お祖父ちゃんの蒲鉾
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第二章
「またなの」
「ああ、蒲鉾もな」
源太郎は和風の部屋の中でちゃぶ台を囲んでいる孫に微笑んで応えた。
「買ったんだ」
「他のおかずと合わせて」
「これもな」
蒲鉾もというのだ。
「買っておいたからな」
「だからなのね」
「食べような」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「いつも買ってるわよね」
赤と白の蒲鉾の二つをというのだ。
「そうしてるわよね」
「ああ、そうだな」
「お祖父ちゃんそんなに蒲鉾好きなの」
幹子は源太郎に怪訝な顔になって尋ねた、祖父が作ってくれた野菜炒めや味噌汁といった他のおかずも食べながら。
「そうなの」
「好きっていったら好きだな」
そうだとだ、源太郎は幹子に答えた。
「蒲鉾は」
「それでいつも勝ってるのね」
「そうなんだ、それにな」
「それに?」
「いや、何でもない」
源太郎は自分も食べながら幹子に少し照れ臭そうに返した。
「別にな」
「そうなの」
「ああ、とにかく食べよう」
「後片付けは私がするから」
幹子は微笑んで祖父に話した。
「お祖父ちゃんは休んでね」
「悪いな」
「いいのよ、晩御飯作ってくれたし」
微笑んで祖父に応えた。
「だから後片付けはね」
「御前がしてくれるか」
「そうするから。ゆっくり休んでね」
こう言って実際にだった、幹子は祖父を休ませた。自分が後片付けをしてだ。そのうえで風呂に入りそこの掃除もして学校の授業の予習復習をしてから休んだ。
幹子は源太郎と二人の生活を送っていった、中学から高校に進学し源太郎が定年を迎え別の仕事に就いてもだ。
二人の生活を送っていたが常にだった。幹子は高校のクラスで友人達に対して少しぼやきながら話した。
「お祖父ちゃんがお料理作る時はいつもなの」
「蒲鉾なの」
「蒲鉾出してくれるの」
「紅白の」
「ずっとね。どういう訳かね」
こう友人達に話すのだった。
「おやつだってそうなの」
「赤と白なの」
「その二色でなの」
「出してくれるの」
「そうなの、どうしてかね」
友人達に話す顔は考えているものだった、そのうえでの言葉だ。
「お祖父ちゃんそうしてくれてるの」
「赤と白、紅白ね」
「縁起がいいわよね」
「そうよね」
「験担ぎかしら」
友人達の言葉を聞いてだ、幹子はこう考えた。
「そうなのかしら」
「そうじゃないの?」
「お祖父さんのね」
「それでいつも紅白なんじゃないの?」
「その蒲鉾出してるじゃないの?」
「まああるわね」
それもとだ、幹子は話していて納得した。
「それも」
「そうでしょ、だったらね」
「そんなに不思議がることでもないわよ」
「別にね」
「そうね、じゃあもうね」
それこそとだ、幹子は納得した顔になって述べた。
「このことについてどうも思わないでね」
「食べていくのね」
「蒲鉾も」
「ええ、蒲鉾はうちじゃお漬けものみたいなものだし」
源太郎が料理を作る時はいつも出ているからだ、それこそ梅干しやおしんこの様に。
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