| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

MS Operative Theory

作者:ユリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

内部図解
  AMBACシステム

——推進剤の消費を減少させた、画期的姿勢制御システム——

 MSの腕部や脚部などの質量移動、つまり「手足を振り回す」ことによって推進剤を消費せずに姿勢制御を可能とする方式が「AMBACシステム(Active Mass Balance Auto Control System=能動的質量移動による自動姿勢制御システム)」である。AMBACシステムは、MSの原型であるZI-XA3(クラブマン)も時点で既に採用されていた機構としても知られている。

 大気が存在しない宇宙空間において、機体の姿勢を制御するには、宇宙開発初期から小型のロケットモーターが用いられた。メイン・スラスターの噴射方向に自由度を持たせることでも、姿勢の変更は可能だが、大量の推進剤が必要になるというデメリットがある。また、衛星軌道を周回中の機体が、メイン・スラスターを用いた姿勢制御を行った場合、加減速されるために軌道(高度)も変更されると言う問題もある。こうしたことから、宇宙空間で姿勢を変更するには、その場での回転が理想とされる。そのために姿勢制御用のロケットモーターが搭載されるのである。具体的な挙動として、機体の側部の四隅に姿勢制御用ロケットモーターが設置されている場合、右前方と左前方のモーターを使用すれば、速度を維持したまま機首を左に向けることが可能となる。

 このように、姿勢制御用ロケットモーター(宇宙世紀においては「アポジモーター」とも呼ばれる)は、宇宙空間において必要不可欠な装備だが、欠点も指摘される。それは主推進器とは異なるプロペラントタンクを必要とすることである。しかし、プロペラントの量は少なく、一般的な宇宙戦闘機では、所要時間2.5秒の180度旋回を行った場合、30回で推進剤切れなるといわれる。母艦や基地から発進後、任務を終了し、帰艦するまでに「曲がれる」回数が制限されているという状況は、実施可能な作戦が限られていることを意味する。戦闘/攻撃任務を行い、突発的な戦闘にも対処しなければならない宇宙戦闘機にとって、旋回回数の制限は生存率の低下に直結するものと言える。

 そこで新しい姿勢制御方式として「AMBACシステム」がMSに採用されたのである。AMBACシステムは、四肢ユニットを動かした反作用によって、機体の向きを変更するという機構で、推進剤を使用しないという特性を持つ。旋回回数が制限されないため、AMBACシステムは宇宙用の姿勢制御機構として最適の機構といえた。AMBAC肢(AMBACシステムに使用する腕部や脚部など)は、十分な質量を持った可動肢であれば作業用マニピュレーターでもよく、MAやモビルポッドでも採用された(MA-05(ビグロ)は、AMBACとアポジモーターを併用し、180度旋回を1.3秒で完了したといわれる)。また、バインダーやロングデール・スタビライザーなどの、非四肢型のAMBAC肢も開発された。


——AMBACシステムと姿勢制御用ロケットモーターの差——

 ZEONIC社が開発した試作機ZI-XA3とMIP社製の試作機MIP-X1との競合によって、AMBACシステムの優位性が明確となった。特にミノフスキー粒子散布環境下における白兵戦では、期待の姿勢は頻繁に変化させる必要があるため、MS用の姿勢制御システムにはプロペラントの消費を抑えられるAMBACシステムが適していた。また、一撃離脱戦法を前提とした機体では、偏向型の主推進器や大容量の推進剤タンクを装備するケースも見られた。

■AMBACシステム

 四肢ユニットなどを動かした際の反作用によって、姿勢を変更するシステム。基本的に推進剤は消費しないが、すばやい動作が求められる場合、アポジモーターを併用することもある。アポジモーターのみでの姿勢変更と比べ、プロペラントの消費量は少ない。

■推進剤消費型

 宇宙開発の初期から使用されている、ロケットモーターによる姿勢制御機構。宇宙戦闘機だけでなく、シャトルや艦艇など、非起動兵器においては現代でも広く採用されている。旋回回数はプロペラントの容量にもよるが、機体をコンパクトに設計しやすいと言う特徴もある。



補足事項

——AMBACシステムの歴史——

 AMBACシステムは、ZI-XA3でのシステムの構築から、U.C.0150年代の現在に至るまで、ベーシックな姿勢制御機構として使用され続けている。その一方で非四肢型AMBACシステムの研究も進み、バインダーやフィン・ノズルなどのハイエンド機用のAMBAC肢も開発された。

①最初期/基本型———四肢式AMBACシステム

 マニピュレーターと重力下歩行用の脚部を用いた、一般的なAMBAC肢。必ずしも四肢である必要はなく、MAのクローアームもこれに相当する。ZI-XA3以前のZEON-IC社製試作機の時点で、原型は完成していたといわれる。

②過渡期型———フレキシブル・スラスター系

 U.C.0080年代前半には、RX-78GP01Fd(ガンダム試作1号機)のユニバーサル・ブースト・ポッドに代表される、自由度の高いスラスターポッドが試作されている。可動肢としてよりも偏向推進器としての性格が強かった。

③非四肢型———バインダーの完成

 U.C.0080年代中期になると、RMS-099(リック・ディアス)に非四肢型の推進器一体型AMBAC肢である「バインダー」が搭載された。MSZ-066(Zガンダム)のロングテール・スタビライザーやAMX-004(キュベレイ)の肩バインダーも、バインダーの発展型である。

④多肢型———クロスボーン・バンガードMS用

 クロスボーン・バンガードのベルガ系MSが装備したシェルフ・ノズルや、ビギナ・ギナのフィン・ノズルなど、推進器と一体となった可動肢を束ねたもの。各基が別個に稼動するため、偏向推進器としても高い性能を持つ。


——AMBACシステム以外の姿勢制御機構——

 宇宙艦艇や一撃離脱戦法を行う宇宙戦闘機、0G環境下での運用を前提としない航空機やAFVなどのように、サイズや任務の都合から、AMBACシステムを採用していない兵器も少なくない。AMBACシステムを採用していない宇宙用兵器の大半が、姿勢制御用ロケットモーターか偏向推進器を使用し、姿勢制御を行っている。MAN-08(エルメス)のように、非AMBAC/ロケットモーター式の姿勢制御システムを搭載した起動兵器も存在するが、これは例外中の例外である。また、MSN-02(ジオング)やPMX-003(ジ・O)のように、ロケットモーターなどによる姿勢制御を重視したMSも散見できる。

■ロケットモーター式

 宇宙戦闘機や内火艇といった小型の宇宙用ヴィークルだけでなく、宇宙艦艇や巡洋艦などの艦艇もロケットモーターによる姿勢制御を行っている。

■機体安定用ジャイロ

 MAN-08(エルメス)が採用していたとされる。ジャイロ式姿勢制御機構。内臓式の大型ジャイロによって姿勢を制御する。エルメス以外に搭載した機体は知られていない。
 
 

 
後書き
次回 歩行システム 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧