キコ族の少女
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第3話「スタート地点」
入団騒ぎ?の翌日。
ノブナガ指導の下、俺の修行をする事が決まった。
入団については、皆が認める実力になるまでは補欠ということとなり、認められた後はクロロの許可を経て、晴れて?正式な団員となる……という段取りが決定された。
まあ、念の系統が分からないド素人を入団はさせるわけないよな。
あと、キコ族についてシャル―――呼び捨てでいいということで呼び捨て―――が電脳ページで調べてくれたのだけれど……
・ヨークシンを中心に遊牧民生活をしていた部族。
・”ダイヤの瞳”という特殊な瞳と、闇のように黒い髪という身体的特徴をもつ。
・十年前に最後の集落が確認されて以来、存在の確認が出来ていない。
・姿を隠すのに長けていた。
と、クロロの言った内容を除くと全く分からないというレベル。
いや、一般的な方法では分からないということが分かったと言えるかもしれないか。ハンター専用のサイトで探せばまだそれなりに情報があるかもしれないけど、さすがにそこまでしてもらうと気が引ける。
というか、自分で稼いだ金で調べるようにって言われた。
また、補欠とはいえ幻影旅団の構成員の一人となった為に、今までは記憶喪失で「おい」とか「お前」で通っていた名無しの俺に”ユイ”という名前が付けられた。
はい拍手~!
ちなみに命名者は拾い主のノブナガ。
と言うことだから、フルネームはユイ=ハザマでいいのだろうかと皆に聞いたら、一瞬の沈黙の後に大爆笑された。
え?いや、なんで笑うの?別に可笑しな事なんて言ってないと思うのだけど?
疑問に思いつつも、俺を認識・識別する名前が決まったので修行開始前に流星街のお偉いさんへ挨拶に行くことになった。
漫画では、生活様式や文化などが詳しく語られなかったので「転生・憑依者の特権!」みたいに思ったりしながら、ノブナガの後をついて行く。
まあ、通った道が特別だったのかゴミばかりで、人や建築物を見ることはなかったが……
「―――ってことだから、こいつは俺達の保護下で生活する」
「分かった。その子を我々の仲間として受入れよう」
バイオパニック映画に出てくるような防護服に身を包んだ数人の人間……たぶん街の代表者が、ノブナガの説明を受けて俺を流星街の仲間として迎え入れてくれた。
特に受け入れの儀式とか、書類にサインとかの手続きは一切なく、少し身構えていた俺としては拍子抜けするほどの簡単さである。
そんな内心を1ミリも外に出すことなく、オーバーコートに身を包みフードを目深に被った姿のままの俺はペコリと頭を下げる事で、受け入れてくれた感謝の意を示す。
礼儀としてフードを取ろうとしたのだが、ノブナガに「取らなくていい」と言われており、相手の顔を分からずに仲間として受け入れてもいいのだろうかとも思ってしまうが、原作では何でも受け入れるとか言っていたし、問題はないのだろう。
何はともあれ、これで俺は「流星街」の住民となると同時に、「幻影旅団」の庇護下に入ることが周知された。
本来であれば、俺ぐらいの年齢の子供は“街”の施設で同世代の子等との生活が待っている。
だが、旅団の庇護を受けていることと、ノブナガとの修行がある為に、俺は少し特殊な立ち位置らしい。
そういえば、分かっている人が多いかもしれないが、流星街の人間は外にいる人達と一部を除き全く同じ人だ。
違うのは、彼らの異常なまでの仲間意識。
漫画で紹介されていた”あの事件”がいい例である。
その意識構築の要因の一つとなっているのが、彼らの生活が密着していることにある。
子供の生活内容を聞いただけでも、小さい子の面倒を年長者が率先して行なうし、何をするにしても皆と行動を共にする。
あとは、ここに来る道中でも色々とノブナガが説明しくれたが、大雑把過ぎて詳しくは伝えられない。
まあ、簡単に言ってしまえば
「俺のモノは皆のモノ、皆のモノは皆のモノ」
……間違ってはいないけど、合ってるとは言いがたいな……
う~ん、何かいい言葉がないかな…………
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
「おい、聞いてんのか?」
ゴンッ
「痛ッ」
先日のことで、つい物思いに耽っていた俺の脳天を、ノブナガは刀の鞘で小突いた。
ここって、意外と痛いんだよ。それも鞘の先端で小突かれたから余計に痛い。
突然の激痛に、若干涙目になりながら弁解する。
「き、聞いてるよ」
「じゃあ、さっきまで俺が何を説明してたか言ってみろ?」
「えと…」
ゴンッ
「~~っ!!」
さっきより強力な小突き……いやそんな生易しいレベルじゃない打撃が俺の脳天に直撃した。
そのせいで涙が零れそうになるのを意地でも耐える。
「次は本気で小突くぞ」
「……わ、わかった…」
ズキズキと鈍い痛みを耐えながら、搾り出すように声を出す。
これ以上の鉄拳(?)は命に関わる。
「お前は覚えが良いんだから、ちゃんと集中すればすぐ終わるんだよ」
「……うん」
「最初からやり直すぞ。念ていうのはな――――」
まあ、漫画からの知識と前世からの知識があるから、この歳にしてみれば覚えはいいだろうね。
ということで、二度目の講義は痛い目に合いたくはないから真面目に受けて、本当に小一時間程で終了させることが出来た。
ノブナガ自身が詳しい説明が得意ではなかった為に簡易的になったのも要因のひとつであるけれど
んで、次は基本中の基本である四大行へと……いくわけなんだけど。
何故か”纏”は目が覚めている時から出来ているし、キコ族の姿を隠すという特徴なのか”絶”も出来る。
さすがに”練”はできなかったけど、これも一週間で出来るように……
主人公陣には劣るものの、自分でも驚くほどの習得率にノブナガは、
「たまにいるんだよ。念との相性がいい奴がな」
とのこと。ついでに
「やっぱ、俺の目に狂いはなかったな」
と少し自慢げに呟いていたが、そこはスルーしておく。
彼の台詞はともかく、俺自身が強くなりたいと願っているので、その相性の良さは大歓迎である。
そして、”練”が使えるようになったということは……
「さて、応用を始める前に、お前の系統を調べるか」
キターーーー!!
さてさて、俺の系統は何かな?希望としては強化系とか具現化系かな。
俺が求めているのは戦闘力だから、一番バランスのいい強化系が候補にあがるのは当然として、具現家系も習得に苦労するが、特殊武器を無手状態から作り出せるのがいい。キメラアント討伐隊のノヴが持ってる能力が便利すぎるから、それで惹かれているのかもしれないけどね。
ワクワクした気持ちを醸し出しつつ、用意してもらった葉の乗ったコップを手で包み込むようにして……
「……葉っぱが回転してる」
「こりゃあ操作系だな。シャルと同じだってこった」
……マジっすか。
操作系て愛用の道具がなくなると、戦力が大幅にダウンする系統だよな?
「今後はシャルの意見を交えて、鍛えていくか」
「うん」
そうだ、何も能力だけにこだわらなくても基礎がちゃんと出来ていれば、それだけで十分に強くなれる。
例えば、ビスケとか、ビスケとか、ビスケとか……巨漢女になるのだけは勘弁したいな。
ちょっとした気分の問題故に気持ちをすぐさま切り替えて、基礎を固めることになった。
四大行も一通り出来るようになっただけであって、熟練度なんてないに等しい。
当然ながら、そんな状態で“発”―――念能力―――を開発しようとしても粗悪品ができたり、ヒソカが言う”メモリ”を無駄に消費してしまう。
どんなモノでも基礎がダメなら全てがダメになってしまう。
この世界に自分が居る理由や、これからの事が不明瞭である以上は、この世界で生きていくことを考えて、必要最低限の力をつけなくてはならない。
それは訪れるであろうバイオハザードに対応する為であるが、それだけではなく純粋に生きていく為に必要だからである。
俺が保有しているのは“男だった時の記憶”のみであり、憑依にしろ転生にしろ、この身体の記憶は一切もっていないのだ。
それが意味する事は、自分の存在を世界に証明できないということである。
憑依だとすれば、この年齢まで外の世界で生きていたと考えれられるので戸籍が存在しているかもしれないが、それだけをアテにすることは危険すぎるし、流星街へ“捨てられた”という事を加味すれば色々と覚悟しておかないといけない。
中身が20歳の男とはいえ、そんな俺が生きていたのは一般的には戦争がない平和な日本であり、この無慈悲で死と隣り合わせの世界とは雲泥の差がある。
生きている以上は、どんな世界であろうと精一杯生きてやる!!
とか、一応は強がってみたり……はぁ
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