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真田十勇士

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巻ノ百五 祖父との別れその三

「左様でした」
「ふむ、この山の中でか」
「日々そうしておりました」
「そうであったか、それであの術であったか」
「そうです」
「成程な、そして拙者と会い」
 幸村は猿飛とはじめて会ったあの時のことも思い出した、彼等にとっては懐かしい時である。
「今に至るか」
「あそこで殿にお会いせねば」
 猿飛も思い出して言う。
「どうなっていたか」
「拙者もお主達に会わねばな」
 幸村にしてもというのだ。
「十一人揃わねば」
「とてもですか」
「今には至っていなかったわ」
 こう猿飛に言うのだった。
「やはりな」
「そうですか」
「運命じゃ、お主達に会ったのは。そして運命はな」
 それ自体の話もするのだった。
「変えることも出来る」
「その者の動きと力次第で」
「それも出来る、だからな」
「これから何があろうともですな」
「備えた力でな」
 それを使ってというのだ。
「変えていこうぞ」
「それでは」
「そしてその力はな」
「拙者もですな」
「この度の修行でさらに備えられる」
 猿を飛び超える今の修行でというのだ。
「そうなる」
「それでは精進します」
「あと少しじゃ」
「猿を超えるのも」
「山の神になるのもな」
 その域に至るのもというのだ。
「あと少しじゃ、だからよいな」
「はい、励んでいきます」
「そして拙者もな」
「殿もですな」
「お主達の修行に共におってな」
 十人全てのというのだ。
「得るものがあったわ」
「そうなのですか」
「うむ、兵法の書も読んできたしな」
 学問も励んできてというのだ。
「そこからも得た」
「まさか殿は」
「拙者もといったな」
「はい、確かに」
「奥義に辿り着けるやも知れない」
 こう猿飛に言った。
「真田忍術のな」
「真田忍術の奥義ですか」
「そうじゃ、奥義といっても色々あるが」
「その奥義は」
「奥義の中の奥義、秘奥義じゃ」
 そうしたものだというのだ。
「我が真田家の初代殿が身に着けられたが」
「その後は」
「誰も身に着けておられぬ」
「そうした奥義ですか」
「それを見に着けられた者は初代様だけだという」
「そして殿も」
「若しやだが」
 真剣な顔で猿飛に話した。
「出来るやも知れぬ」
「そうなのですか、しかし」
「その奥義が何かじゃな」
「はい、何でしょうか」
「それはわからぬ」
 幸村にしてもというのだ。 
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