歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
372
くぬぎの実
熟れて落つれば
ふる里の
景色に君を
想ふ頃かな
公園に植えられた椚…団栗は日に日に大きくなり、茶色く熟れて行く。
昔は山に入り、団栗だけでなく…山栗や妛など取ったものだ…。
そんな田舎の町並みが…落ちた団栗を見て蘇る…。
稲刈りの終えた田に夕暮れの紅…そこに彼の後ろ姿が浮かび上がる…。
会えない寂しさが…どこまでも伸びて行く…。
目を覚まし
君そなかりて
虫の音に
忍びてもなお
あまりあるかな
彼を見たような…そんな気がした途端、夢から目覚める…。
辺りは未だ暗く…想う故の寂しさが不意に覆い被さる…。
秋の虫は延々と鳴き…その声は闇に悲しみを振り撒くようで…。
彼への想いは振り切れず、堪えようとしても溢れる涙…。
許されるなら…彼と共に在りたい…この命が尽きるその時まで…。
ページ上へ戻る