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真田十勇士

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巻ノ百六 秘奥義その六

「特に本多親子じゃ」
「ですか、あのお二方ですか」
「その親子ですな」
「本多家では分家ですが」
「あの方々が」
「平八郎殿が忌み嫌っておられた」
 四天王の一人だった彼がというのだ。
「臓腑が腐った奴とな、そしてな」
「平八郎の言われる通り」
「そう言われますか」
「まさに」
「その通りだと」
「わしはそう思う」
 まさにというのだ。
「あの様な者達はいらぬ」
「幕府にですな」
「謀はいらぬ」
「そう言われますか」
「学はいる」 
 それはというのだ。
「そちらはな、しかしじゃ」
「謀はいらぬ」
「どうしても」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「本来はな」
「政にしてもですな」
「しかと民と向かい合い」
「その民のことを考え」
「毅然と治めるべきですな」
「そうあるべきじゃ、法を定めるのはよい」
 これはというのだ。
「別にな」
「しかし謀となると」
「それはですな」
「よくはなく」
「やるべきではないですな」
「そこがじゃ」
 まさにと言う大久保だった。
「違うのじゃ、わしとあの親子それにじゃ」
「崇伝殿も」
「あの方についても」
「三人共好きになれぬ、特にじゃ」
 大久保は眉を顰めさせてこうも言った。
「わかるな」
「はい、どうもです」
「近頃本多殿と上総介殿はです」
「大久保殿のご実家にです」
「対しようとされていますな」
「そうじゃ、ご本家に対してじゃ」
 大久保家のそれにというのだ。代々松平家に仕えている譜代中の譜代と言っていい家である。
「何か企んでおるやもな」
「それが、ですな」
「特に、ですな」
「気に入らぬ」
「そうなのですな」
「わしは武辺じゃ」
 それだけの者でありそしてそれを誇りとしているのだ。
「謀は出来ぬ、そしてな」
「大久保家のご本家もですな」
「あちらにしても」
「そのことは」
「政は出来る」
 それはというのだ。
「しかし謀はな」
「それはですな」
「出来ませぬな」
「本多殿達程は」
「とても」
「あの者達はそれが得手じゃ」
 その謀がというのだ。 
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