八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二十四話 夏休みの宿題その九
「何もなりません」
「そうだね、後ね」
「後とは」
「小夜子さんもう宿題それで終わりだよね」
「はい」
その通りだとだ、小夜子さんは答えてくれた。
「そうなります」
「そうなんだね」
「それが何か」
「いや、ね」
この時まではただ聞いただけだった、だが。
ここでふと詩織さんのことを思い出した、それで何処となく言った。
「小夜子さん音楽は」
「音楽ですか」
「作詞とか作曲は」
こう尋ねた。
「出来るかな」
「そう言われますと」
「出来るの?」
「わからないです」
これが返事だった。
「どうにも」
「そうなんだ」
「はい、それが何か」
「いや、何でもないよ」
この時はこう答えた、詩織さんのことを隠して。
「それじゃあ絵を頑張ってね」
「はい、そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
僕は小夜子さんに言った、そしてだった。
とりあえず小夜子さんと別れてあ、詩織さんの部屋の扉をノックした。すると難しい顔をした詩織さんが出て来た。
そのうえでだ、こう僕に言ってきた。
「煮詰まってきたわ」
「顔に出てるよ」
僕はすぐに答えた。
「その状況がね」
「そうでしょうね」
「どう考えてもなんだ」
「いいのが出ないのよ」
「作詞も作曲も」
「どちらもね」
どうにもというのだ。
「いや、参ったわ」
「そうなったらね」
漫画家さんとかの近状報告を読んでいるとだ、ブログでもそうだ。
「そうした時はどうしようもないってね」
「そう言うわね」
「だからね」
それでとだ、僕は詩織さんに話した。二人でまた書斎に入ってそこで話をした。
「気分転換とかしてみたら?」
「残り三日、正確に言うと二日半でも」
「このまま煮詰まったままだと」
「その二日半にもっていうのね」
「出ないからね」
こう詩織さんに話した。
「ここはね」
「ちょっと気分転換ね」
「そうしてみたら?」
「それじゃあ」
詩織さんは僕の話を聞いてこう言った。
「飲もうかしら」
「今から?」
「ええ、ちょっとね」
「お酒を飲んでなんだ」
「それで気分転換にしようかしら」
これが詩織さんが至った気分転換だった。
「そうしようかしら」
「そうだね、飲んだらヒントになるっていうし」
「歌でも」
「作詞作曲でもね」
「それならよね」
「ちょっと飲んでみたら?」
詩織さんにまた話した。
「お酒をね」
「そうね、日本酒がいいわね」
「日本酒?」
「好きだから」
東北生まれだからだろうか、詩織さんはお酒は日本酒が一番好きだ。それで今もそちらのお酒をというのだ。
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