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とある3年4組の卑怯者

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40 人質

 
前書き
 上級生に因縁をつけられ、会うたびに嫌な目に遭わされるリリィ。そして下校中にまたもや遭遇し、『広島まちめぐり』の本を持って来ることを条件に笹山を人質に取られてしまった!!
 

 
 リリィは家へ戻ると、すぐに『広島まちめぐり』の本を取り、約束の場所へ向かった。
(折角手に入れたのに手放すなんて・・・、買うんじゃなかったのかな・・・?笹山さんにまで迷惑かけて・・・)
 リリィは哀しい思いで走り抜ける。その時、角を曲がる所で誰かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい・・・、あ・・・」
 リリィとぶつかった相手は藤木だった。山根もいる。
「リリィ?そんなに急いでどうしたいんだい?」
 山根が聞いた。
「う・・・」
 リリィは笹山が上級生に人質にされ、解放の条件として本を差し出すことを言おうか迷った。しかし、言ってしまえば笹山にどんな危害が及ぶか分からない。
「な、なんでもないわ!」
 リリィは走り去った。
「リリィ・・・何かあったのかな?」
 山根が疑問に思った。藤木は今日学校でリリィが上級生に絡まれ続けていた事を思い出した。
(もしかして・・・)
「山根君、ごめん、僕はリリィの様子を見に行くよ」
「え・・・?藤木君!僕も行くよ!」
「分かった。一緒に行こう!」
 藤木と山根はリリィを追跡した。リリィが神社の方に入る。
「リリィが神社に入ったぞ!」
「よし、行こう、山根君!」
 藤木と山根は神社へ突入した。そして見てはならぬと思う光景を見てしまった。笹山がその場にいた。リリィに絡まれていた二人組の女子の上級生に目をつけられ、行動を制限されている。そしてリリィがそこに近づく。
(リリィ、もしかして折角買った本を渡すのかい?)
 リリィは本を上級生に差し出す。
「はい、持ってきたから笹山さんをはな・・・」
 その時だった。藤木が己を抑えられずに走り、叫ぶ。山根は藤木が飛び出していくのを見て驚いた。
「ダメだ!リリィ!渡しちゃダメだ!!」
 リリィが振り向くと 藤木が走ってくるのが見えた。
「藤木君!?ついてきたの!?」
「君たち、そんな事して人から(もの)を奪うなんて卑怯で最低だぞ!」
 藤木は上級生達に吠えた。
「あ、何だ!?勝手に入ってきて!さてはチクったな!約束破りやがって!」
「え?そんな、私は言ってないわ!」
「嘘つけ!もうこいつがどうなっても知らねえぞ!」
「おう、理子、やっちまえ!」
 理子と呼ばれた女子が笹山を突き倒し、体のあちこちを蹴りつけた。笹山が(うずくま)る。藤木は見ていられず、理子という名の上級生に「やめろ!」と言って体当たりを食らわせた。
「てめえ、関係ねえのに出しゃばりやがって、うぜーな!」
 茉友といった女子が藤木の腕を掴む。
「や、やめろ!」
「あ!?邪魔しやがって!お前女子に暴力振ったんだぞ!自分が何したのか分かってんのか!?」
「ふ、二人とも逃げるんだ!」
「え・・・?」
「藤木君はどうするの!?」
 笹山が聞いた。
「僕の事は気にしないでくれ!!」
「そんな!」
「うるせえ、ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!」
 藤木が二人の女子に殴られ、蹴られる。二人は痛々しくて離れられなかった。

 藤木がやられる様子を遠くで見ていた山根は非常に動揺していた。
(藤木君が大変な目に・・・、た、助けを呼ばないと・・・!!)
 山根は助けを呼ぼうとしたが、痛々しい光景を見せられて胃腸が痛くなってしまい、動けなくなってしまった。
(う・・・、肝心な時に・・・、なんで胃腸が痛くなるんだ・・・!!) 
 藤木は一方的にやられるわけにはいかないと思い、反撃に抑えつけている茉友という女子の顔を身動きが取れる手で拳を握って殴った。
「あ!おい、また女子に暴力振ったな!」
「じゃあ、どうしろっていうんだ!?」
「さあな!」
 もう片方、理子と言う名の上級生が藤木の股間を蹴った。藤木が蹴られたところを抑える。
「へへ、立ち向かった割にはよえーな!」
 藤木には為す術がなかった。相手は女子とはいえ、女子を殴ったら問題とか言って、逆に相手は平気で自分や笹山を痛めつけ、もはや自分より卑怯だと藤木は思った。リリィは我慢できなくなり、叫んだ。
「お願いですから、藤木君に手を出すのやめて!本あげますから!もう邪魔しませんから!だからお願い・・・」
 リリィは泣いて藤木の解放を乞う。
「リリィ、ダメだ、その本は君のものだから、あげちゃダメだ・・・。僕の事はどうなっても構わないから・・・」
 藤木はリリィに言った。
「リリィさん、本当にいいの・・・?」
 笹山が心配して聞いた。
「もういいのよ・・・」
「へへ、手間かけさせやがって・・・」
 理子が受け取ろうとする。しかし、藤木が理子に飛びついた。
「や、やめろ・・・!」
 藤木が理子の上にのしかかって言った。
「てめえ、どこまで邪魔しやがんだ!ふざけんな!」
 理子が振り払おうとする。
「おい、茉友、こいつ何とかしてくれ!」
「わかった!」
 茉友が藤木に近づく。笹山が思わず藤木を助けようとして茉友を羽交い絞めにした。
「やめて、藤木君に手を出さないで!」
 笹山が茉友に言う。
「あ、お前も邪魔すんなよ!人質の癖して!」
 茉友が笹山の足を踵で蹴る。
「さ、笹山さん!」
 藤木は笹山の方を向いたが、その隙に理子に胸に肘打ちされた。
「ったく、邪魔すんじゃねえよ!のしかかりしやがって、このエロ野郎!!」
 藤木は理子に勢いをつけて顔を蹴られた。
「藤木君、どうしてそんな・・・」
「リリィ、逃げるんだ・・・」
 藤木はリリィに逃走を促す。
「え、でも・・・」
「オラ、さっさとよこせよ!」
 理子が勢いで迫る。しかし、それまで茉友を羽交い絞めにしていた笹山が押しのけるように手を放し、理子の元へかける。
「やめて!」
 笹山が理子を止めようと飛びついた。
「おめえも邪魔すんな!」
 理子は笹山を地面に投げつけた。
「さ、笹山さん・・・!!」
 藤木は蹴られた所を手で抑えて立ち上がった。

 一方、山根は胃腸のせいで傍観するしかできず、誰かが通りかか事とを祈っていた。
(くそ・・・、誰か来てくれ!) 
 

 
後書き
次回:「助人」
 上級生の女子に苦しめられるリリィ、笹山、そして藤木。そして胃腸を痛めて助けに呼ぶことができずにいる山根。そんな時、山根はある二人組に出会う・・・!!

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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