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お化け屋敷だけは

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第二章

「これを見るとって思うだけで」
「提灯お化け?」
「それを?」
「そう思うだけでね」
 それこそというのだ。
「怖くて仕方ないわ」
「いや、提灯に目鼻とお口あるだけでしょ」
「お口開けて舌を出して」
「そうしてるだけじゃない」
「お化けっていってもお笑いでしょ」
「こんなのは」
 クラスメイト達は郁恵にすぐに突っ込みを入れた、見れば彼女達もから傘だの人魂だのを作ったり描いている。
「それでそう言うって」
「どれだけ怖がりなのよ」
「お化け屋敷でもうちのクラスのはコミカルよ」
「コミカル路線でいくのね」
「お化け屋敷にコミカルなんてないだよ」
 郁恵はむっとした顔で言い切った。
「そんなのは」
「いや、あるから」96
「というか全部怖くないお化けばかりだし」
「提灯お化けもそうだし」
「から傘とか塗り壁とかね」
「あと一反木綿お空から垂らして」
「人魂を描いて」
「子泣き爺と砂かけ婆の衣装も作って」
 こちらはクラスの者が着てメイクをしてなる。
「幽霊だってね」
「ただうらめしや~~~って言うだけで」
「何でもないわよ」
「確かに中は暗くするけれど」
「コミカル路線だから」
「こんなの出て来たら」
 だがだった、郁恵は提灯お化けを作りつつまだ言うのだった。
「トラウマものでしょ」
「だから何処がよ」
「全然怖くないし」
「そんなの暗いところに急に出ても」
 そうしてもというのだ。
「全然ね」
「怖くないわよ」
「というかこれが怖いって」
「郁恵ちゃんどれだけお化け屋敷駄目なのよ」
「怖いものは怖いのよ」
 郁恵は友人達の言葉に眉を顰めさせて返した。
「だからよ」
「こんなのでも怖いの」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだった、ここで。
「私お化け屋敷の中には入らないからね」
「文化祭の時も」
「そうするのね」
「何があってもね、幽霊とかお化けにもならないから」
 とにかく中には入らないというのだ、郁恵は提灯お化けを作りながら力説した、そして実際にだった。
 文化祭がはじまりクラスでお化け屋敷が開かれるとだ、郁恵はクラスメイト達に頑とした口調で言い切った。
「じゃあ中に入らないからね」
「その考え変わらないか」
「どうしても」
「小道具持ったり幽霊になったりして」
「そうして入らないのね」
「絶対にだから」
 頑とした口調は変わらない。
「もうね」
「それじゃあ受付してもらうか」
「基本的には」
「あと裏方」
「そっちも」
「中に入らないならいいから」
 あくまでこう言ってだ、郁恵はお化け屋敷には入らないまま文化祭を終えた。そうして文化祭が終わってだ。
 お化け屋敷を畳む時にクラスメイト達にようやくという口調で言うのだった。
「もうこれでね」
「終わってほっとしたか?」
「そうだっていうの」
「そう、これでね」 
 実際にほっとした口調で言っていた。
「入ることもないし」
「よかったよかった」
「そんな感じね」
「もう二度としたくない」
「顔にも出てるし」
「とにかくお化け屋敷は駄目だから」
 今もこう言う程だった。
「二度としたくないわ」
「そこまで嫌いなんだな」
「もう徹底してるな」
「そこまでいくと」
「本当に」
「ええ、嫌いだし駄目だし」
 もう生理的にという感じだった、言葉でもそれを隠していない。
「願わくば二度と関わりたくないわ」
「やれやれだな」
「本当に一度も中に入らなかったし」
「まあセットの用意や裏方として頑張ってくれたし」
「それだけでもいいかしら」
 クラスメイト達はそんな郁恵に少し苦笑いになって言った、だが何はともあれ郁恵はほっとした顔でいた。そしてもう二度とお化け屋敷には関わりたくないと公言まですたのだった。どうしても嫌な為に。


お化け屋敷だけは   完


                 2017・9・29 
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