全ては我が趣の為に
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H(変態)A(あると)O(思います)
H(変態)A(あると)O(思います)
広大な景色。真っ白な雲。大地には深緑が生い茂り、美しい景色を作り出している。
そんな場所にも―――
「きゃあぁあ!」
「ふはははは!ピンクゥ!」
―――変態がいた。
「何でいつもいつも私がぁ!」
「そこに!スカートがあるからだ!」
猫耳に青い服装のプレイヤー、シリカがスカートを押さえて変態を睨む。
「しかし良い!スカートとハイニーソの境界が織り成す絶対領域!見るものを魅了し、我等の想像を増幅させるゥ!」
変態の、変態による、変態達のための行為。
人はそれをセクシャルハラスメントと呼ぶ。
「大体、何でそんなに早いんですか!」
「AGI極振りだからなぁ!速さこそジャスティス!」
「死ね変態!」
毎日行われる変態行為。
VRゲーム、『アルブヴヘイム・オンライン』が始まってから今日まで。ほぼ全ての女性プレイヤーが変態の魔の手に掛かってきた。
「しかし!中身が男は対象外!」
そう。見た目は女性のはずなのに、所謂ネカマと称されるプレイヤー達には、一切のセクハラを行っていないのだ。
「何で見分けつけるんですか!」
「歩き方呼吸目線姿勢センス…」
「本気すぎる…」
「―――あと匂い」
「匂い!?」
ズザザザッと後退するシリカ。女性に匂いとか大変失礼である。
「き、今日と言う今日はお縄についてもらいます!皆さんも直ぐに到着します!」
ビシッと指を指して宣言するシリカ。
「ほう?とうとうこの時が来てしまったか」
変態…ゲイザーは腕組みをして息を吐く。
「な、何ですか!また何か企んでるんですか!」
「企むとは…ふふふ。
時にシリカ嬢。君の仲間は美しい花が多くいると記憶しているが?」
「花…?」
「バーザクヒーラーにレプラの鍛冶師、テイマーアイドルの君に、麗弓の猫娘…ふふふふ…たぎるっ!」
「逃げて!みんな逃げて!」
「シリカ!無事か!」
「来ちゃった!?」
駆けつけたのは男女グループ。
それぞれに種族は違うが、団結しているのが良くわかる。
「待たせたなシリカ」
黒の剣士ことキリト。
「観念しなさい変態!」
バーザクヒーラーのアスナ。
「とっちめてやるんだから!」
レプラの鍛冶師、リズベット。
「やいやいテメー!今日は俺様が引導を渡してくれるぜ!(今日もセクハラお願いします!)」
風林火山のリーダー、クライン。
「こいつが例の変態か…」
ぼったくり商人、エギル。
「はぁ…何であたしが…」
麗弓の猫娘、シノン。
全ては変態を討伐するために集った勇姿達だった。
「ようこそ我が楽園へ…」
「楽園?」
「処刑場の間違いでしょ」
「ギャラリーも満員御礼!今か今かと、私のセクハラを待ちわびている!」
バッと両手を広げて周囲に呼び掛けるゲイザー。
しかしながら誰も反応しない。
「そんなわけないでしょ!?皆あんたのせいで迷惑してるんだから!そうよね、皆!」
「え?あぁ、おう(アスナさんのパンチラ…ぐふふ!)」
「そうよ!女の敵よ!」
女性プレイヤーはともかく、男性プレイヤーは別の意味で黙っていたようだ。
「私を討伐…出来るのかな?君達に」
「やるさ!さつさと牢屋送りにしてやるぜ!」
補足として、セクハラの申請が通った場合、プレイヤーは1週間のログインが禁止される。更にその後の1ヶ月間、プレイヤーの能力地は半減し、耐性もダウンする。
「しかしセクハラ申請は半径200m以内…果たして私を掴まえられるかな?」
「そもそも一瞬で離脱出来る方が凄いぞ」
「これぞ変態のなせる技…」
どうやら話はこれまでのようだ。各自が抜刀して、剣の切っ先を変態へと向けていた。
「さぁ、観念しろ」
「ふはははは!観念とは…」
瞬間、ゲイザーの姿が消えた。そして―――
「きゃあ!」
リズベットのスカートが捲れた。
そして沸き上がる観衆。
そして一瞬だけ表示されるハラスメント警告。
「やれやれスパッツとは…」
「あ、あんたねぇ…」
「だがそれも良い!」
「死ね変態!」
再び現れたゲイザーに一斉に飛び出す。
「てりゃあ!」
「純白!」
アスナのスカートを捲り。
「そこです!」
「再びピンク!」
シリカのスカートを捲り。
「食らえ!」
「男は要らん!」
クラインを蹴り飛ばし。
「アーエールウルアウスト―――」
「yes!緑!」
リーファのスカートを捲り。
「白!黒!青!ふはははは!」
捲り捲り捲り…
「「「「はぁはぁはぁ」」」」
全員地べたに這いつくばっていた。
「どうした諸君?ギャラリーが沸いているぞ?」
「もうやめろよ!皆可哀想だろ!(良いぞもっとやれ!)」
「そうだそうだ!セクハラなんて犯罪だぞ!(シリカちゃんペロペロ)」
「色とりどりのおパンツ!(サイテーだぞ!)」
一人だけ本音が逆だが、まぁ概ね非難していた。
「くそ…敵わない…」
「もうやだよぉ」
「が、眼副…」
それぞれに戦意喪失し、ゲイザーを睨み付けるしか無くなった。
だが、それで終わるゲイザーではない。
「さて諸君?君達に真の変態を教えてあげよう」
徐にゲイザーはメニュー画面を開き…
「は、はぁ!?」
「いやぁあああ!?」
装備を外し始めた。
「変態とは、装備に頼らず、己の身体一つで行うもの…それがこの」
全ての作業を終えてバッと両手を広げる。
「完全形態!」
「全裸じゃねぇか!!」
「おえええええ…!」
全裸だった。
一子まとわぬ姿。生まれたままの姿。
「しかしながら諸君。私だけ裸と言うのは頂けない。君たちも裸になるべきではないかね?」
「なる分けねぇだろ!ふざけんな!」
「さっさと服着てください!」
「汚ぇもの見せんじゃねぇ!」
「ふはははは!ふはははははははは!残念ながらそれは聞けない!
では始めよう。変態の変態による変態達のためのえげつない行為!
GMコマンド!オブジェクトID…ゲイザー!」
声高らかに宣言するのはGMの発言。
「なっ、あれは……!」
それはキリトとアスナだけが知る究極の発言。
「全員ログアウトだ!急げ!」
「全プレイヤーの装備を―――」
変態の宣言は…
「やれやれ、せっかちな者達だ」
発動されなかった。
そもそもGMはゲイザーではない。
全てはキリト達の早とちりであった。
「さて、次は誰をセクハラしようか…」
誰もいなくなった平原で、ゲイザーはゆっくりと歩き出した。
次なる犠牲者に、合掌…。
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