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便利屋

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第一章

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 ジープを見てだ、アメリカ陸軍元帥ドワイト=アイゼンハワーは笑みを浮かべて言った。
「こんなに役に立つものはない」
「ですね、確かに」
「戦車や戦闘機みたいな派手さはないですが」
「何かと役に立ちますね」
「こんなものは他にないですね」
「そうだな、こうしてだ」
 アイゼンハワーは参謀達に応えつつ自らジープに乗り話した。
「乗って移動する、その際だ」
「はい、荷物も乗せてですね」
「移動出来ますしね」
「輸送も出来ますし」
「軽く周りも偵察出来て」
「パトロールにも使えます」
「とにかくちょっとしたことにだ」
 所謂雑用にというのだ。
「何でも使える、だからだ」
「こんないいものはないですね」
「全く以て」
「輸送機のCー四七と一緒にだ」
 アイゼンハワーがもう一つ頼りにしているものだ、空からの輸送で何かと助けてもらっているというのである。
「役に立ってくれている」
「そうですよね」
「若しこの二つがなかったら」
「あとバズーカですね」
「中々厄介ですね」
「戦争はもっと苦しいものになっている」
 今現在ドイツ軍と行っているそれもというのだ。
 アイゼンハワーはとにかくジープを有り難がっていた、だが。
 彼と同じ名前のドワイト=マッキントッシュ上等兵はいつもだ、仕事をしながらブツブツと不平を漏らしていた。
「またですか」
「ああ、まただ」
 彼の上司であるリチャード=ハーディング軍曹はマッキントッシュに言った。彼の赤い鼻と面長で紫のアイルランド系でも滅多にない目が独特の顔を見ながらだ。髪の毛は白で背は高い。その彼に対してハーディングは大柄でがっしりとした体格で目も髪の毛も黒く岩の様な顔だ。
「仕事だ」
「今度は何の仕事ですか?」
「パトロールだ」
 それだというのだ。
「基地内のな」
「それですか」
「そうだ、ジープに乗ってな」
「いつも思うんですが」
 首を傾げさせてだ、マッキントッシュはハーディングに言った。
「俺以外にもですよね」
「ジープを運転出来る奴はごまんといるさ」
「この基地でも」
「ああ、しかしな」
「俺が元タクシーの運転手で」
「一番運転が上手い」
 だからだというのだ。
「それでこれからもな」
「基地内のパトロールですか」
「出てもらうぞ」
「さっき司令を司令部に送ってですか」
「それで次はだ」
「それですね」
「頼むぞ」
 軍隊らしく有無を言わせない命令だった。
「わかったな」
「わかりました」
「パトロールの後で飯だ」
 それになるというのだ。
「そうしてこい」
「それはいいですが」
「今日はステーキだぞ」
「ですから食事はいいです」
 内心何か最近ステーキが多いなと思いつつもハーディングに答えた。
「別に、ただ」
「仕事のことか」
「運転が上手いとですね」
「色々と仕事が回るっていうんだな」
「雑用ばかり」
「それは仕方がないだろう」
 これがハーディングのマッキントッシュへの返事だった。 
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