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艦隊これくしょん〜侵食された者の決意〜

作者:村雲恭夜
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プロローグ

鎮守府は燃えていた。突然の襲撃であった。
「大淀、被害を報告しろ!」
俺は軍服を羽織りながらヘッドセットを用いて、連絡相手__軽巡洋艦·大淀へと問い掛けた。
『現在、鎮守府近海にて多数の深海棲艦反応!被害は鎮守府を含め現在も拡大中!』
「くそっ…!市民の避難を優先しろ!残った艦娘で応戦…いや、残ってる奴らも全員下がらせろ!シュミレーションで焼き尽くす!」
唯一まだ火の手が上がっていない提督室に到着した俺は、すぐに引き出しからゲーマドライバーと一本のガシャットを取り出すと、すぐに窓から外に出る。
<BANG BANG SIMULATIONS!>
「変身!」
すぐ様起動したガシャットを差し込み、レバーを展開。光と共にすぐ様スナイプレベル50に変身を完了させる。
『無茶が過ぎます!艦娘でもない貴方が戦って勝てる数じゃない!大体、それも対深海棲艦用に作られた物でも無いただの模造品。そんなもので足止め出来るとお思いですか提督!?』
ヘッドセットから大淀の大声が響く。そんなのは百も承知だった。
「分かってるよ」
『ならば何故自らの命を犠牲にしようと…!瑞鶴さんも怒りますよ!?』
「まぁだろうな」
市街で市民の誘導を行っている嫁を思いながら、スクランブルガンユニットを構え、陸に上がってくる深海棲艦を撃ち抜く。
「でも、あいつなら分かってくれんだろ。俺はそう言う性格なんだ」
『馬鹿じゃないんですか!?ただ一つの命を…!!』
「ただ一つだからこそ賭けるべき物だろう。守るべきものの為に命をかけて戦えるなら人冥利に尽きる。過去の英傑達と、お前たちもそんなもんだっただろうよ」
砲撃と空襲をその身に受けながらもスクランブルガンユニットで応戦をする。しかし、やはりと言うか深海棲艦。紛い物の攻撃をもろともしない。
「ちっ…流石深海棲艦。無駄な耐久値をお持ちのようで…!」
レバーを戻し、再び引こうとしたその時。

オチロ…!

何処からか声が響き、俺の身体は吹き飛ばされた。
「ぐあっ!」
〈ガッシューン〉
ガシャットがドライバーから離れ、変身は強制解除。生身のまま地面を転がる。
『提督!?提督!?』
大淀の悲痛な叫びがヘッドセットを介して聞こえる。無理もない、こちらの状況を把握しておきながら、こちら側に対して何も出来ない。
遠すぎた。今の彼女達と俺の場所は余りにも遠すぎた。
これが空母なら航空隊を出せば援護は出来る。だが彼女は軽巡洋艦、援護はできない。
『提督!?返事を_』
「狼狽えんな…馬鹿大淀…!」
幸い、まだ喋れる程度には身体は動かせる。伊達に幸運艦と長い月日を共にしただけはあったのかもしれない。
『提督!やはり無理です!即時撤退を進言します!後は私たちに…!』
「それじゃあ避難してる人々を完全には守れないだろうが…馬鹿かテメェ」
俺は立ち上がり、軍服のポケットからもう一つのガシャットを取り出す。
それは金色で龍が刻まれている現状最強のガシャット。
「人を、人類を、海の守るのが艦娘だろうが。だったら、そんなお前らを守るのが提督の仕事のうちだっつうの。分かりやがれ」
そして、そのガシャットを起動させる。
〈DRAGO KNIGHT HUNTER Z!〉
『!?提督、それは_!』
大淀の静止より早く、それを差し込み、レバーを開いた。
〈ガッチャーン!レベルアップ!〉
「龍、轟雷!」
〈ドラゴーナイトー!ドラゴナイトー!ハンター!〉
ハンターゲーマが現れ、両手両足に装備後、フェイス部分のファングはマスクと一体化し、龍のエンブレムが刻まれる。
本来想定しない変身。初期レベル2を超えた最も危険な変身。
仮面ライダードラゴ·ハンターゲーマレベル5。
製作者からも止められていた、今俺が変身できる最後の力。
「纏めて焼き払ってやるよ、掛かって来やがれ!」
〈ガシャコンツインブレード!〉
虚空から現れたガシャコンウェポン、ツインブレードを持ち、近くにいた深海棲艦を一瞬で薙ぎ払う。
『提督!直ぐにそれの使用を止めてください!死んでしまいます!』
「元より死に体に近い状態だ、お前らを守って終れるなら本望だ!」
ツインブレードを振るい、次々と深海棲艦を吹き飛ばす。
オチロ…!
またも声が聞こえる。そして…
「しゃおらぁっ!」
俺はそれをぶった斬った。
「長距離砲撃たぁやるな!流石はってとこか。だがな」
ドラゴナイトハンターZをツインブレードのスロットに差し込むと、それを構える。
「長距離攻撃はこっちの特権だオラァ!」
〈ドラゴナイト!クリティカルフィニッシュ!〉
ツインブレードをぶん回すと、紅い龍が現れ目の前の深海棲艦をごと如く吹き飛ばしていく。
「ぐっ…!」
体制を崩すも、直ぐに踏み止まり近付いてきた深海棲艦を蹴り飛ばす。
やはり、もう身体は持たないと思った方が良いらしい。
「まぁいいか…。提督の仕事も案外悪くなかった。最後にいい仕事させてもらったぜ、大淀」
『提督?何を言って…!』
「先行ってるぜ。ああ、あと伝言頼む」
俺は腰のスロットホルダーにドラゴナイトハンターをセットして、大淀に伝言を頼む。
「慌てて追い掛けてくんな。追いかけて来たら追い返してやるってな」
〈ドラゴナイト!クリティカルストライク!〉
紅い龍が俺の足に纏わり付き、空に飛ぶと、まるで地を這う様に低空で深海棲艦を吹き飛ばす。
断末魔が響き、それでも龍は飛び、海上に飛び出す。
『提督_!』
ヘッドセットの電源をそこで落とし、大淀の通信を切る。あいつなら上手くやってくれると願いつつ、来る衝撃に備える。
「テメェ等、纏めて此処で沈んで行きやがれ!」
もう一度スロットホルダーのボタンを押し、二度目のクリティカルストライクを発動。威力を増大させ、敵の総大将目掛け飛び続ける。
オノレ…!
砲撃が飛び交う。
が、しかしそれは当たらない。だが俺の身体は間違いなくダメージを受けている。
「俺の命くらい持って行かせてやるよ!でもあいつ等の命と明日は奪わせねぇ!!」
そして、その渾身の一撃は総大将格であろう深海棲艦に深く入り、その爆発に俺は飲まれた。
だが、その時ふと思ってしまった。
〈ああ、でもやっぱり…〉
〈あいつ等ともう少し、過ごしていたかった気がするな…〉
〈それに…瑞鶴…あいつとも、もう少し…〉
そしてそこで俺の意識は途絶えた。




『…』
一人の深海棲艦は海に立っていた。名は空母ヲ級。ただ一人、人との交流を持っており、この地にいた物好きな深海棲艦。他の深海棲艦とは違い、ちゃんとした言語を介し、ちゃんとした思考を持った深海棲艦の中でも異端者〈イレギュラー〉。
その日、彼女は街から離れていた。だから突然の深海棲艦大進行や鎮守府壊滅の事件は知らなかった。
『…あの人は』
ヲ級は海に浮かぶ人を見つけ、近付く。
それは紛れもなく、ヲ級との最も交流が深かった人であり、また恩人でもある鎮守府の提督だった。
身体はボロボロで、彼のモチーフでもあった軍服は焦げ、生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
だが、これはただ一人で戦い、そして散ったのだと唐突に悟った。
『…そんな、こんな事って…』
だが、ヲ級は首を振り、艦載機を出して周囲を索敵する。
『…他の生存反応無し。この人の捜索は恐らく出されていない…』
ヲ級は彼をお姫様抱っこで抱えると、戻ってきた艦載機を収納する。
『ごめんなさい…許されないかも知れない。許してくれないかもしれない…でも、貴方は生きるべき人だから…』
ヲ級は航行を開始する。何処へ行くのかは、まだ分からない。 
 

 
後書き
新作です。ずっと書きたかったこの話。
まぁ温かい目で見てもらえるとありがたいです。殆ど自己満ですが(-_-;) 
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