夢幻水滸伝
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第十九話 四国上陸その十七
「だからこっちは趣味ぜよ」
「それだけかいな」
「ピストルで戦うぜよ、けど戦よりものう」
「貿易やな」
「そっちと政でやっていきたいわ」
「ほなそっち頼むで」
「そして拙僧も」
今度は織田が出て来た。
「宜しくお願いします」
「あんたはあれだね」
玲子が織田に尋ねた。
「仏さんの教えとだね」
「はい、政になります」
「そっちが主だね」
「学識にはそれなりに自信がありますので」
僧侶だけあってというのだ、どの国でもそうだが髪に仕える者は学者でもあるのだ。そこに書が集まるから必然的にそうなる。
「お任せ下さい」
「織田君一年の中じゃ優等生やしな」
「学業優秀で品行方正の」
「性格もええしな」
「うち等とは違ってな」
ここでまた四人が言った。
「穏やかな人気者で」
「皆から慕われて頼りにされて」
「ごっつうええ子やし」
「こんなええ人おらんしな」
「自分等と全然ちゃうな」
ここで大蛇が頭の一つをぬっと出して言ってきた。
「そこは」
「うち等成績そこそこやしな」
「結構さぼるとこさぼるしな」
「いしめとか意地悪は嫌いやけど」
「風紀委員長にはよお注意されるし」
「そやろ、見てたらわかるわ」
大蛇は四人には容赦しなかった、それも全く。
「生き方からしてあかん」
「人間としてどないや」
「ああ、もう一つ頭来て言ってきたわ」
「うち等ほんま何処でも言われるな」
「現実の世界じゃ風紀委員長に言われて」
「大蛇にも言われて」
こう言っても全く反省している感じも悪びれている感じもない、至って平気な顔をして言っている。
そしてだ、さらに言うのだった。
「難儀な話や」
「これでも頑張ってるつもりやで」
「テストで赤点取らんし」
「しかも人として間違ったことせんし」
「赤点取らないなんて凄いね」
玲子は四人のこのことに感心して言った。
「あたしなんてこの前全教科それで追試が大変だったよ」
「あの、それかえって凄いですよ」
「普通全教科とかないですよ」
「そんなん現実にあるんですか」
「先輩そんな勉強苦手ですか」
「何か机に座ったら寝ちまうんだよ」
玲子は自分の場合を話した。
「これがな」
「それで、ですか」
「勉強の方あかんのですか」
「運動神経抜群でも」
「そっちは」
「ああ、こっちの世界でも政の話はね」
朱槍を担いで笑って言うのだった。
「出ると寝ちまうよ、書は読むんだがね」
「ううん、ある意味才能ですね」
「ほんまそういうのあかんのですか」
「どうにも」
「そうですか」
「ああ、まあ勉強や政が出来なくても生きていけるさ」
そうしたことは一切気にしないでだ、玲子はその口を大きく開けて笑って言った。白く実に奇麗な歯だ。
「どの世界でもな」
「まあそれはそうですけど」
「他のことが出来てたら」
「結局勉強なんてそんなもんですね」
「出来ることに越したことはないですけれど」
四人もそれはわかっていた、それで言うのだった。
「確かに織田君みたいに出来たら嬉しいです」
「大学進学も楽で」
「それだけ将来も開けます」
「頭がええのはそれだけで有り難いです」
それはそれでだ、勉強が出来なくても生きてはいけるがよければそれはそれでいいというのだ。
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