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レーヴァティン

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第二十一話 風呂屋での情報収集その五

「見てきたけれどな」
「ああ、昔の欧州の戦争ってな」
「日本のとは違うからな」
「十字軍とか三十年戦争とかか」
「もう村も街も通り掛かっただけでな」
 まさにそれだけでだった、当時の欧州の軍勢の多くは傭兵もっと悪く言えば食い詰め者や流れ者がなった者達であった。
「焼くわ奪うわ殺すわ」
「そうしたゲームみたいにだよな」
「とんでもない有様だったんだよ」
「三十年戦争なんか酷かったらしいな」
「新旧両方が殺し合ってな」
 最初は新教徒と旧教徒の神聖ローマ帝国内での内戦だったがそこに他国も入り混沌としたものになったのだ、それぞれの国家や勢力が相手を無残に殺していった戦争でもあったのだ。
「それでな」
「相当な数が殺されたよな」
「そうさ、それも遊びみたいな殺し方でな」
 人間は残虐な一面もある、そしてその残虐な一面が戦場では出ることもままにしてあるのだ。
「血の匂いっていうか戦場の興奮にな」
「宗教、だよな」
「ああ、欧州の歴史の常だろ」
「キリスト教だとな」
「異端とか異教には酷いだろ」
「それで三十年戦争もそうなったんだな」
「俺が思うに宗教ってのは難しいものでな」
 智はこちらの世界では司祭である順一をちらりと見てから久志に話した。
「薬にはなるけれど過ぎたり間違えるとな」
「毒になるよな」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「そこは難しいんだよ」
「それはそうだな」
「日本じゃまあ生臭坊主程度だよ」
 智は話しながら信長の比叡山焼き討ちを思い出した、この頃の比叡山の僧侶達は肉食妻帯等堕落してはいた。
「けれど宗派や宗教が違うってだけでな」
「虐殺しまくるってことはな」
「ないだろ」
「あそこまでの略奪もな」
 まさに徹底的に奪っていた。
「なかったな」
「異端、異教の痕跡は徹底的に消し去る」
「そうしたことって日本にはほぼないな」
「そうだろ、だからまだ薬だけれどな」
「欧州だとか」
「毒になることがあってな」
「そうしたことが起こったんだな」
 三十年戦争、十字軍の様な事態がとだ。久志も智の話を聞いてそのうえで強い顔で頷いた。
「洒落になってないことが」
「そうだよ、人間狂うとそういうことするだろ」
「信仰もそうか」
「神様や仏様を信じるのはいいことだよ」 
 信仰についてはだ、智はいいと断言した。それは間違っていないと。
「けれどな」
「毒にもなることもか」
「あってな」
「それでああいうことにもなるか」
「他人、他の考えを一切認めないってなってな」
 そうしてというのだ。
「駄目になるんだよ」
「そうだよな、しかしな」
「こっちの世界じゃな」
「そこまでなってないな」
「キリスト教、ギリシア、北欧」
 こkで言ったのは順一だった。
「その三つの宗教が混在していますね」
「そうだよな」
「これがいいのです」
「宗教が一つじゃないってことがか」
「価値観が複数ある世界になっていますので」
「血生臭い戦争までは至っていないか」
「しかも民族的にも一つではなく」
 順一はこのことも話した。
「島全体で混在しています」
「あっ、そういえばな」
 ここで久志も気付いた、これまでこの島にいたことから。 
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