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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百二十二話 光の車輪その二

 三人で観覧車に乗った、僕は乗ってから少しほっとして言った。
「とりあえず乗る時はね」
「うむ、上手くいけたな」
 井上さんは僕に確かな声で応えてくれた。
「何よりだ」
「はい、本当に」
「後は降りる時だな」
「その時の方が問題ですね」
「そうだ、一瞬でもだ」
「気を抜いたら」
「注意することだ、やはり酔っているとな」
 それもかなりだ、自覚している。
「足元が不安になる」
「僕もそうで」
「だからだ」
「ここは注意して」
「そして降りよう」
「そうします」
「考えてみれば私もだ」
 井上さんは自分のことにも言及した。
「注意しないとだ」
「降りる時にですね」
「しくじる」
 そうなるというのだ。
「人に注意するなら自分もだ」
「注意しないといけないですか」
「人に厳しく言うのに自分がしくじったり甘いとだ」
 そうしたことはというと。
「示しがつかない」
「前の都知事さんみたいに」
「あれでは駄目だ」
「やっぱりそうですか」
「だからああなった」
 あの知事さんはというのだ、とにかく頭は抜群によかった。ただ学校の成績がいいだけじゃなくて学者としての知識も相当だった。
 しかしだ、それでもだった。
「人間として問題があり過ぎた」
「自分のことは出来ていなかった」
「人には言うがな」
「だからああなったんですね」
「人に厳しく自分に甘くてはだ」
「それではですね」
「ああなるのも道理だ」
 まさに失脚と言うべきか。折角都知事になったというのにまさに石を投げられる様にしてその座を辞めた。
「だからまずは自分だ」
「自分が気をつけることですか」
「そうだ」
 だからだとだ、僕に話してくれた。
「私も気をつけよう」
「ダオもよね」
「うむ、君もだ」
「自分のことをまずjね」
「注意すべきだ、人は他人は見やすい」
「けれど自分はよね」
「案外見えていないものだ」
 自分自身のことは自分自身が一番よく知っていると言う人がいるがその実は全くわかっていないということだ。
「自分を見ることが最も難しい」
「鏡がないとね」
「鏡は備えておくことだな」
「いつもね」
「そしてそれで自分を見てだ」
「気をつける」
「そうしないとな」
 こう言うのだった、そしてだった。
 井上さんは窓の外を見てだ、こうも言った。
「こうした外の景色は見やすい」
「ええ、そうよね」
「しかし本当にな」
「自分は見えないってことね」
「どうしてもな」
「そういうことね」
「イルミネーションの美しさは見られても」
 それでもだ。
「けれど」
「自分自身はっていうと」
「その醜さは見にくい」
「難しい話ね、本当に」
「とりあえず降りる時はだ」
「ダオ達も気をつけて」
「そうして降りよう」
「義和に言うだけじゃなくて」
「我々もだ」
 こうしたことをだ、井上さんは本当に自分に言い聞かせていた。そのうえでイルミネーションを見ていた。 
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