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レーヴァティン

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第二十二話 東の島その七

「そこは」
「ならだ」
「なら?」
「嫌なことを出来るだけ減らしてだ」
 そしてというのだ。
「楽しいことを増やしていきたいな」
「言うね、あんたも」
「悲しい顔、苦しんでいる顔よりもだ」
 そうした嫌なことを前にしてだ、そうした顔になっている人々を見るよりはというのである。
「笑顔を見ている方がいい」
「それはそうだよな」
「そうだな、笑顔は何よりもいい」 
 英雄はこうも言った。
「人の顔の中ではな」
「笑顔か、確かに笑ってないとな」
 船乗りも英雄のその話を聞いて言った。
「人間よくないよな」
「苦しい時でも笑えというな」
「ああ、言うな」
「苦しい時でも確かに笑うといい」
「それは何でだい?」
「その分気持ちが上向くからだ」
 だからだというのだ。
「その方がいい、しかしどうせ笑うならだ」
「あれだな、心からだな」
「笑えた方がいい」
「だから嫌なことは出来るだけ減らしてか」
「楽しいことを増やしていけばいい」
「そっちも出来るだけだな」
「そうだ」
 杯の中の濁酒を一口飲んでから答えた、清酒よりもかなり甘く独特の味わいが感じられた。
「そうして心から笑えればな」
「東の島もそうか」
「人間もな」
「成程な、あんたいいこと言うな」
「俺は笑顔は苦手だが」
 昔から表情にとbしいと言われているし自覚している、もっと言えば口調もそう言われている。
「しかしだ」
「他人のを見るのは好きか」
「かなりな」
「それで言うんだな」
「人の笑顔を作る方法を千知っている奴がいれば」
 英雄はこんなことも言った。
「そいつは最高の人間の一つだな」
「千か」
「それだけ知っていればば」
「そんな奴いたらいいな」
「いれば俺はそいつを尊敬する」
 こうまで言うのだった。
「心からな」
「そう言うんだな」
「そうだ、しかしそうした人間はな」
「まあいないな」
「一つや二つならいるだろうが」
「千にもなるとな」
「そうそういない」
 そうしたものだというのだ。
「だから尊敬する」
「そういうことか」
「俺もな」
「成程な、しかしあんたも色々考えてるんだな」
 煎り豆を食べつつだ、船乗りは彼のそのことがわかった。
「笑顔のこととかもな」
「別に。何も考えていないと寝るだけだな」
「そのままぼーーーっとしてな」
「それもいいが寝るべき時でないと考えたくなる」
「それで考えるのか」
「何かとな」
「そうか、まあ寝てもいいけれどな」
「考えるのもいいからな」
 こう考えているからだというのだ。
「俺はそうもしている」
「そういうことか、じゃあ東の島に行ったらな」
「その時はだな」
「人を笑顔にしてくれよ」
 笑ってだ、船乗りは英雄に言った。 
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