アメリカンハウス
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第二章
「中華料理も好きで」
「それで家はアメリカか」
「だからアメリカに行きたいか」
「そうなんだな」
「はい、その為にも頑張ります」
仕事、それをというのだ。
「アメリカに行っても大丈夫って言われて認められる位に」
「よし、じゃあ頑張れ」
「そうしたらアメリカに行けるぞ」
「その意気だ」
「それでやっていけよ」
先輩達は最初は彼の言葉に引いたがその考えが前向きのものになっていると見てエールを送った、そして実際にだった。
木村は仕事に励み努力と熱意でどんどん実績を挙げていった、それで遂に上層部も彼の働きを認めてだった。
海外部長自らだ、彼を呼んで言った。新婚ホヤホヤだった彼に。
「夢を適えたいか」
「では」
「そうだ、アメリカのロサンゼルス支社に行って来るか」
「そしてですね」
「家もあるぞ」
部長は彼に笑顔で言った、引き締まり端正な顔立ちの彼に。
「その家に住みたいな」
「是非」
返事は決まっていた、木村は部長に即答で返した。
「その機会がですね」
「来たぞ、じゃあな」
「行ってきます」
こう答えてだ、彼はその場で跳び上がらんばかりに喜んだ。そして家に帰ると新妻の佑衣子にこう言った。
「アメリカに行けるぞ!」
「遂になのね」
「そうだ、ロスだ」
色白でおっとりとした顔立ちの妻に話す、黒髪も奇麗で小柄であるが胸は出ていて声も可愛らしくそれでいて色気がある。
「ロスに行けるんだ」
「夢が適ったのね」
「ああ、絶対にな」
「アメリカに行くわよね」
「断る筈がないだろ」
木村は佑衣子にもこう返した。
「俺だってな」
「そうよね、じゃあお話が出て」
「その場で答えたからな」
「やっぱりそうよね」
「それでな」
「私もよね」
「来てくれるか?」
「ここで単身赴任って選択肢もあるけれど」
妻は笑って夫に返した、二人は今は会社の団地に住んでいる。狭いと言えば狭いが家賃は破格に安くしかも快適ではあり楽しく暮らしている。
「やっぱり私もね」
「アメリカに行ってな」
「アメリカの家に住みたいわ」
「そうだよな」
「ええ、幸い私専業主婦だし」
以前は小学校の先生だったが木村とはお見合いで結婚をしてそれを機に退職して専業主婦になっているのだ。
「だからね」
「一緒に来てくれるんだな」
「ええ、じゃあ二人でね」
「アメリカでアメリカに家に住もうな」
「そうしましょう」
こう二人で話してだ、木村は佑衣子と共にアメリカに行きアメリカの家に入った。だがその家の前に来てだ。
佑衣子は驚いてだ、隣にいる夫にこう言った。
「これは」
「大きいな」
「いえ、大きいのは知っていたけれど」
小柄な自分より二十センチは高い夫に対してさらに言った。
「こうして見てみたら」
「思っていたよりもか」
「映画やドラマで見るよりは」
現実に自分の目で見ると、というのだ。
「凄いわね」
「いい家だな」
「あなたはそう言うのね」
「だってな」
実際にと返す木村だった、彼は笑顔のままだった。
「アメリカの家なんだぞ」
「だからっていうのね」
「広くて大きいのは当然だろ」
「そんなもの?」
「ああ、しかもこれで社宅だからな」
八条商事ひいては八条グループの社員とその家族の為の家だというのだ。
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