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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十五話 秋田の思い出その五

「コタツ買うわ」
「それで自分のお部屋に入れてだね」
「そこで暖まるわ」
「秋田にいた時みたいに」
「そう、あの時みたいに」
 まさにという返事だった、詩織さんの目は遠くを見るものになっていた。その目には秋田が映っていることはすぐにわかった。
「やっていきたいわ」
「そうなんだね」
「ええ、秋田のことは忘れられないから」
 ここでまただ、詩織さんは一杯飲んで述べた。
「私がここに来るまで暮らしていた場所だから」
「だからだね」
「忘れないわ、そうね」
「そうねって?」
「秋田よ」
 詩織さんははっとした様に言った。
「秋田の歌よ」
「夏休みの宿題に」
「そう、秋田の歌なら」
「ああ、いいね」 
 僕は詩織さんのその言葉に頷いて応えた。
「確かに」
「そうね、郷愁だね」
「それになるわね、それでいったら」
「うん、いい曲になるかもね」
「思い入れをぶつければ」
 詩織さんの故郷へのそれをだ。
「若しかしたら」
「今までよりもだね」
「いい曲が出来るかも知れないわ」
「そうだね、じゃあ」
「ちょっと、明日いえ飲み終わったら」
「すぐに?」
「作詞作曲にかかるわ」
 飲むスペースが速まった、これまで以上になった。
「そうするわ」
「飲み終わったらなんだ」
「すぐにね」
「もう一升飲み干しそうだね」
「いや、飲んだわね」
 空になろうとしている一升瓶を見てだ、詩織さんはまた言った。
「ハイペースで」
「これまでも速かったよ」
 もう充分にだ。
「それでもなんだ」
「もうすぐに飲んで」
 言いながらも飲んでいる。
「それから書くわ」
「作詞も作曲も」
「するわ」
 両方共、とだ。詩織さんは答えてくれた。
「どちらもね」
「一気に」
「やるわ、そして夏休みの残りは」
「部活だね」
「それになるわ、テニス部の雰囲気はいいから」 
 詩織さんは部活の話もした。
「気持ちよく出来るわ、顧問の先生もいいし」
「うちの学園はいい先生多いよ」
「社会科の中川先生は変な人だけれど」
「あの人も授業の内容が酷過ぎるだけで」
 本当に酷い、何なのかと思う位だ。
「生徒に暴力振るったりしないからね」
「それは普通だと当然だけれど」
「その当然が出来てない先生多いから」
 このことが問題だ、そもそも。どんな職業でも暴力を振るったらそれで犯罪というのに。自衛隊も警務隊に言えば一発でアウトらしい。
「問題なんだよ」
「そうよね」
「秋田でもそうした先生いたよね」
「いたわ、けれどね」
「けれど?」
「絶対に関西程多くないわ」
「あと神奈川、広島、福岡が多いみたいだね」
 残念ながらこうした地域もだ。 
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