しているのは確認済みです。そして、その魔人は十大魔王のいずれかの手の者です」
………森で起こったことの殆ど把握している、か。外面に反して腹黒にお姉ちゃんだ。暗黒物質を煮立てて焦げ付かせたのをブラックホールにぶちこんで黒蜜でもぶっかけた物体Xでも腹ン中に隠してんじゃねぇか?
魔王が関与していると聞かされて俺が動かない訳が無いって知っているからこそ、魔王と魔人のことを口にしたよな。………腹をくくるしかないか。
後書き
今回の後書きでは本文内でのことを2つ程補足して置きたいと思います。
まず、リムルが想像していた樹妖精について
これは原作での清楚系樹妖精ではなく、Re:Monsterのエロ系樹妖精を想像していたという形に変更してみました。(笑)
次は朱菜による豚頭族の滅殺方法について
本文内でも分かると思いますが天照で焼殺したり、流砂瀑流からの砂瀑大葬で圧殺したりしてますが、それ以外にも風遁・螺旋手裏剣でミンチにしたり、爆遁で爆殺したり、灼遁で木乃伊にしたり、溶遁で溶かしたり、塵遁で原子分解したりしています。
以上、本文内では説明しきれなかった補足でした!(笑)
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