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歌集「春雪花」

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 呼ばずとも

  野分は来れど

   影はなく

 風そいためど

   音もなきにし



 呼びもしないのに台風は勝手にやって来るが…彼は全く音沙汰もない…。

 台風のように引っ掻き回すだけでもいい…私は会いたくてたまらない…。

 台風からの強風は様々なものを打ち、実に多種多様な音をもたらす…が、彼の噂は何一つ聞こえてはこない…。


 本当に…なんと無慈悲な世界なのだろう…。



 風吹かば

  流るゝ雲そ

   絶へがたく

 思いに想ふ

   君との思い出



 風が吹けば、雲はその風に乗って気儘に流されてゆく…。

 何を思うでもなく…ただ漂うだけだ…。

 そんな雲のようになれたら…彼を愛さずにいられただろうか…?

 否…。

 雲は穏やかに流れゆくも…私の心は彼への想いで埋まってしまう…。

 そうしてまた想いを重ね…辛くなると言うのに…彼とのささやかな思い出を振り返る…。


 あの笑顔を…また見たい…。



 
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