便利屋
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第四章
「いないんですね」
「そうみたいだしな」
「平和ですね、空も」
ドーバーは空も見上げて言った。
「今は」
「後方だしな」
「補給基地は空襲とかを受けやすいですが」
「その空襲もな」
今はとだ、マッキントッシュはドーバーに話した。
「俺はアフリカやシチリアにも行っていたが」
「上等兵も古株ですか」
「ずっとこの部隊にいるんだよ」
この補給部隊にというのだ。
「けれどドイツ軍はずっとな」
「空軍はですか」
「東の方に主力がいってな」
そのせいでというのだ。
「西には元々少なかったし随分やられてな」
これまでの戦争でだ、主に初期のイギリス上空での戦いとその東部のソ連軍との戦いでパイロットも機体も消耗し連合軍の空襲で航空機を製造する基地も展開している空港も攻撃されて戦力を失っているのだ。
「もう殆どないからな」
「だからですか」
「ああ、敵の空襲もな」
それもというのだ。
「ないからな」
「平和ですね」
「俺達の部隊はな」
「そういうことですね」
「ああ、だから命の心配はあまりないんだよ」
戦争をしているがというのだ。
「前線と違ってな」
「それはいいことですね」
「俺は戦車で戦いたかったんだがな」
マッキントッシュは自分の願望も述べた。
「まあ死なないっていうのはな」
「確かですね」
「ああ、しかしな」
マッキントッシュはハンドルを右に切りつつ溜息をついた。
「俺は来る日も来る日もな」
「こうしてですか」
「ジープばかり運転してるな」
「パトロールに偉いさんの送迎にちょっとした偵察に荷物運びに」
「本当にちょっとした仕事ばかりな」
ジープを使ってのそれをというのだ。
「やってばかりだな」
「戦車兵や戦闘機乗りみたいに派手じゃなくて」
「ああ、雑用ばかりだよ」
こうぼやくのだった。
「折角戦車に乗れるのにな」
「基地の便利屋ですか」
「このジープと一緒でな」
「それがどうにもっていうんですね」
「ああ、もうドイツ軍もやばいっていうしな」
また敵である彼等の話をした、少し先に見えるフランスの森を見つつ。そこも敵が撤退していてもう安全だ。
「戦争はこのまま終わるだろうな」
「アルデンヌでの方も何とかなりましたし」
先程まで激戦が行われていたがそれも終わったのだ。
「後はですね」
「ドイツ本土に殴り込んでな」
「戦争は終わりですね」
「そうなるだろうな、あと少しで」
「それで上等兵はそれまでですか」
「ジープを運転してるだろうな」
苦笑いを浮かべてだ、彼は運転を続けるのだった。そして実際にドイツの降伏を聞いた時も彼はジープの操縦席にいた。
これから基地司令を彼が行くべき場所に乗せて行こうとまずは彼を迎えにジープに乗り込んだ時にハーディングに言われたのだ、それでこの時も苦笑いになった。
「運転席でその話を聞くなんていうのも」
「嫌か?」
「俺らしいですね」
こう知らせてくれたハーディングに言うのだった。
「戦争が終わったって話は運転席ですか」
「ははは、本当に御前はジープばかりだな」
「全くですよ」
「この戦争の間ずっとだったな」
「本当に、けれどこれから」
「ああ、司令をな」
「迎えに行って送ってきます」
「そうしろ、戦争は終わったがな」
「はい、それでもですね」
「基地にいる間はな」
それまではというのだ。
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