| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

78部分:第七話 関羽、山で三人の戦士と会うのことその十一


第七話 関羽、山で三人の戦士と会うのことその十一

「張遼将軍もいるしな」
「そして知恵は賈駆様がいて」
「万全だよな」
「ああ、それに御本人はとにかくお優しい」
 何と董卓の評判は長安では悪いものではなかった。むしろかなりいい。
「お陰で俺達も安心して暮らせるしな」
「全くだ。ただな」
「ああ、最近どうもな」
「あちこちで山賊も出ているからな」
 ここで彼等の顔が曇った。だが長安の街は栄え人々が明るい顔で行き交っている。その繁栄は都と比しても遜色ない程である。
「それがなあ」30
「董卓様も頭を悩ましておられるらしいぜ」
「兵はどうなんだ?」
 ここでこの話も為された。
「兵隊もいるだろうに」
「それが西の異民族に用心しないといけないらしくてな」
「あの羌だな」
「あいつ等か」
「ああ、何時来るかわからない奴等だからな」
 だからこそ恐ろしかったのだ。この世界の中国も異民族に悩まされているという時点ではナコルルの世界の中国と同じであった。
「そっちに用心しないといけないからな」
「それで山賊達までにはか」
「そういうことなんだよ」
「辛いな、それは」
「それでも前よりは山賊も減ったぜ」
 こうした意見も出ていた。
「前なんかかなりだっただろ」
「ああ、もう酷かったよな」
「董卓様が来られるまでな」
「全くだよ」
 民達は困った顔で話をしていく。
「今はかなりましになったし」
「いるものはいるか」
「袁紹様や曹操様のところは人が多いからな」
「その分楽みたいだけれどな」
 袁紹陣営や曹操陣営の話も為される。
「こっちは御二人だけだからな、実質」
「董卓様にお仕えしている確かな人材はな」
「それが辛いよな」
「そう、それにだよ」
 ここで話が変わった。
「最近何か変わった連中が一杯出てるらしいぜ」
「変わった連中?」
「何だそりゃ」
 ここで民衆達の顔が変わった。彼等は店で飯を食べながら話をしている。その中でのやり取りであった。
「変わった身なりでどいつもこいつも逞しい身体をしていてな」
「ああ、それで?」
「どうなんだ?」
「やたらと強い奴等らしい。曹操様や袁紹様はそうした連中を次々と迎え入れているらしい」
「董卓様のところにもそういうのが来て欲しいよな」
「そうしたらあの方も楽になれるのにな」
「だよな」
 董卓は明らかに慕われている、それがわかる会話だった。
 そうしてだ。ここでさらに話されるのだった。
「それにだよ」
「それに?」
「どうしたんだ?」
「何か化け物が出るらしいしな」
「化け物って何処にだよ」
「何処にそんなのが出るんだよ」
 今度はこうした話になった。どんな時代でもどんな場所でもつきものの話である。化け物は人の世と表裏一体の存在であると言っていい。
「そんなのがよ」
「何処に出るんだ?」
「こっから北の方にな。何か凄い化け物らしいぞ」
「そんなに凄いのかよ」
「えげつない化け物なのかよ」
「ああ、滅茶苦茶強くてな」
 まずはそこから話された。
「どんな奴が来ても叩きのめす位にな」
「どんな奴もって」
「そんなにやばいのかよ」
「身の丈二丈はあってだな」 
 大きさまで語られる。
「大きな岩まで平気で動かしてな」
「うわ、怪力かよ」
「強くてでかいだけじゃなくてかよ」
「らしいな。そういう奴が出ているんだと」
「山賊よりやばくはないか?」
 こんな意見が出て来た。
「それだとな」
「ああ、そうだよな」
「そんなのがいたらな」
「まずいよな」
「全くだよ」
 そして誰もがまた困った顔になるのだった。
「董卓様はどうされるんだろうな」
「無視もされないだろ」
「そういう方じゃないしな」
 董卓の評判はやはりいい。慕われてさえいるのがわかる。
「それじゃあ手を打たれるか」
「けれどなあ。あの人って優し過ぎるよな」
「確かにな」
 こうしたことも言われた。
「どうもな」
「それに真面目過ぎるしな」
「いい人過ぎるんだよ」
 これが彼等の董卓の評価だった。
「あれで今の御時世大丈夫なのかね」
「利用されないといいけれどな」
「そうだよな、世の中悪い奴は多いぜ」
 逆に利用する始末であった。
「ああいう人は利用され易いからな」
「何もなければいいけれどな」
「逆に俺達の方が不安になるぜ」
 そんな話をする始末だった。彼等の方が心配する董卓はだ。決して評判の悪い人物ではなかった。むしろ領地ではその逆であった。


第七話   完


              2010・4・19
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧