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ジョジョの奇みょんな幻想郷

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第一部 ケイオスクルセイダーズ
名状しがたい幕間の物語のようなもの
  20.煩悩が鐘で消えるかぁぁぁ!煩悩とは欲を知ること、欲望を我が物とすることじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

 丞一が幻想入りし、紅霧異変など何やかんやありあっという間に時は流れ、遂に大晦日がやってきた。






 何やかんやがあって守矢神社。
『肩寄せ合い♪声合わせて♪希望に燃える♪恋の~』


「いやー、やはり大晦日の紅白はもはや伝統ですねー」
「そうだねー。私的にはもう少し昔の曲とか出てくれるとありがたいんだけどなー」
「確かにな。はっきり言えば私たちでも分かる曲、だな」
「例えばどんなものです?」
「「民謡?」」
 無理だろ。
「それにしても、ジョジョ遅いですね」
「確か、ジャンプ合◯号を買いに行ったんだよね?」
「諏訪子様それ隠す気ありませんよね?」
「香霖堂までか。それにしては遅いな」
















 そのころ丞一は、
(ジャンプ、ジャンプ、あったあった)
 もはや隠す気はないらしい。
 香霖堂の本棚に手を伸ばす。どうやらラストの一冊らしい。元々外の本で、ここでしか買えないため少年や大きいお友達がすでに昼間に買ったのだろう。そんなことを思い取ろうとすると────────誰かの手と手が重なった。
 横を見ると、銀髪でおかっぱ頭。腰には刀を差し、死んだ魚のような目をした────────少女がいた。
「………ジャンプ合併号?」
「え?ジャンプ合併号?」
 やはりと言うべきか、二人とも同じ本が目的みたいだ。勘違いで取ろうとしたならばどれだけ嬉しいことか。しかし、それはお互いに同じ。ここは説得を試みる。  
「やべーな。一冊しかねーよ」
「どーしよ」
「いやさ、ウチのばぁさん(諏訪子)がさ、読みたいって言い出してさ。いや、別に俺が読みたいんじゃないよ」
「いや、ウチもですね、幽々子って子が読みたがってるんですよ。あー幽々子はウチの娘ね」
 互いが互いの譲れない理由(でっち上げ)を語り合う。でもまだ譲らない。
「いや、何かそろそろばぁさんヤバくてさ。死ぬ前に読みたいって言ってるんだよ」
「あぁ、実は幽々子も死ぬんだよねー」
「幽々子死んじゃうの!?」
 そういい銀髪の少女はジャンプを掴んでかっさらう。
「まあ、そう言うわけだから」
「待て待て待て、え?良いの?ジャンプ今落ち目だよ?ブ◯ーチも◯ち亀もニセコ◯もナ◯ト終わって落ち気味だよ?」
 そう言って、丞一は交渉に移った。すぐ側のもう一冊を差し出した。
「こいつの方がいいって」
 とても口に言うにははばかれるadultのようなものである。
「いや、幽々子読まないし」
 そう言いながら、ジャンプを丞一に差しだしブツ取った。
「いやーでも案外良いかな。いや、私が読むんじゃなくて幽々子が」
「あ、丞一。いらっしゃい」
「いや、そりゃあないんじゃないの!!」
 会計に入ろうとしていた。丞一を少女は止めた。
「いやいや。幽々子にはジャンプは早いって。そっちの方がいいって」
「こっちの方が早いわァァァ!!」
「だいたい幽々子なんて娘は本当はいないんだよ!バカめェェェ!!」
「バカはてめーだ!俺だって死にかけのばぁさんなんていないもんね!バーカバーカ」
「「ハイ!金!」」
「テメェェェェ、いい加減にしろよ!!良い歳こいてジャンプなんて読んでて恥ずかしくねーのかァ!?」
「ねぇ、二人とも」
「てめーに言われたくねーんだよォ!大晦日にジャンプ何か読みやがって!さびしいやつだなオイ!」
「おーい!二人とも!すごく言いにくいけどさ、言うね。二人ともお金足りてないよ」
「「え?」」
 さっきまで怒声と罵り合いで喧しいほどにうるさかった香霖堂に静けさが走った。
「いや、二人ともお金足りないの」
 二人は財布を出し残りの金を出そうとする。


((一銭もねー))
 何時もの値段感覚で必要な金額のみ持ってきていた二人には残りの金が残っていなかった。
「あ、でも二人足すとちょうどだけどどうする?」
 結局二人で金を出し合いました。







 一方、博麗神社では。
「よう!霊夢!」
「何よ魔理沙、こんな日にまで」
「寂しいから遊びに来たんだぜー」
 酒にツマミも持ってきたんだぜ?と酒瓶とキノコを見せてくる。が、
「生憎、私も暇じゃないのよ」
「いつも通り暇じゃないか?」
「………魔理沙。鬼人正邪が起こした異変覚えてる?」
「ああ、覚えてるんだぜ?結局逃げられたしな」
 ま、音沙汰もないんだけどな、と締めくくった。
 鬼人正邪。天邪鬼という鬼の種族だ。ひねくれ者の極地と言うのが鬼人正邪を語るのならば一番早い。そして彼女が起こした異変というものが、三行で簡潔にまとめると、
「強い奴らムカつく。
だったら強い奴ら引きずり落とせばいいんだ。
ついでに幻想郷支配しちまおうぜ。
つまり、下剋上しようとした異変だったわね」
「いきなりどうしたんだぜ?しかも四行だし」
「コホン、まあ話を戻すと。どうやらその正邪が最近でかい物を取り引きしたらしいのよ。この大晦日に見計らって動くかもしれないから」
「頭ぶった斬っても生首や胴体だけで暴れるってか。鬼ってのは執念深くていけねぇぜ」






 
 そして再び丞一たちは、
「いやだから私が今日読んで明日あなたに貸すって」
「貸すってなんだお前。俺も金出してんだぞ。バカヤローコノヤローオメー」
 醜い言い争いが続いていた。
「だいたいてめージャンプジャンプって一体何読んでんだ?どうせ二、三本読んでポイだろ。俺全部読んでんぞ。俺の方が絶対ジャンプ愛してる」
「何言ってんの?私なんか漫画だけじゃあきたらず後ろの漫画家のコメントも読んでんぞ。編集部のどーでもいいコメントも読んでる」
「俺なんかオメー。あのプレゼントの当選者発表のとこあるだろ?あれ全部読んでる。アンケートも毎週出してる」
「あめーな!私は背表紙裏のやや微妙な通販グッズのところにもきっちり目通してる。しかもたまに買ってる」
 やや本当とたまにの嘘の押収である。じゃんけんでいいんじゃないかと想わなかったのだろうか。
「オイいい加減にしないとこれジャンプ裂けるぞ。ヤバいってこれ。ちょっ、一旦タイムしよう。一旦離せって。俺絶対取らないから」
「てめーが先に離せ。そしたら私も離す」
「てめー、大人になれよ。ここはまず、ジャンプの安全を考えるのが立派な大人の考えじゃないの?」
「てめーが離せば即安全確保なんですよ!」
「わかった。じゃあ同時に離そう。123で同時に」
「待て、それ3の『さ』で離すのか?『ん』で離すのか?」
「『ん』だろ。『ん』のあとだ」
「『ん』の瞬間?終わった後ですか?」
「え?わけわかんなくなってきた」
 その時、丞一は香霖堂に入ろうとする腰の曲がったおばーさんに目を付けた。
「そうだ!あのおばーさんに一旦渡そう!」
「あのブーメランババア、あなたの回し者じゃあないでしょうね。ブーメランだけに」
「全然うまくねーんだよ!どんだけ疑り深いんだよ!」
 二人は早速おばーさんに頼み込み、おばーさんがジャンプを取ろうとする。しかし中々取れない。
「あんたら離す気あんのかい?」
「オイいい加減にしろよ。この期に及んでまだ離さないの?」
「いや私もう虚脱状態だよ。消力(シャオリー)だよ」
「ふんごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「オイィィィィ!離せってやべーって!バーさんこれいっちゃうって!」
「あんたが離せや!ババア!無理すんじゃねェェ!」
「セイッハァァァァァァァァ!!」
「「あ」」
 おばーさんの尽力により、ジャンプは宙を舞い今走り出したトラックの上に乗った。







 ところ変わって射命丸文は八ッ目鰻の屋台に来ていた。この店を切り盛りしているのは夜雀の妖怪ミスティア・ローレライ。この幻想郷から焼き鳥店舗を根絶するため日夜努力している苦労人だ。彼女の八ッ目鰻は評判であり丞一もたまにここに飲みに来ることがある。因みにミスティアも寺子屋の生徒であり、あまりの鳥頭でチルノ、ミスティア、ルーミア、もう一人のリグル・ナイトバグでバカルテットと丞一は呼んでいる。
「ほう、鬼人正邪がついに動きましたか。して、何をやらかすつもり何で?」
「八雲紫だよ八雲紫。最近幻想入りした、何でしたっけ?確かジャスタ何とかって爆弾積んだトラックで八雲家に突っ込むらしいですよ」
 狙い目としちゃ間違ってはない。あの妖怪の賢者は今は冬眠中なのだ冬になってから出現率が高い博麗神社の霊夢でも一、二回だそうだ。
「ま、こんな大晦日にご苦労なもんよ。で、文さん的にはどうよ?いけるとおもう?」
 そんなの決まっているではないか。
「無理ですね」
「何で?」
「大晦日すら楽しめない無粋な人に大事を成せるわけがありません。幻想郷(ここ)は粋と酔狂の世界なんですから」
 それこそが、この射命丸文が今まで見てきた幻想郷というものだ。









 二人は今どこか分からなくなっていた。だがトラックが行くところを家と家の間を木と木の間を飛び移ったりしていたり飛んだりしていた。
「待ちやがれぇぇ!!そのジャンプは俺のだ!」
 丞一は飛んでトラックを追いかけていた。なんで時間止めないの?などは聞いてはいけない。メメタア。
 それでも丞一は早かった。木枯らしを切り裂きながらトラックとの距離を徐々に積めていく。だが、それでジャンプを手に入れられるほど相手は甘くはなかった。
「違ぁう!あれは私のジャンプだァァ!!」
「あいつっ、なんてやつだ!あの身のこなし!」
 少女は丞一を追い越すスピードで森の中を駆け巡りトラックへ乗り移った。そして勝ち誇るように丞一をトラックから見下ろした。
「ハハハッ!悪いねあんちゃん!これでも私は白玉楼で剣術指南を勤めてるのよ!ダボォ!」
 そして後頭部を木の枝にぶつけ、丞一の方へ落ちてきた。 
「ギャアァァァ!待て待て待て待て待て待て!」
 再び説明しよう。丞一は霊夢や早苗たちと違い霊力で飛んでいるわけではない。重力の方向を何やかんやで変え飛んでいるのだ。つまり、急な方向転換は不可能なのだ。
 そこで、丞一は重力を固め足場にすることによって二人はそれを蹴りトラックにしがみつくことに成功した。
「テメー!他人を巻き込むやつがあるか!俺もうダメかと思ったぞ。ちょっと涙目になっちゃったぞコノヤロー!」
「私の方がダメかと思ったわ!記憶が走馬燈のように駆けめぐったわ!てか今も駆けめぐってるんですけど!」
「てめーはそこで一生駆けめぐってろ!」
 丞一はトラックの側面の突起を器用につかみ登り、上まできた。
「よっしゃ!俺のっ、ぐっ!」
「させるかぁ!」
 少女は描写をし忘れてた少女の周りに漂う人魂のようなものを紐状にし、それを使って丞一の首に巻き付けることによって登ってきた。
「てめーみたいな、『努力・友情・勝利』のジャンプ三大原則を心得ないやつに─────ジャンプを読む資格はない!」
 人魂(紐状)を自分側に引っ張り、その勢いで登りきり、逆に丞一はそれで倒れてしまう。
「もらったぁぁ!」
「させるか!」
 横を通り過ぎる少女を足払いで転ばせ。チョーカーで首を絞めた。
「『努力・友情・勝利』?ジャンプを読んでそんなもんを手に入れた気になってんのか?悲しいやつだ……。お前は自分にないものをジャンプで埋めようとしているだけだ!慰めてもらおうとしてるにすぎないんだよっ!───────ジャンプはそんなもんのためにあるんじゃねぇ!!」
 チョーカーを絞められてた少女は腰の刀に手を伸ばし即座に抜刀、はせず柄頭を押し下げ、跳ね上がった鞘で丞一の顎目掛けて一閃。それを体を剃らすことでを紙一重で回避しながら空間を操りいつぞやの槍フォークを取り出す丞一。
 刹那、それだけの時間だった。二人はトラックの上で縦横無尽に駆けめぐり得物をぶつけ合う。そして理解した、互いが本気を出せる相手だと。
「おもしれぇ。やっぱ幻想郷(ここ)じゃあ喧嘩《こいつ》が一番はえぇよな。後腐れねぇし、ジャンプでもよくやってるし!」
「私、バトルものよりコメディものの方が好きなんだけどな。仕方ない、ギャグを通すには戦わなければならないときもある!」
 互いに得物を握りしめる。
「慶条丞一」
「魂魄妖夢」
「「────────参るっ!ぶふぁ!!」」
 木にぶつかった。そして落ちた。良い子は走行中のトラックの上に登らないように。








「ん?今変な音がしたような。まさか八雲紫の式神や天狗どもに嗅ぎつけられたか?」
 彼女が鬼人正邪である。因みに彼女は基本ぼっちなため登場も今回のみ、と言うかわいそうなキャラである。でも、全部自分一人で作戦立案からやっているため、実行力もあり、頭もキレるやつである。
「いや、杞憂か。どいつもこいつも大晦日で浮かれ騒いでるからな。しかも端から見れば何の変哲もないトラックに恐ろしい爆弾が詰め込まれているなど夢にも思うまい。もうじき、幻想郷は新世界へ生まれ変わる、ガン!あ?」
 正邪がサイドミラーで音の発生源を探すとそこには血塗れの少女が刀を荷台に刺して捕まっていた。
「────ジャンプをぉ、返せぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 妖夢は運転席窓を蹴破り正邪の顔面をその勢いで蹴っ飛ばす。
「っ痛ぇ!何しがる!!」ガシッ
 運転席とは反対側、助手席側の窓の外から血まみれの神主、丞一は身を乗り出し正邪の頭を鷲掴みにした。
「────ジャンプをぉ、返せぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 丞一は鷲掴みにした頭をフロントガラスへ叩きつける。会心の一撃にさすがの鬼である正邪も気絶した。
 運転手がいなくなったことで舵を失ったトラックは山道から崖へ落ちていった。


「友情、努力」

「勝利」

「よく分からないけど」

「まんざらでもねぇな」






「なんて思うかぁぁぁぁ!」
「ジャンプは私のだぁぁ!」
 ドカァァァァン。
 そして、その爆発とともに年は明けた。





 守矢神社では。人里から多くの顔見知りの人が初詣に来ていた。
 ゴーン。
 除夜の鐘を神奈子が鳴らしていると、早苗のもとにバカルテットのうちの二人ルーミアとチルノ、それに大妖精がよってきた。
「早苗~。この鐘はいったい何なのだ~?受験生が壁に頭を打ち付けてるのか~?」
「違うに決まってるでしょ!ルーミア!これはリストラされたサラリーマンが岩を殴って拳を鍛えているに違いない!」
「そうなのかー?」
「違うよ!ルーミアちゃん!チルノちゃんも何で嘘を教えるの!」
「違うのか!?」
「違うよ!」
 早苗は一歩引いたところで眺めていたが。早苗も良いところを見せたいと、巫女アピールへと向かった。
「ルーミアちゃん。この音はね除夜の鐘って言ってね、毎年大晦日に百八回鐘を鳴らすんだよ」
「百八もなのかー。受験生に対する嫌がらせなのかー?」
「百八って言うのは人間の欲望の数って言われていてね。鐘でそれを打ち消してまっさらに新年を迎えようってことなんだよ」
「さすが巫女さんですね!」
「みんなは心がきれいだから必要ないですね。でもね、大人になるとそう言う汚い物にとらわれやすくなる物なんですよ」
「そうなのかー?」
「そうなんです。欲望にとらわれた者に待つのは滅びのみなのです」







 そして、欲望にとらわれた二人は。
「「ジャ、ジャンプは、俺(私)の、物」」
 地面に這いずくまってまでジャンプを手にしようとしていた。這い寄る混沌なだけに。
 しかし、
「あれ?これ、よく見たら」バタッ


















 赤丸ジャンプじゃん。 
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