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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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宿屋での選択肢

「おー! はえぇーー!! パン屋だぁー! おぉっ! 見てっ見てっ! ピエロ! ピエロがいるよっ! にひひっ」

遊ばせない絶対に。と、リムジンに乗った時に誓ったはずなのにどうてだろうこの体たらく。ランファはリムジンの窓から見える外の街の景色先ほどから一喜一憂。その喜びをみんなに伝えている。
海の国の首都というだけのことはあると思う。大都市ゼルウィンズには沢山の人が行き交い、沢山の面白おかしい恰好をした商人たちが大道芸を披露している。玉乗りや猿回しやけん玉使いなど様々だ。
テンションマックスで大興奮のランファを横目で見ながらルシアははぁーと多く息を吐いた。小さい子を持つ父親になった気分だ。

「騒がしくって、すみません…」

目の前に座る紫龍に申し訳なく謝るが

「いえいえ。賑やかで楽しいじゃないですか」

とびっきりの笑顔で返された。ほっと一安心したところで、先ほど駅では教えてくれなかったあの話を聞いて見ることにした。
ドルファフィーリングがやる予定だったパーティーが延期する原因となったとある事件について。
紫龍は少し難しそうに考え込んだあと「分かりました」と頷き話し出した。

「……見つかったんですよ」

最初の一言目はこれ。これだけではなんのことか分からない。ルシアを始めシレーナも首を傾げる。ちなみにランファはそとの景色夢中な為話なんてこれっぽっちも聞いてはいない。

「……死体が」
「えぇぇええ!?」

ためてから言った紫龍の言った次の言葉は衝撃以外のなんでもなかった。したい? シタイ? 死体? 動物の死体なら今まで何匹も見たことある。自分で作り上げていた。生きるために。でも紫龍が言う死体は動物ではなく人間のもの。
驚き過ぎてルシアとシレーナは目をまん丸にして開いた口が塞がらない。柱の後ろに隠れていた女性、ムラクモは一人離れたところに座り物憂げな瞳で窓の外を見つめている。

「ドルファの雇っていた者でした。川辺で焼死体として打ち上げられていていたんです」
「……焼死体?」

重たい空気が流れみな沈黙する。あんなにはしゃいでいたランファもここは察して空気を読んで黙り込む。
シレーナは看護師だ。看護師としての観点で違和感を覚えた。川辺で死んでいたというのに何故焼死体なのだろう。しかも丸焦げで顔も誰かは判別できない程ったと紫龍は語っていた。それなのにドルファフィーリングが雇っていた者だとどうしてわかったのだろう。その部分を聞こうとしてみたが、まるでそれを邪魔するかのように紫龍は話し続ける。
先ほどまで大はしゃぎしていたランファもさすがに空気を読んで唾を飲む。

「彼の葬儀などでやむおえずパーティーを延期する事になったのです。ルシア様には大変ご迷惑を……おかけしまして申し訳ございません」
「いっいえっ! そんな事があったのなら仕方ないですって」
「そう言っていただけると彼も救われることでしょう」

最初から最後まで素敵な笑顔を崩さずに語る紫龍。彼のその姿に違和感と恐怖を感じるたのはシレーナただ一人だった。

「犯人は?」

ルシアの腕にしがみついていたランファが震えた声で聴いた。どうやら彼女はこの手の話が苦手なようだ。まあ特異な人物などもいないだろうけど。

「いえ。実はまだ捕まっていないのです」
「えぇーー!? 雪白の騎士はなにやってんのー!?」
「イタイッイタイ!」
「あ…ごめんっ」

犯人が捕まっていないと聞いてつい手に力が入ってしまいルシアの腕をメキメキと折れるのでないかというくらいにギュッと握りる。
すぐにルシアが痛いと言ったので幸いにも折れるまでには至らなかった。青あざでランファの手形がついてしまったが。

「そうですね…。なのでルシア様にもしもの事があっては大変なのでボディーガードを付ける事になったというわけです」
「な、なるほど……」

都会はやっぱり物騒なんだな……と思いつつみんなと離れたところに座っているムラクモに視線を移す。外はもう夕暮れ時、ムラクモの頬が茜色に染まるその姿はまるで一流の絵画を見ているかのようにとても美しい。

「そろそろ宿に着くみたいですね」
「おぉ~やどやど~」

ランファが変な即興ソングを歌っている間に。ドルファフィーリングが経営しているという、ルシア達の本日のお宿へ到着。

「「おぉーーーーー!!」」

ある程度は豪華絢爛な造り何だろうな……と、想像はしていたが、まさかこう来るとは思っていなかった。目の前に立つ建物は宿屋というよりもはや城と言ってもいいものだった。


「あたし知ってる。こうゆう大人な感じの宿ってラブホ……」
「それっ大人違いっ!」
「むぐぐっ」

まったくどこでそんな知識を仕入れて来たのか……。変な事を言いだしそうになるランファの口を慌てて手で押さえ黙らせる。ランファはまだなにか言いたそうに、むぐむぐぐと何かを言っているがここは心を鬼にして塞いだまましておく。

「それでは、私はこの辺で失礼いたします。ムラクモさん。後は頼みましたよ」
「はっはい……」

紫龍が去る時。恥ずかしそうに返事をするムラクモと紫龍がすれ違いざまに、小声で「お任せください。王子」と言っていたのは気のせいだろうか。森で育ち、獣を狩って生活していたルシアは他の人に比べて耳が良い。だから普通の人には聞こえない音が聞こえることがある。……でも今回は空耳だった?

「なにやってんのー? 早く早くー」

二人の会話の事が気になるルシアだが先へどんどん行くランファを追いかけ宿屋の中へと入って行くことにした。
外が豪華絢爛なら当然部屋の中も豪華だ。ムラクモは一人一部屋用意してあると言っていたが、やっぱりみんな一緒の方が安心するし、三部屋も用意してもらうのは申し訳ないということで、三人みんな同じ部屋にしてもらった。

「ルシア様たちのお部屋はこちらです」

一部屋でいいと言ったのがいけなかったのだろうか……。案内されたのは宿屋の最上階。一番いい部屋でアリ一番高い部屋。スイートルームと呼ばれる部屋だった。
めちゃめちゃ広い。馬の町で泊った一番いい部屋がかすんで見えるほどだ。

「ふっかふっか~」
「ベットの上ではしゃいじゃ駄目だってー、ランファー」

ベットがあったら飛び上がる、それは彼女の必須事項。部屋に案内されるや否や一目散に寝室へ向かい、キングベッドに飛び乗ってトランポリンのように大はしゃぎだ。ルシアがどんなに叱っても全然相手にされない。

「私は外で待機しているので、何かありましたらお声をかけてください」
「はーい」

元気よくするランファの返事に、ムラクモはくすりと笑うとへこり頭を下げて部屋の外へと出て行った。
もう外の景色は夕暮れ。これから外へ出かけてるのはないだろう。都会の夜は危険だと何かの本に書いてあったような気がする。だとしたらこのまま部屋でゆっくりしているのが最適だろう。

――とゆうことでルシア達はそれぞれの寝室に行き。それぞれ自由に時間を過ごしまた明日、ということにした。

数刻後。時刻は夜中。みんなが寝静まった丑三つ時。

「……眠れない」

昼間に死体の話を聞いたせいだろうか? 目が冴えて全く眠れない。寝室を出て隣の部屋のドアを少しだけ開けて中を見てみるとスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているシレーナの姿。
どうやら眠れないのは自分だけのようだ。

「少し夜風でもあたってこようかな…」

寝ているシレーナを起こさないように静かにドアを閉め直し部屋を出てみると

「…あれ? あのこにいるのは………ランファ? こんな時間に何処へ行くんだろう」

真夜中の廊下を何処かへ向かって歩くランファの後ろ姿が見えた。
明かりは点いているが従業員の姿も他の客の姿もない。ランファとルシア以外ここには誰もいない。

「あれ? 外で待機してるって言ってたムラクモさんもいないや。どうしたんだろう」

この時ルシアの頭の中には二つの選択肢があった。








後をついて行く-








ムラクモを探す-











どちらを選ぶかは君(読者様)次第だ

選択次第で物語は大きく変わり 結末も大きく変わる

さぁ 君ならどちらを選ぶ――? 
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