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レーヴァティン

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第二十八話 団長の依頼その六

「ああしてです」
「宮殿を建ててか」
「その中に住んでいました」
 そうしていたというのだ。
「欧州の王家は」
「権威か」
「はい、中国でも同じで」
「あの紫禁城とかか」 
 北京の宮殿だ、そこに皇帝達がいた。
「西安にもあったな」
「唐代までの都でしたので」
「そうだったな」
「贅沢の為でもありましたが」
「欧州も中国もか」
「建築は権力者の病ともいいまして」
「始皇帝とかだね」
 源三はその中国の最初の皇帝の名前を出した、歴史上あまりにも有名な人物である。
「あの人も宮殿建てたね」
「阿房宮か」
「そう、他にもお墓とか長城とかね」
「驪山陵だったな」
「そことかね」
「あの皇帝は特にそうだったな」
「はい、権力者になりますと」
 順一がまた話した。
「古今東西です」
「無暗に建築をしたがるんだな」
「そう言われています」
「そうなんだな」
「日本ではそうした権力者は少ないですが」
「やっぱりいたんだな」
「豊臣秀吉は」
 大坂城に伏見桃山城、聚楽第にとだ、この人物はわりかし建築熱が観られる人物であった。
「ですが少ないです」
「日本はか」
「奈良の大仏は個人の贅沢ではないですし」
「国家安泰を願ってだからな」
「そこはまた違います」
 当時の日本の総力を結集させた建築物ではあったがだ、あの唐も則天武后が考えて国力と民衆の疲弊を危惧して止めている。
「日本の建築は」
「そうなんだな」
「またです」
「何ていうかな」
 また言った久志だった。
「俺のこの考えは日本的か」
「そうでござるな」 
 進太が久志のその言葉に頷いてきた。
「やはり」
「やっぱりそうか」
「日本の皇室のお話を出されましたし」
「あの方々はまた特別だからな」
 正も皇室については敬意を以て述べた。
「そうした方々見てるとな」
「どうしてもだよな」
「建築はな」
「そして宮殿とかな」
「興味がないか」
「そうなるな、まあとにかくな」
「今より」
 ここでまた進太が応えた。
「団長殿のところに参りましょう」
「そうしような」
 久志も頷いてだ、一行は城主の間即ち団長のいる部屋に入った、そこに入るとだった。
 やはり質実剛健で贅沢さとは無縁の、それでいて壮麗な趣の部屋でだ。完全武装の騎士達が整然と並び。
 主の座に一人の甲冑をマントで身を包んだ白髪に整った髭の厳めしい顔立ちを持つ初老の男が座っていた。
 その男がだ、一行に言ってきた。
「我が前に」
「はい」
 進太が応えてだった、そのうえで。
 一行は進太に促されその男の前まで来た、そしてだった。 
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