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仮面ライダーLARGE

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第一話「主人公は……」※修正

 
前書き
主人公がまだ正式に仮面ライダーになっていません。二話目でなると思います。

登場人物紹介

                       九豪雷馬

都市伝説「仮面ライダー」が大好きで、憧れている青年。しかし、自身は内向的で不器用、おまけに「キモオタ」のレッテルを張らたデブ男だと悲観的。こういった冴えない性分であるが、温厚で正義感は強い。

仮面ライダーLARGE

雷馬が仮面ライダーに変身した姿。攻撃力と防御力に特化したホッパータイプの強化人間であり、グランショッカーからは「ヘヴィーホッパー」と言われているらしい。かつて、ショッカーを裏切った緑川博士の同僚がLARGEを作ったというが、その詳細は不明。
必殺技は「ライダー大車輪踵落とし」!

                       桑凪朱鳥

雷馬の同級生。気弱でおとなしいが、ところどころにお人よし。心優しくて母性的。爆乳で悩んでいる。自身が強化人間であることに気づき、いくらか戸惑いながらも雷馬を支えるよう健気に頑張る。
戦闘能力はないが、回復力、防御力に手向けており、ラージになった雷馬を手助けする。
マイペースでのほほんとした雰囲気から周囲に「ノロ子」と呼ばれて虐められている。
 

 
岩と崖、砂のだけの世界、そこは「時の狭間」と呼ばれる三岳のトンネルがいくつも存在する、モニュメント・バレーを思わせる荒野の異空間であった。
その、寂しくもあらゆる時間、過去と未来のはざまであるこの空域の大地を貫くように数両編成の列車が走り抜けた。
時の列車「デンライナー」であった。その車内には大勢というほど乗客の姿は見えない。ある二人の男だけを除いては……
「……これから、貴方がしようとしていることは一つ間違えると、『過去を変え、未来を変える』、我々からして犯罪といっても過言ではなき事をなさるのです。よろしいのですか?」
皿の上に丸く盛られたピラフをスプーンですくいながら、天辺の小さな紙の旗を崩さまいと慎重に食べ続ける中年の男が、目の前の相席に座わる、同年代の男にそう問う。そんな、質問に対して向かい席の男はこう返答した。
「過去を変えるという意味ではありません。されど、未来を変えるという意味でもないのです。私がこうして行動していること自体が『運命』なのです。ですから、私が過去を変えるということも最初から決められていたこの世界のシナリオ、すなわち『運命』ということなのですよ?」
そう、やや自分に好都合な、勝手とも思われる台詞を言う男に、ピラフに集中する男はそんな彼の言い分を聞いているのか否か、しかし、彼もまた眼力を強めてピラフを睨みながらこう訊ねた。
「では……その運命とやらが代償を求めてきても、あなたは理不尽なくそれを直に受け入れる覚悟を、お持ちなのですね? それが、例えどれほど残酷な結末であっても、あなたは当然の行為として、また運命として受け入れてくださるのですね?」
その、自己責任を問われるというリスクを受け入れるかどうかを男は改めて同意を求めた。すると、向かい席の男は微笑んで返答する。
「それが、私の運命なのなら受け入れましょう? 運命とは抗うのではなく受け入れるものなのですから……」
「……」
スプーンを握る手が止まり、男はジッと向かい席の男を見つめた。その言葉が本当の思いを意味しているのかを確かめるかのように。しばし、互いは真剣にその表情を窺いあった。こうした沈黙がしばしの間続いた。
それだけで時間は今でも過ぎ去っていき、デンライナーは狭間の空間を走り続ける。車内は静まり返りつつも走るかすかな揺れと線路を踏む音は止むことはない。
「ふふっ……」
しかし、先に反応を示したのはスプーンを持つ男の方であった。彼は二カっと笑った。
「それなら、どうぞ? あなたが、自ら定めた選択肢を決断なさってください? しかし、何度も言うようにすべて『運命』として受け入れる覚悟を持つことを条件として加えますからね……?」
「ええ、もちろん……」
すると、狭間の世界を走るデンライナーは光となってその場から消え、目的地である過去の世界へと到着した。
「この時代でよろしいのですか? しかし、この時代は……」
男が問う。すると、向かい席の男は席から立ちあがり扉前に立つと、男に振り返り、笑顔でこう答えた。
「……間違いありません」
「ですが、この時代では……」
「だから、ですよ?」
「……?」
「いくら、奴らでも過去に隠すものなど見つけられることなどできやしない。もちろん、ご心配はありません……」
と、彼は片手に持つトランクを見せた。それを目に相手の男もフッと笑った。
「あっ……」
そのとき、ピラフに刺さっていた旗はバランスを崩してポロリと倒れてしまった。
「ああ……あと少しで新記録だったのに?」
「フフフ、それもまた運命です……」

マスクド・ライダー、すなわち「仮面ライダー」という都市伝説が世代問わずこの世界に語り継がれていた。
無償で、人助けをして人知れず去っていくという好漢達……いうなれば男だったら誰もが一度は憧れを抱く「ヒーロー」という存在である。
俺、九豪雷羽もそんな仮面ライダーに憧れる一人の青年である。今でもライダーをこよなく愛し、憧れを抱く人間であるが、見た目は「キモオタ」というレッテルを張られた冴えない男である。
そんな、俺が「仮面ライダーが大好き!」と言ったら、それは単なるオタクだということだけで終わってしまうだろう。
成績が最下位だった俺は、運よく補欠で藍越学園へ入学することができたが、そこでの生活は中学時代よりもっと最悪であった。

ちなみに、俺がどういう人間かをご存じだろうか? 教室の中から見つけてほしい。その辺にいるごく普通の男子生徒と思ったら大間違いだ。かといって、一番前の席で教科書を読み漁っている眼鏡のふてぶてしいガリ勉野郎でもない。体系的にはそいつの方がよっぽどマシな方だ……
「おーい、クマ男! こっちこいよ?」
「ハァ……」
ため息とともに席から立ち上がって、彼らのもとへ行く俺。そう、俺だ。太った体系は制服越しでもわかる。運動神経どころか成績も最悪な、踏んだり蹴ったりのダメダメ男だ。容量も悪いし、空気も読めない、きっと卒業後の社会人生活も暗闇の中だろう……
チャラい男子達に俺は「クマ男」、ひどいときは「ブタ男」という仇名で呼ばれている。こう見えて背丈は彼らと同じように大きいのに、でかくて太っている印象から「熊」や「ブタ」、「猪」というレッテルを張られている。
「なんだよ……?」
嫌な顔で彼らのもとへ行くと、連中はヘラヘラしながら俺にパシリを命じてきた。
「焼きそばパンと牛乳」
「カツサンドとコーラ」
「カップ麺と鮭おにぎり、んでもってお茶な?」
「……またかよ?」
俺はうんざりした。この学園に入学して初日がからパシリの的にされている。いやだと断ったら蹴ったり叩いたりしてくるからいやだ。教員に相談しても「自分たちのことは自分達で解決しろ!」とか言って知らんふり。どうすることもできないまま、俺はどうすることもできずにそのままなすがままの学園生活を送っていた。
「めんどくさいな……」
「いいだろうが? 別に、テメ―の金で買って来いって言ってねぇだろ? ほら……」
と、彼らは財布から金銭を取り出して俺に手渡した。たまに足りないこともある。
「道草せずにこいよー?」
「……」
ひどいことだ。まだ俺の金で買って来いって言われないだけいいほうだが……
「ああ……」
その後、俺はとぼとぼと一階の購買へ向かい、顔見知りのおばちゃんにメモッた食べ物を注文した。
「おばちゃん?」
「はーい!」
中年太りの大柄な三角巾を頭に巻いた女性が出てきた。購買のおばちゃんである。誰にでも親しく接してくれて、僕の良き相談相手でもある。それに、おばちゃんは俺の印象が強いために顔を一発で覚えてくれていた。
「おやおや? まーたパシリかい?」
「うん、えっと……」
俺は、おばちゃんに注文した。彼女は俺の言ったとおりの食べ物を袋へ入れていく。そして、代金を払った後におばちゃんはしぶしぶとこう言う。
「あんた、ほかの子たちよりも大きいんだし、しっかりおしよ?」
「そうだけど……」
おばちゃんにお説教され、俺は踏んだり蹴ったりのような気分になりながらとぼとぼと教室へ戻った。彼女のいらぬお説教のせいで無駄な時間を過ごした。早く戻らないと俺さえも飯にありつけない。
「はぁ~……」
こうして、何度もため息をつく俺は実に「みじめ」という言葉が合う。この先も、パシリというくだらない学園生活を送るのだろうか? 本当に嫌なところに入ってしまったものだ。
教室に戻った後、俺は連中に頼まれたものを渡したころには、すでに十五分も過ぎていた。貴重な休み時間が十五分も減ってしまったのだ……
俺も、残り半分の時間でさっさと弁当を広げた。早食いだけは得意だからさっさと食べて午後の授業の準備をしておこう。次の授業は……げ! 体育じゃん?
確か、マラソンをやるって言ってたな? 俺の大っ嫌いなマラソンだ。これで時間に間に合わなければ補習くらうし、まるで教員も連中と一緒になって俺をいじめているんじゃないのかと、時にそんな被害妄想さえ抱く。
高校という新しい学園生活の始まりだと思ったのに……まさか、こんなところで中学生時代と何ら変わりようのない学園生活に戻っている。これでは、何も変化のない何時ものくだらない日々と同じだ。少しでも、生きることの楽しさというものをかみしめたかったのに。高校生活は自由という代償と共に自己責任を問われるものであることを改めて思い知らされた。
――いやだなぁ……?
キツい体操服に着替えた俺は、上にジャージを着て廊下に出た。すでに早く着替え終えたスポーツ部の連中を走ることに張り切っている。うらやましいの一言だ。俺もあんな風にかっこよくなれたらな~……?
「あ、あの……?」
「ん?」
その、おとなし気で、か弱い声が俺を制止させて振り向かせた。振り向くと、まだ制服姿で立っているうちのクラスメイト、名前は……誰だっけ? 俺は物覚えも悪いのだ。
「えっと……誰?」
「同級生の、桑凪です……」
学園で一番目立たない女子生徒、桑凪朱鳥。腰まで伸ばした長い鮮やかな黒髪に、マイペースでのほほんとした風格を漂わせてくるが、しかし、そんな彼女の唯一の長所となる箇所が、豊かすぎる胸元である。一言でいえば「巨乳」を通り越した「爆乳」であった。俺もついつい目が釘付けになる。
そんな彼女は、風もないのにタプタプと白い胸のふくらみの乳を揺らしながら話しかけてきた。できるなら手短に……っていうか、どうしてコイツまだ制服のままなんだ? 俺はとっくに体操着の上にジャージまで着ているっていうのに。
「その……教室に戻ったら、誰もいないので……どうしたのかなって?」
その疑問の質問に俺は目を丸くした。さては、時間割を見ていなかったと思える。
「ほかの移動教室に行ったんですけど、どこも違う組の人たちで……どこにいったのでしょうか?」
「……」
俺はやや、呆気にとられた。しかし、俺でさえもこういう天然なところがところどころあるから、人のことは言えない。
「体育……だけど?」
俺は苦笑いしながらそう答えた。
「ふ、ふえぇ~!?」
再び、朱鳥が乳を揺らしながら驚いた。こうしてはいられないと彼女も教室へ戻って体操着に着替えようとするが、ことあることに「ちょっとまっててくださ~い!」とか言われて呼び止められてしまい、どうしてもこの場から立ち去ることができなかった。
「すぐ来ますので~!」
「えぇ……?」
ため息をつきながら、俺はしぶしぶと教室の前で待ち続けた。
「……」
教室の中からは、いまだに「えっと……」、「あれ……?」、などと朱鳥の声が聞こえてくる。そのようすからして、何か困ってしまったようにも思えた。いや、絶対これは困っているに違いない。
――どうしたんだよ?
俺は、引き戸の扉をノックして彼女に訊ねた。
「大丈夫? どうしたの?」
すると、しばらくして朱鳥の返答が返ってくる。
「あのぉ……体操服が見つからなくって……」
「え! 忘れてきたの?」
「いいえ、今日はちゃんと持ってきたんですよ? おかしいなぁ? お昼休みにはちゃんとあったのに……」
「……」
彼女の証言が本当なら、と俺は適当に推測を挙げた。彼女はああ見えて俺と同じようにいじられてるキャラだ。ひょっとしたら……
「なぁ? 時間がないし……学校のを借りなよ?」
「でもぉ……私のとサイズ合わないですから……」
「でも、早くしないと遅れるって?」
体育の顧問は事あることに嫌な教師だ。ことあるごとに嫌みを言ってくる。きっと、朱鳥にはセクハラを言ってくるに違いない。今がこういう時代だから、男性の教員らもやはりストレスが半端ないのだろう。だから、生意気な女子は無視して、あえておとなしくて気弱な朱鳥だけを狙って言うのだ。
「うぅ……」
こうなれば仕方ないと、彼女は職員室から女子で一番大きいサイズを借りて、それを着た。案の定、胸がピチピチすぎて苦しそうだ……やばい、エロすぎる。
「……」
俺は、そんな彼女の姿に顔を赤くしてそっぽを向いた。男とは言え、こういうものは見てはいけないと思春期ながらの抵抗が出る。
「は、早く! 早く!!」
「ま、待ってください~!」
俺の後を朱鳥が追う形で二人は十分遅刻の校庭に向かった。当然、体育の顧問が仁王立ちして俺たちを待ち構えている。
「こら! 遅いぞ? どこで道草食ってたんだ!?」
毛むくじゃらのゴリラ体系で、おまけに顔もキモイと有名なスケベ教師、体育顧問の三原(独身)は容赦なく俺に怒りだす。それに合わせて周囲はクスクスと笑いだしたり爆笑したり……
「ったく! だからブタ男なんて呼ばれるんだぞ? それと……」
三原は、次に俺の時との視線を一変させて、鼻の下を伸ばしながら朱鳥のほうへ振り向いた。
「遅刻常習犯の桑凪も、そろそろ反省っていうものを知ってもらわないとなぁ~?」
「はうっ……」
そういって、朱鳥の割れ目の浮かんだブルマ越しの尻を軽くタッチしやがった。明らかな猥褻行為だ。しかし、周囲の女子からは朱鳥に対して「ざまぁみろ」と言わんばかりの笑みを浮かべてヒソヒソ笑っている。正直、彼女は学園一のマイペースでのんびり屋なのだ。その、マイペース過ぎることである意味問題児にされており、常にのほほんとしているので周囲からは「ノロ子」と呼ばれたり特徴を強調されて「オッパイ本体」とか言われたりもしている。
「ぐすんっ……ひっぐ……うぅっ」
そんな彼女は、のほほんでマイペースでも、やっぱりこういうことをされれば顔を赤くして泣きそうになっていた。しかし、泣きそうな寸前をどうにか辛抱強くそれを堪え続けているではないか。本当に立派だよ。
やれやれ、体育しょっぱなから嫌な思いをしてしまった。早くこんな時間など過ぎ去ってしまえばいいのに……
その後、マラソンの授業が始まった。学園一帯の外を数週する内容だ。ま、数週というところにややアバウトさを感じられるが、正直このマラソン授業は何週走るかは三原の気分次第で決まるのだ。五週目だったり、倍の十週目だったりもする。
とにかくも、三原が「よし!」というまで地獄の授業は続くというのである。そもそも、三原はオリンピックを目指していたスポーツマンだという。その夢半ばで挫折したらしいが、それが悔しくて今の俺たちに何かを求めたいようだ。まぁ、俺には何も求められていないからそれはそれでいいけど?
つーか、そんな身なりで選手目指してたなんて信じられない。髪を茶髪に染め、ジャージもチャラチャラ……生徒指導の先生だから一様、こういう身なりをして不良共を威嚇しているとの理由だが……はっきり言って教師じゃなくてどこぞのチンピラじゃないか?
「おらぁ! 遅れてんぞ? 男子どもぉ!」
女子はさておき、三原が俺たち男子に怒号を挙げる、「女尊男卑」というご時世なのか、きっと婆教頭をはじめ、女教員にいじられている三原にすれば俺らに八つ当たりしてストレスを解散したいという理不尽な行為なのだろう。
そもそも、なぜこんな女性有利の社会になってしまったのか……理由はかれこれずいぶん前に起こった「白騎士事件」というクーデターによるものだ。
「IS/インフィニット・ストラトス」なる、女性にしか取り扱うことのできない飛行パワードスーツが発端で、その風習なのか女性が強い権利を誇り、男たちは単なる労働力としてこき使われ、あしらわられている。過去に、それに反発した反乱も起きたが、ISによって瞬く間に鎮圧され、それ以降「女は最強」という結論が生まれてしまったのである。
「休むな! 九豪、とっとと走りやがれ!!」
――うぜぇな……ゴリラ野郎!
舌打ちしながらも、俺は鬱陶しく三原を睨んだ。奴は、勝ち誇ったように堂々と周囲に威張り散らしている。ムカつく野郎だ……
そのとき、ふと誰かの悲鳴が聞こえた。周囲に交じって男子数人、それも昼休憩に俺をパシッてた男子らが足の遅い朱鳥を囲って何かとちょっかいをかけてきた光景があった。俺はそれを偶然にも目撃してしまったのだ。
「や、やめてぇ……」
今にも泣きそうになる朱鳥の身体をあちらこちらとタッチしたり揉んだりと痴漢行為にでる男子たち。こいつらも、きっとスケバン共にこき使われているから女なら誰だろうと仕返ししたということで、クラスの中でもっとも目立たない気弱な朱鳥をターゲットにしたのだろう。それ以前に、サイズの合わないそんあピチピチな体操着とブルマを着ている彼女ならぜったいに狙われそうなのはわかっている。
「サッカーボールよりもでっけぇぞ? この乳……」
「うわぁ~……めっちゃ柔らけぇ~!」
「いい匂いもしてガチ興奮する……!」
「う、うぅ……」
そのとき、朱鳥はふと近くを汗だくになって走る俺を見て、俺も彼女との目があってしまう。口では言えぬも、彼女は涙を流しながら、こう目で訴えてきた。
――助けてぇ……
「……!」
しかし、今の俺にはそんな度胸がなかった。今ここで出たって返り討ちに合うだけだし、そんなことをしてまで……でも、俺の中に眠る正義感が「そのままでいいのか!」と、疑問を呼び掛ける。それでも、俺にはやはり「勇気」というものがなかった。
――ごめん……
俺は、そう表情で彼女に返答した。そのとたん、朱鳥はあきらめたかのように、泣き顔に戻るとともに、先ほどよりもさらに切なそうな瞳をして、泣き叫ぶのを堪えながら男子どもの痴漢に耐え続けた……
「……!」
俺はその場で立ち止まり、歯を食いしばった。さっきまでの自分なら、これが一番安全な行為だと思うだろう。下手して出てきたってやつらのことだから暴力をふるってくる。それなら見て見ぬふりを……だが、それが危ないとわかっていたも心から後悔が増しだした。
そのまま、俺は空しく体育の授業を終えた。教室に戻るまで、俺は朱鳥との目線を合わせないように、また彼女を見ないようにした。朱鳥は、ずっと下を見続けて黙り込んでいた。気まずい雰囲気が俺個人に襲い掛かる。

放課後、俺はできるだけ体育の時だけのことは忘れようとしながら、変える支度をしていた。教室がガランとしたところで、俺もこの場から出ていった。下手に早く帰ったら先ほどのパシリの奴らが待ち構えている。
「……九豪君?」
鞄を肩にかけて出ようとしたときに。背後から朱鳥の声が聞こえた。その声で俺は再びあのときの気まずさを思い起こしてしまうことになる。この上何を言いたいのか? どうして助けてくれなかったのかといいたいのだろうか? そんな強い言い訳を朱鳥が言えるかどうか……
「気に、しないで……?」
「え?」
俺は予想外の言葉に朱鳥を見た。彼女は無理にでも笑っている。
「よくあることだから、気にしないで?」
そういうと、彼女はすぐ俺に背を向けて教室を出ていった。きっと、俺が何もしなかったことに後悔して、それを知ってか気を使って行ってくれたのだろう、ますますカッコ悪いな? 俺って……いや、最悪だ!
俺は学校を出て家に帰宅した。もちろんパシろうとする奴らをやり過ごしてどうにか帰宅できたところである。
俺の自宅は学校から徒歩で十分程度あるマンションの四階がそうだ。だが、家に帰っても誰もいない。
父さんと母さんは長年の海外出張から未だ帰る見込みがつかないそうだ。何せ、大忙しとのことらしい。そんなことで、俺は常にインスタント食品をディナーとして日々食している。やろうと思えば自分でも作るが、俺が作れる料理と言ったら目玉焼きか簡単な野菜炒めしかできないし、めったに飯なんて作らない。めんどくさいし、油の量が多ければ多いほど、フライパンを熱した際に油が飛び散ってきて熱いからそれも嫌で大方台所についた試はないのだ。
だから、三食の飯はオールレトルトですましてある。
「はぁ……疲れた」
俺は、とりあえず私服に着替えると戸棚から適当にレトルトを取り出して今夜の晩飯にした。早く食って、風呂に入り、ゲームもやって、今日は明日に備えて今日は寝よう。
だが、ゲームをした後に俺はふとパソコンのネットである動画を見た。「仮面ライダー」である。
都市伝説がもとで、今ではそれをベースに特撮ドラマとして放送されている。女尊男卑という風習に押し流されることのない純粋な子供たちは、大方この仮面ライダーに夢中であった。もちろん、特撮オタクも仮面ライダーが好きなのは言うまでもない。俺も、憧れの存在として今も尚好きだった作品を見返しているのだ。
――俺も……仮面ライダーだったらな?
そんなカッコいい自分なら、きっと今日までの惨めな自分とはオサラバして、カッコいいヒーローの新たな日々が待っているに違いない。カッコよく戦って、悪い怪人をやっつけて、周囲から称えられる。そんな英雄に……
そんな妄想にふけっていると、俺は気づかぬ間にあくびをしていた。今日はもう寝よう。
俺は、パソコンの電源を切ろうとしたとき。
「……?」
デスクトップより、新着のメールが届いていた。それも、両親のメアドでも、親戚のメアドでもない。誰のものなのかわからない、全く知らないメールアドレスで受信フォルダーに転がり込んできたのだ。一体、誰からだろうか? ネットショップで会員になった俺へと連絡用のメールだろうか? いいや、それなら懸命にそのショップの名前を載せているに違いない。
ただ、件名だけが「九豪君へ」という一言のタイトルでしか表示されていなかった。
何かのいたずらだろうか? もしや、脅迫メールとか? しかし、人に恨みを買われるようなことは一度もやった覚えはない。いじめの的にはなりそうな覚えはあるが……
では、この宛先人は何者だ? 俺は、気になるゆえに恐る恐る好奇心に駆られてその覧をクリックしてしまった。
「なんだ? これ……」
メールの内容を覚悟して読み上げたのだが……それは脅迫メールや詐欺などでもなく、ただ俺に伝えたいメッセージをそのまま打って送っただけにすぎなかったのである。
メールの内容はこうだ。
『九豪雷羽君へ。
今週の日曜日に熊牙(くまが)神社へ向かうといい。その社には君が必要としている、とあうる「チカラ」が封じられているはずだ。もし、君が今の自分がどうしようもなくて嫌だというのであれば、私はそこへ行くことを進めよう。なに、騙されたと思って行ってみてもいい。そこには、絶対に君が到底たどり着けることの叶わなかった理想の産物が眠る場所であろう。
強制はしない。自分の判断に委ねてくれればいいのだ……』
文は、そこで終わって途切れていた。しかし、一通り読み上げたはいいものの、その内容からして如何にもな胡散臭さを漂わせているようで、とてもじゃないが信用はできないのである。
「……下らねぇ」
どうせ、単なる悪戯だ。俺はそう片付けてパソコンの電源を切った。行ったところでチンピラや変な詐欺師が待ちかまえているだろう。真っ先に浮かんだのはそれである。そう簡単に信用すれば、バカを見るだけだ。
歯を磨いて寝巻に着替えると、俺は自室に折り曲げていた布団を元に戻したら、その上に横たわって眠りについた。
明日も、マラソンの授業がある。いい加減にマラソンなんてやめてくれないだろうか?
これ以上、三原の下らない趣味のスポーツに付き合っていられるかよ! あんな脳筋野郎のもとで授業なんて、こっちの身がもたないってーの!
布団の中で愚痴を唱えながらも、俺はすぐさま瞼を閉じた。

その夜、俺は不思議な夢を見た。見知らぬ神社の境内に立ち尽くし、周囲を不思議そうに見渡していたのだ。
「こ、ここは……?」
周囲には何かしら霧がかかっている。いかにも幻想的でどこか神々しくも不気味な印象を漂わせていた。
見事な代謝を前に、俺はあんぐりを絶ち続けているのだが、そんな周囲に突如にして異変が起こる。
「……!?」
足元から伝わる自揺れは次第に激しさを増し、俺の身体はよろめき始めた。突然の地震に俺は立っていることすら難しくなる。
しかし、地揺れは俺の立っている砂利の周囲しか揺れているようにうかがえたのだ。これは違和感がある。そして、俺の周囲の砂利は一斉にその正体が突き出てきた。
黒い全身タイツを纏い、それに骨格を催した白いラインが走る男たち。彼らはそれぞれに奇声を張り上げながら、瞬く間に俺の立っている一帯を囲った。
「な、なんだ! こいつら!?」
見るからに特撮に出てくるような戦闘員を思わせる身なりであるが……
彼らは、それぞれに刃物を片手に持ち、その先を俺に向けると、一斉に襲い掛かってくるではないか。
「ひぃ……!」
こうも囲まれたまま四方八方より襲われたら助かるまい。リンチにされて殺されるのがオチだ。俺は、無意味にも咄嗟に両手で頭部を守った。
「……!」
……そのときだった。
腰に何らかの違和感を持った。先ほどまで感じなかったのだが、襲われる刹那にそれが出現した。何か、ゴツいベルトのようなものが俺の太いメタボの腹回りに取り付けられている。否、これはベルトである。それも、ただのベルトではない。白いメカニカルな帯に中心には白いバックル状に赤い半球の物体が埋め込まれている。
ただのベルトではない。見覚えのありそうなその腰回りのアイテム……これは!
――変身ベルト……!?
そう、それは紛れもなく「仮面ライダー」が変身するのに使用する変身アイテムであった。しかし、それがなぜ俺の腰に?
だが、俺は無意識にもそのベルトに両手を添えて、咄嗟に叫んでしまった。
「変……身ッ!!」
力強いその叫びが俺の体内を駆け巡り、そして異変が起きた。
ベルトの中央に埋め込まれた赤い球体が歯車状に点灯し、それが激しく回転しだしたのだ。その球体の中の歯車の光が速さを増すたびに、俺の周りに緑色の竜巻が生じ、その竜巻に俺の身体は覆われていく。周囲から剣を手に襲い来る黒い男たちはその竜巻に触れて、一斉に弾き飛ばされた。その竜巻が消え去った時には……
「こ、これは……!?」
アーマー越しの両手を見下ろし、さらには自分の身なりを見下ろす。その姿は紛れもなく変身ヒーロー……
――これは、まるで……
「……仮面ライダー(ヒーロー)じゃないか?」

ガバッ……
勢いよく布団から跳ね起きた。汗だくになる顔をぬぐいながら息を荒くして、天井を見上げた。時計の針は、まだ午前二時を指している。
――ゆ、夢か……
いい夢なのか否か、今の俺は息を荒げるだけで、興奮が止まらない故によくわからなかった。しかし、次第に夢だということを思えば思うほど、何かと悔しさが増してきた。
そのせいか、その後はあまり寝れずにいたのであった……

朝、俺はあくびをいくつもしながら通学路を歩いている。上空には自衛隊のISが優雅に空を滑空している。しかし、ミリタリーとして俺は認めたくないゆえに興味なんてなかった。俺は通学を続けた。
学校について下駄箱で履き替えて校舎に上がるとき、俺は偶然にも朱鳥と会った。しかし、声はかけなかったし彼女も声をかけようとはしなかった。昨日の気まずさから未だに俺の心はぎくしゃくしている。
その後、教室で何気もなくつまらない授業を延々と繰り返して、昼休みに入った。
今日はパシる連中はいなかった。なにせ、昨日何せ昨日のマラソンで朱鳥に猥褻しているところを偶然にも通りかかった人に見られてしまったため、それで学校が訴えられて無期限の停学処分を食らったという。いい気味だ。きっと、連中はそのまま学園を去るに違いない。女尊男卑のご時世、こうなってしまったら男はもう今の居場所を失うだろう。それが今の世の常である。俺は、それに追い打ちをかけるかのように、先生に連中が俺をパシリにしていたこともチクっておいた。これでもう逃れることはできまい。
しかし……
「……」
自習中、女子の数人がノートのページを丸めて朱鳥へ投げつけてくるのである。それを朱鳥は席に座りながらうつむき続けているだけであった。
もちろん、俺はそれを見ていい気分がしない。しかし、他の奴らは見て見ぬふり、もしくはイジメている女子と同じように笑いをこらえている。最低な奴らだ。こんなこと……
今すぐにも、やめさせたいという衝動に駆られてしまうも、ここで騒ぎを起こしたら元も子もない。ここは絶えるしかないのだろうか?
そうこうしているうちにも自習の時間は終わって、昼休みになった。
「……朱鳥?」
購買でパンを買いに行こうとした矢先、目の前を朱鳥が横切っていった。行先は俺と同じ購買であった。
今日も購買の前で生徒たちの行列はすごかった。しかし、そんな人ごみに交じ和うことなく、ただ目の前で黙って見ているだけだった。船客の生徒たちが次々にパンを買っていって、居なくなるまでただ茫然と待っているだけだった。こんなんじゃ、人気のパンはおろか、安いパンすらもかえないだろう。まぁ、俺も同じようにところどころいなくなったところで買うつもりだったが……
もちろん、俺はそこそこなパンは買えた。しかし、朱鳥のほうはずっと立ってばかりだった。時期に、彼女は購買のおばちゃんに問う。
「あのぅ……パンは?」
恐る恐る聞くと、ぽばちゃんは申し訳なさそうに答えた。
「ああ、ごめんね? もう売れきれちまったよ」
「あはは……そうですか?」
苦笑いして立ち去る朱鳥を見て、俺は気の毒に思った。出来るなら、俺の買ったパンをわけてやろうと思ったが、そう考えているよりも先に彼女は行ってしまった。
「……」
呼び止めようとしたが、それでも昨日の件もあるしで気まずくなりながら彼女に声をかける勇気がわいてこなかった。
その後も一人で買ったパンを食べ、それっきり放課後まで授業を受けた。

「……」
学校が終わった帰り道、俺はどうもやるせない気持ちで下校の道を歩いていた。もちろん、気に残るのが朱鳥のことである。あのとき、勇気を出して声をかければよかったのだ。
――俺って、本当に意気地なしだな?
図体ばかりデカいのに中身はこんな程度かよって感じで嫌になる。もっと、図体に見合ったぐらいの根性と自信があれば……
といっても、現実はどうにもならない。自分でどうにかするしかないという答えになる。自分でどうにかしろと言われても、どうにかできる力なんであるわけがない。
小さいころから何をやってもダメで、おまけにデブで頭の悪いライダーオタクだ。こんなやつを好いて近づくような奴なんてこの世の中では誰もいないだろう。
「……?」
悩みながら歩く帰り道、自宅のマンション前で見覚えのある後姿を見た。腰まで伸ばした黒髪と風もないのにボインな爆乳……朱鳥だった。
「あ、桑凪さん……?」
何故だか、俺はふと声をかけてしまった。っていうか、この子の自宅ってここだったかな? そうじゃなかったような……
「ッ……!?」
すると、彼女は驚いて俺の方へすぐに振り向いた。
「や、やぁ……ども」
「……」
しかし、振り返った彼女の顔はいつものマイペースでのほほんとした表情ではなかった。
「ど、どうしたの?」
苦笑いして問うと、時期にこちらを見つめてきた。それもしばらくの間こちらを見つめてくる。なにか、悪いことでもしてしまったかと今日あった出来事から一番言葉でやらかしてしまったことは何かと探り出した。
「九豪君……」
すると、次第に彼女は悲しそうな顔をしてきた、食いしばる様に口元を歪ませているが、それも限界に達して、両目からも次第に涙が滲んできた。
そして……
「ひっくぅ……はうぅ……うええぇんっ……」
泣いてしまった。静かに両手を目元に添えて……
「く、桑凪さん!?」
すると、信じられないことが起きた。
「九豪君っ……!」
彼女が、涙を散らしながら俺の胸……というより腹に飛び込むと、さらに火が付いたかのようにウエンウエンないてしまったではないか。
「ちょ、ちょっと!? こんな場所で……」
偶然人気はないが、このままじゃまずい。
「と、とりあえず……」
このままにしておくのもできないし……仕方ない。
「とにかく、此処じゃアレだしさ。中へ入る? 何か話したいことがあれば聞くから」
とりあえず、彼女を俺の部屋へ連れてきた。しばらく落ち着くまで寛がせてあげればいいかな?
「はい」
と、姿勢正しく正座している彼女のもとへホットカルピスを作ってテーブルに置いた。
「あ、ありがとう……」
「少し散らかっててごめんだけど、いったい何があったの?」
「……」
しかし、朱鳥は口を閉ざしたままだった。それゆえに出されたホットカルピスのカップにも手を付けようとする気配がない。やっぱ、無理やりだったかな?
でも、しばらくしてからようやく口を開けてくれた。
「……つい、辛くなってしまって」
「え? ああ……虐めか」
それを知ったとき、俺も不機嫌に表情を曇らせた。確かに、彼女を標的に虐めをする連中は酷いし、それ以上にひどいのが教員でありながら見て見ぬふりをして、それどころか一緒になって虐めにセクハラしてくる三原の野郎が許せない。
「本当にどうしようもねぇ奴らだ。ああいう奴らこそ人としての器ができてないってうかさ?」
鬱憤晴らしに連中の悪口を言ってやった。こっちもあいつらによく意地悪されるから気にくわないのだ。
「……あっ」
すると、朱鳥はテレビの棚に並べられていた、あるDVDの列を見つけた。
「仮面ライダー!!」
意外な言葉が、彼女から出てきた。なにやら、にぱっと笑顔になって棚からそのパッケージを除いた。
「え? ああ、一様ね? もしかして……興味あるとか?」
「うん! 変身ヒーローが大好きなんですぅ!!」
「へぇ……」
コイツは意外だと思った。女の子でもヒーロー好きの人っているもんなんだな?
「よかったら見る? 好きなの見ていいよ」
「本当ですか? じゃあ、えっと……」
と、朱鳥はそのDVDの中から何枚か手に取って、自分が好きなライダーの作品を手に取った。
「これ、見てもいいですか?」
「ああ……どうぞ?」
テレビをつけて、DVDを楽し気に視聴している朱鳥に、俺は訊ねてみた。
「この仮面ライダー好きなの?」
「うん、園児の頃からよくテレビで見てたんですぅ」
「へぇ……まぁ、俺も毎回見てたよ」
「面白いですよね! この作品」
「ああ、俺も好きだよ。っていうか……」 
「……?」
俺はどこか少し違和感があった。
「あの時の女の子は、仮面ライダーの後にやる変身ヒロインを見てたんじゃない?」
「ああ……見てましたけどやっぱり私は仮面ライダーの方が好きでした。だって、カッコいいじゃないですか? 戦う系の変身ヒロインもいいですけど、やっぱり世界の平和のため悪に勇敢と立ち向かう男の人の姿勢がとっても、とぉ~っても素敵でカッコいいと思うんですぅ~!」
「そうなんだ……」
女子とすらまともに話したこと無かった俺だが、この朱鳥は好きな物にはこんなにも熱意あって語ることができるんだと知った。
と、それ以降俺と朱鳥はDVDを見ながら趣味の話で盛り上がってしまい。気づくと辺りは暗くなって、時計も午後7時になりかけていた。
「あ、もうこんな時間か……」
「ああ、そうですね? それではそろそろ失礼します」
「送ってくよ? 夜道だし心配だから」
「え、でも……」
先ほどから自分ばかり迷惑をかけてしまったのにと、朱鳥はやや遠慮気味だった。
「今日は、趣味の合うクラスメイトと話せて楽しかったし、せめてお送りさせてもらうよ?」
「ごめんなさい……さっきから私」
「気にすんなよ?」
俺はそのまま、彼女を連れて外に出ると朱鳥の自宅まで送っていった。
「へぇ~? 桑凪さんの家って神社だったんだ……」
これは意外だった。何せ、入学時に顔を合わせたぐらいで彼女についての詳細はこれまで一切不明であったのだ。
「あ、ここまでなら大丈夫です」
と、石段の前で彼女は振り向いた。
「そう? じゃあ、俺はこれで……」
そのとき、運悪くこの場で腹の虫がなってしまった。もちろん俺のだ。その音を朱鳥は聞き逃すことなく耳に入れていた。
「あ……」
「うふふ、もしよろしかったら御夕飯を食べていかれますか?」
「あ、いや! 俺はその……」
「今回は、いろいろとお気を使わせてしまいましたし、何かお礼でもと……あ、すみません。ご迷惑でしたか?」
「いや、じゃあ……お言葉に甘えて?」
――何やってんだおれはぁ……!!
心の中で、そう叫んだ。こういう展開を誰が予想していただろうか? 少なくとも、こんな展開を誰よりも予想していなかったのは俺自身である。
いいのか? こんな大柄なデブ男が女の子の家に上がって……
しかし、気が付くと俺は朱鳥のあとをついて石段を登っていき、暗くなった境内へついた。そこから、社務所兼自宅へお邪魔したのだ。
「お、お邪魔します……」
「はい、上がってくださいね?」
と、食卓の卓袱台へと招かれた俺は緊張気味に座布団の上で正座していた。ちなみに俺は正座できない。
「あ、胡坐でもかいて楽な姿勢で寛いでくださいな?」
「はい……」
また、お言葉に甘えて俺は足を崩した。
「何が食べたいですか?」
と、俺の隣に腰を下ろしてそう問う。
「えっと、お任せで」
「わかりました。じゃあ、テレビでも見ててください」
と、立ち上がった朱鳥は制服越しにエプロンをつけて台所へ向かった。
慣れた手つきで料理を始めるその姿を見つめていた。普段はのほほんとしたマイペースかつのんびり屋なのに、包丁を持つと、いつもの学校で見る彼女とは違ってテキパキと料理をしている主婦に見受けられた。
「……」
まな板の音と、フライパンで炒める音が聞こえる。台所に立つ朱鳥の後姿を見ていると、彼女はあっという間に料理を作り終えるてお盆に乗せ、卓袱台へ運んできた。
「はい! できましたよぉ~?」
上手く作れて上機嫌な顔でにぱぁっと笑みながら料理を俺の前に乗せた。
「お、美味そうだな……」
「普通ですよ。じゃあ、一緒に食べよう?」
「ああ、頂きます……」
と、俺は朱鳥と一緒に両手を合わせて合掌。彼女の作った料理を口へ運んでみると、これまた美味であった。下手すればウチのお母んが作るモンよりもスゲェ美味い」
「うまっ……マジヤバイ」
「本当ですか? よかった~……いっぱい食べてね?」
どうやら予想以上の感想が返ってきて朱鳥も歓喜的様子だ。
――久しぶりだな? 誰かとこうして飯食うの……
気づけば、いままで一人で飯を食っていた。両親がいない自宅ではすっかり孤独にもなれて、無意識にもそれが当たり前だと思い込んでいた。
けど、やっぱり誰かと一緒に食卓を挟んで食う飯はボッチ飯よりもさらに美味かった。そう思うと、何だろう……目頭が熱くなりそうだった。
それに、朱鳥の飯が美味すぎて次から次へと箸が止まらない。
「母さん! おかわり……あ」
ついつい、家族で食卓を囲んでいた時代を思い出してしまったのか、のほほんとした朱鳥から感じた家庭的な風格がお母んと重なってしまった。
「ご、ごめん……」
「ふふ、いいですよ? おかわりですねぇ。じゃあ、私も……」
「ありがと……」
やっぱ、気まずかったかな? そう思いながらも俺はつけっぱにしていたテレビへ視線をそらした。
――あっちゃぁ……変な風に思われたかな?
「は~い! おかわりですよ?」
と、朱鳥は大きな茶碗にてんこ盛りで持った飯を目の前に置いて俺を驚かした。いや、俺の体系を見て気を使ってくれたのはうれしいけど、彼女も俺と同じ量の盛り方で上手そうに白米を頬張っていた。
――桑凪って、けっこう大食らいなんだ……
「やっぱり、お腹がすいたときはお腹いっぱい食べたいですよねぇ~?」
「そ、そうだね……」
俺は苦笑いしながらも、この美味い食事を続けた。飯を食いながらもやっぱり話は趣味の話で盛り上がった。
その後、楽しい食事は終えて俺はそろそろおいたましようかと思って席から立った。
「もうこんな時間だし、そろそろ失礼するよ?」
明日も学校だしな?
「……そうですね? では」
朱鳥は、なにか心残りがあるような顔をしつつも、俺を玄関まで送った。
「じゃあ、また明日学校で」
「はい……」
俺は玄関で靴を履いて出ようとしたが……
「あ、あの……!」
ふいに呼び止められてしまった。
「え? なに?」
振り返ると、やや戸惑う姿勢でいる朱鳥がいた。
「……いえ、なんでもありません。おやすみなさい」
しかし、何でもないと言って彼女は微笑んだ。しかし、どこか悲し気な……寂し気な瞳をして俺を見ていたように思えたが、俺は無関心にもそこまで考えずに境内から出て行った。

翌日藍越学園にて

「あ、おはよう! 九豪君」
「ああ、おはよう?」
正門前で朱鳥と出会った。彼女は、昨日よりも親し気に明るく俺の傍へ駆け寄った。
「昨日はごちそうさん」
「うん、またよかったら食べに来てね?」
「そんな……今度は何か俺が奢るよ?」
そんな二人が仲良く教室へ入っていく姿を、後ろから指さしてみている連中は、なんだか気に入らない様子であった。
昼休み、俺は購買のパンを齧りながら廊下をうろついていた。教室で食っていると男子共にパシられるからだ。
「……や、やめてぇ……!」
「!?」
その声は朱鳥だった。彼女の声が近くの教室から聞こえてきた。俺はなんだか嫌な予感がした。
「朱鳥……!」
ひょっとして……

音楽室。そこには彼女を虐めている常習犯の男女の生徒と、その中心に立っている男……マジかよ? 体育の三原じゃねぇか!?
「お前さ? あのクマ男といちゃついてて忘れてんじゃねーの?」
男子一人が朱鳥の胸ぐらをつかんでいる。
「つーかさ? 今日何円持ってきたんだよ?」
茶髪女子の一人が言う。
「そ、それは……」
「アンタんちさ? 神社やってんじゃん? 払いきれないなら、賽銭箱からくすねてきちゃいなよ?」
「そ、そんなことでき……」
ペチンッ!!
朱鳥の白い柔肌の頬へ、女子の一人が平手打ちを放った。
「はうぅ……!」
「テメェの事なんか聞いてねぇんだよ!? 払うか断ってボコられるかのどっちかだ!!」
「うぅ……そんなぁ」
その痛みと恐怖とで、朱鳥は目を赤くして目頭を熱くさせた。
「早くしねぇと、三原の餌にすんぞ!?」
男子がたけって三原へ振り向いた。教員の三原は何も言ってこないが、逆に息を荒げて興奮しているようだ。
「本当にノロ子ってマイペース過ぎて問題児だよな? コイツのせいでしょっちゅう授業や休憩が台無しになんしさ?」
「こいつぁ、先生からお仕置きが必要じゃね?」
すると、男子が三原へ振り向いて……
「先生、ちょっとノロ子に体罰しちゃってください」
その一言で、三原は教師としての何かを放り捨てた。
「よ、ようし……お仕置きだ!」
と、三原は背を向けて逃げようとした朱鳥を羽追い締めした。
「……せ、先生……やめてくださいっ……!」
「いいじゃねぇか? あんな嫌らしい乳揺らしながら校内をウロウロされていたら、こっちたぁ我慢なんてできやしねぇよ!」
「そういや、お前って処女っぽいよな? もしかして、誘ってんのか? ん?」
三原は、後ろから朱鳥のか弱い身体を見下ろしながら、そのゴツい片手が彼女の能満な乳を鷲掴みに揉みまわし、さらにもう片方の手のひらが朱鳥のスカートの中へ突っ込んで、朱鳥が穿くパンツ越しの尻を乱暴に揉みつかんでいた。
「う、うぅ……」
その、あまりの恥じと恐怖に朱鳥はすすり泣きと共に身体が震え、声も出なかった。そんな彼女に密着する三原は息を荒げてよだれを垂らし、週の虐めっ子らはニヤニヤと見下ろして、中にはスマホで撮影する奴もいた。
「まぁ、ノロ子と九豪のクマ野郎とじゃお似合いのカップリングじゃね? ギャハハ!」
茶髪の女子が、そうスマホで撮影しつつ下品に笑った。
「まあ、あんなキモオタのブサ男なんか誰にも相手されないかと思ったけど、ノロ子と出来てたなんて意外だったわ」
周囲から雷馬を蔑む言葉を彼女へ浴びせると、そのとき初めて朱鳥は口を大きく開いた。
「九豪くんは……そんな人じゃありません!」
「はぁ? 何コイツ?」
「九豪君は……とても優しくて、カッコよかった……」
「なに最低モン同士で庇いあってんの? マジキモイんすけど!」
「先生、いつまでノロ子のムチ肉触ってんすか? そろそろ本番いきましょうよ?」
と、女子の一言が三原の欲情を起爆させた。
「う、うひひ……!」
――助けて、九豪くん……!
ただただ、自分が知るクラスメイトを思った。今までイジメられたり、いやらしいことされたりしてきた彼女にとって、唯一害を加えたりしない優し気なあの青年に救いを求めた。
この前までは、悔しい顔をしながら見ていただけの彼であるが、それでも彼女にとっては唯一の頼れる存在でもあった。
「さーって、それじゃあ生徒と教師のスキンシップでもやっか?」
……が、その時であった!
バタンッ! と、勢いよく戸を開け、一人の大柄な青年が入ってきた。その人間に桑凪は思わず涙ぐんだ。
「く、九豪君!?」
「げぇ!」
「ブタ男か?」
「くそ……クマ男かよ!?」
九豪の存在に思わず三原や他の生徒らは振り返った。
「桑凪! 大丈夫か!?」
「う、うん……」
「……あんたら! 何やってんだよ!?」
俺は、朱鳥にまとわりつく三原を振り払って彼女を俺の背に隠し、朱鳥も俺の背中にしがみついて離れない。
「こ、これは……」
まさか、DQの生徒らに朱鳥を性暴力しないかと誘われ、その誘惑に負けてしまったことを知られたら自分は教師として、社会からも……されど、密着していた場面を見られれば言い逃れることなんてできまい。
しかし、それでも三原は往生際の悪いようで言い逃れを言い始めた。
「こ、これは……桑凪がフォークダンスの練習をしたいと言い出してきてな? その手ほどきとして……」
「じゃあ、何で桑凪とそこまでくっついてるんすか!? それに、桑凪のスカートに手を突っ込んでましたよね!? 息も荒げて……桑凪嫌がってんのに!!」
「そ、それは……!」
「……自首してください」
「う……うるせぇ!!」
そういうなり、今度は俺に桑凪は拳で襲い掛かってきた。それを、かわせずに頬へもろに食らってしまう。
「いってぇ……!」
「九豪君!」
朱鳥は、俺の元へ膝をついて俺の肩に手を添えた。俺が倒れている隙に、三原は生徒らに命じる。
「お、おい! お前ら……コイツらをやれ。あとで俺が庇ってやっからとにかく死なない程度に二人を口封じだ! いうこと聞いてくれれば、お前らの前科なかったことにしてやんよ?」
「マジで? 約束破んなよゴリラ」
すると、男子達はいっせいに俺と朱鳥を囲った。
「悪く思うなクマ。お前と朱鳥半殺しにして口封じすりゃあ、俺らの前科消してくれんだからさ?」
「ふざけんな! お前ら本当に人間かよ?」
「お前こそ、その図体からしてニンゲンかよ?」
「あ、朱鳥に……コイツにだけは手だすな!!」
俺は、片手を広げると後ろで震えている朱鳥を守った。
「デブがプリンス気取ったってキモイだけだっつうの!!」
そして、俺の鳩尾へ拳が飛んできた。
「うぐぅ……!」
そのまま膝をついて鳩尾を抱えた。
「く、九豪君!?」
そんな俺の両肩に手を添えてる朱鳥は、必死で訴えた。
「お願い! 九豪君だけには酷いことしないで!?」
「黙れよ! ノロ子のクセに!!」
女子が彼女に向かってパイプ椅子を振り下ろした。それが、彼女の頭上から襲い掛かり、朱鳥は頭を抱えていたがった。
「う、うぅ……」
「や、やめろぉ!!」
そして、もう一発ほど女子が勢いづけてパイプ椅子を振り下ろそうとするとき、俺は咄嗟に朱鳥へ抑え込む形で庇い。俺の背中にパイプ椅子が命中した。
「ぐはっ……!」
「く、九豪君!?」
「ウゼェんだよ! デブゥ!!」
と、男子らは朱鳥に覆いかぶさって庇う俺の背中や脇腹、頭部へ蹴る殴るの暴行を加えた。しかし、俺はそれに耐え続けた。
――マジで、俺どうしたんだろう……?
ここまでするほど肝のある奴じゃなかったのに、いつのまにか一人の女子のためにこんなことをすることになっている。
――なんでだろう……?
昨晩、飯を一緒にくったことが何よりも心に残っていた。こんなやつに飯を作ってくれて、さらに一緒に飯を食ってくれたこと……
こんな俺に、此処までしてくれて……
暴行を受け続けながらも、俺はそう思い続けていた。
「くそっ! おい、こうなりゃ失神させてもいい! なにか鈍器とか……」
「やめときな? 変態教師」
三原がそう言おうとしたところへ、扉付近から聞こえてきた声に制止された。
「だ、誰だ!?」
三原が振り向いた。そこには、赤いロン毛の男子生徒が両手を組んで宥めていた。
「弾……?」
俺は呟いた。五反田弾、俺と同じクラスメイトで家が食堂をやっている。俺とは何度か話すが、せいぜい知り合い程度だ。
「お前らの一部始終はちゃーんと録画させてもらったぜ?」
と、彼は片手にもつスマホを連中へ見せつけた。
「弾、テメェ……!」
生徒らは一斉に弾を睨みつけたが、彼は全く動じない。むしろ、負けない形相で睨み返した。
「テメェらのことは前から気に入らなかったんだよ。俺の食堂の近くを溜まり場にしやがってよ? そのせいでこっちたぁ店に来る客も減るしで商売あがったりだ! いっそのこと少年院ぶち込まれて園児からやり直してこいや?」
「この野郎……!」
「あとさ? お前ら全員シャブってんのは知ってんだぜ? 調べりゃすぐわかることだしさ? 俺がサツにチクりゃイチコロだ……・」
もっとも、前科のある彼らからすれば警察は前々からマークしていた。
「んでもって、三原の先公もこれで終わりだな? テメェはきっと社会的に抹消だ」
「そ、その動画を消せ! さもなけりゃ……」
すると、三原は生徒の一人が持っていたパイプ椅子をひったくって、雷馬たちへ振り下ろそうとした。すると……
「あ、いっけねぇ? このスマホ、録画したままだったぜ」
「なっ……!?」
つまり、三原が雷馬たちを人質に取ろうとしたところや、弾が生徒たちに対して放ったこともすべて音声だけでも撮れているわけである。
「お、お前たち! コイツも口封じしろ……」
三原は、弾を指差して生徒らに命じた。しかし、弾は余裕であった。
「もうそろそろかな?」
と、弾は階段の方から足音が聞こえたのを感じた。
「何事だね!?」
そこには、教頭をはじめとした幾人かの教員が血相をかいて駆けつけに来たのだ。
「み、三原先生……これはどういうことですかッ!?」
壮年で、やや頭の薄い教頭は、三原に凄い剣幕で問い詰める。
「御手洗に頼んで教員たちを呼びに行ってもらったのさ?」
と、弾は何時もつるんでいるダチの名を口にした。
「三原先生、とにかく事情を話してもらいますよ!?」
教頭が三原を睨みつけた。
「く、くそっ……!」
三原は、ガクッと膝を落とした。
その後、三原は逃げようとしたところを数人の教員らに押さえつけられ、一緒に居た生徒たちと一緒に警察の御用となった。
「無事でよかった…・…大丈夫か? 桑凪さん」
「九豪君……!」
安心したのか、朱鳥は火が付いたかのように泣きながら、ボロボロになった俺の胸に飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと! こんなところで……!?」
「怖かったぁ……! 怖かったよぉ……!」
俺のデブッ腹の中で泣き出す朱鳥を見て、俺もホッとした。しかし、そこを見ていた弾に見られたのがまずかった。

しかし、それからは俺と朱鳥はお互い何事も無かったかのようにまた元のクラスメイトに戻った。しかし、前よりも互いに親しく会話をするようになった。同じ趣味仲間として俺は高校で初めて友達ができたという感覚を得た。
朱鳥もいじめられっ子から解放されたことだし、俺をパシリにするやつらは全員いない。退学になったしで一石二鳥である。
今後も、周囲の脅威に負けぬよう努力することを決めた。今はまだまだ気が小さいが、それでもいつかは……
そんなときである。
「あ、あの……九豪くん?」
「ん? って……桑凪さん!?」
彼女はやや顔を赤くして俺の座る席まで歩み寄ってきた。
「その……今日、お暇?」
「ひぇ、え? ど、どうした……?」
緊張してあまり舌が回らない。
「あのぉ……えっとぉ……今日ね? もし、だけど……あのね? 九豪君が良かったら……私のお家に来ない?」
「桑凪の……って、えぇ!?」
「い、忙しいなら結構ですぅ……!」
焦り、慌てる朱鳥だが……俺はとっさに。
「うん、行くよ!」
「え、えっと……いいの?」
「き、来てもらいたいから……だめ?」
「く、桑凪さんがいいなら……また、お邪魔しようかな?」
「じゃ、じゃあ行こう!? 私の家」
「うん、えっと神社だよね?」
ちなみに今更であるが、俺は神社が好きだ。よく、ツーリングの途中で雰囲気のいい神社があれば立ち寄って鳥居の写真を撮っている。さすがに境内は罰が当たりそうだから撮れないけどね?
「いい忘れたけど、私の家の神社は熊牙神社って、いうの……」
「熊牙神社!?」
ふと、俺はパソコンのメールに送られてきた文中のワードを思い出した。

 
 

 
後書き
次回の仮面ライダーLARGEは!

朱鳥「あ、いらっしゃいです!」
雷馬「ご、ごめんね? ご奉仕中だっていうのに……」

海東「もう遅いよ? この、『ライダーベルト』は頂いていくね!」
雷馬「アンタ、何モンだよ!?」
海東「僕? 僕は……そうだね? 『通りすがりの仮面ライダー』とでも言っておこうかな?」
雷馬「か、仮面ライダー……!?」

怪人「お、お前……そのベルトが装着できたってことは、キサマも『仮面ライダー』か!?」

朱鳥「九豪君ッ! 叫んで!? 『変身』って!!」
雷馬「!?」
朱鳥「変身して! 『仮面ライダー』にッ!!」
雷馬「……!」

――……これって!?
まるで、夢と同じ展開じゃないか!? 

朱鳥「仮面……ライダー……?」
 
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