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東方霊夢譚

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「慧音さんっ!」


慧音さんの部屋のドアを思いっきり開ける。それが失礼なことだとは自覚しているが緊急事態だ。慧音さんも許してくれるはず
だが


「あれ?いない…」


慧音さんは既に部屋には居なかった。

よく考えてみればこの緊急事態に慧音さんが自分の部屋に居るはずもない。すでに外で里の人達を守っているだろう


(動揺しててそこまで考えられなかった)


悔やんでいても時間がもったいない。今は早く慧音さんに合わなければならない

朝に見たあの赤い霧を夢の中で見たことがある。それもはっきり覚えている
この事件は後に紅霧異変と呼ばれるもので主犯は紅魔館に住む吸血姫レミリア一同。同機は覚えてないが確かそんな感じだったはずだ。そしてこの異変が博麗霊夢が初めて解決した異変であり弾幕ごっこを広めた事件でもある


今、この異変起きたおかげでこの時代が何時なのか分かった
だが今はそれより重要なことがある

それはこの霧が何の危険が無いという事。この霧は単に太陽を隠すだけで人体には何の影響もないのだ。まぁ、この霧が長続きすればビタミンD不足になるかもしれないけど。
けど問題はこの事を私以外知らずに里が混乱に陥っている事だ
この地最後の幻想が集う幻想郷では何が起きても不思議ではない。そんな場所で怪しい赤い霧が発生すればパニックに陥るのも分かる。霧の中に悪物質が入っているかもしれないし、何か悪い事の前兆なのかもしれない。そんな未知の恐怖に人達は怯えている

だから私が逸早くこの霧が安全だと伝えなければならない。更に騒ぎが広がる前に

私は玄関のドアを再び乱暴に開き外へ飛び出す
人達の様子を見ると何が起きたか分からず呆然としている者ももいれば、不思議そうに霧を眺めている者、大急ぎで家に駆け込み隠れる者など多種多様だった

私は一刻も早く慧音を探すために走り出した


(慧音なら多分広場とかの開けた所にいるはず)


昨日来たばかりで土地勘が全くないがそれでも探さなければならない
それから十分ほど走りやっと慧音を見つけることが出来


「皆さん、絶対に家の中から出ないでください!霧が入ってこない様に窓や扉を全て閉めてください!もしどうしても外に出なきゃいけない場合は布などで鼻と口を塞いでください!」


慧音は台の上に立ち大声で呼びかけていた
彼女の言葉を聞き人達は服の袖で鼻と口を覆いすぐさま家へと駆けだした。それだけ慧音が里の人たちに信用されているという事だろう
慧音は人達が家に帰っていくのを見て安堵の息を吐く


「やっと見つけた!慧音さん!」

「っ!霊夢?何でここに居るの!早く家に帰りなさい!」


此処に居るはずのない私の声に驚いた慧音が私に叫ぶ。その余りにも真剣な顔に息を飲んだがここに来た目的を思い出し口を開いた


「知らせないといけない事があって――――」

「後にしなさい。今は緊急事態だ」

「この霧についてなんです!」

「なに?!」


私の言葉を聞いてやっと慧音は聞く耳を持ってくれた


「この霧は全く無害なんです。だからパニックが広がる前に他の人たちに伝えてほしくて」

「……なるほど、分かった。でもその前に一つ聞いていいか?











何で君がその事を知っている?」


ッ‼‼しまった!完全にその事を忘れていた
私は阿呆か。いくら寝起きでテンパっていたとしてもこのミスはデカすぎる。私が来た次の日に赤い霧が出てきてその事を私が知っていれば私が犯人と疑われる。何か言い訳はないのか?何か慧音を納得できるような言い訳が……


「はぁ……その事は後で聞こう。それでこの霧が無害というのは本当か」

「は、はい」

「分かった。今は君の言葉を信じる。だから今は家に帰っていてくれ」


黙っていた私を見かねた慧音はそう言って人達に霧の事を伝えに行った。私はそれに頷く事しか出来なかった

帰ったら根掘り葉掘り聞かれるんだろうなぁ。

慧音は帰れって言ったが私は今すぐ帰る気はない。別に慧音に夢について話したくなくて現実逃避したい訳では無い。ただ紅魔館に行ってみるだけだ

今回の異変の主犯の拠点に向かおうだなんて狂気の沙汰かと思われるかもしれないが戦闘しに行くわけでは無い。今代の博麗の巫女を見てみたいのだ
幻想郷で人間側の最強は誰かと問われれば真っ先に博麗の巫女の名が挙がるだろう。なんせ幻想郷の調停者だ。弱いはずがない。それに、使う技も陰陽術がベースだろうから参考には丁度いいと思う。勿論、接触はしない。ただそっと木の陰から覗くだけだ。

慧音が心配するから出来るだけ早く帰ろう
そう心に誓って家に向かっていた足取りを紅魔館の方に変える。確か紅魔館は湖の中心の島にあったはず。湖は昨日は知ってる途中でちらっと見た気がするので昨日通った森に行けば見つかるはず


(正直もうあの森には近づきたくないんだけど)


あの森にはこの前私を襲ったルーミアやチルノなどの妖精がうじゃうじゃいる。夢の中ではまるで木っ端のごとく片付得てたが今の私では三妖精と遭遇しただけでもきつい。

今更思えばチルノってかなり強かったのね。頭は残念だったけど。弾幕を避けて反撃出来るだけの知能と博麗の巫女を数分間でも足止め出来たのは普通にすごい。頭は残念だったけど



閑話休題



そんな訳で私は今森の中を歩いている。出来るだけ音を出さず、かつ出来るだけ早く到着するため千鳥足で走るという高等テクを披露している。

それにしても妖怪に遭遇しない。いくら静かに進んでいるとしても見かけることぐらいはあると踏んでいたのに妖怪の陰すら見当たらない。もう既に博麗の巫女がこの辺りを一掃したのかもしれない


(それなら嬉しいのだけれど)


怪我の一つや二つ覚悟して痛みとしては願っても無い事だが、急がなければならなくなった
私は紅魔館の中に入る気はないので残りは美鈴戦しか残っていない。それすら逃したら無駄足になってしまう

もう千鳥足なんて気にせず全力で走る

湖に近づくにつれ霧が濃くなるのが分かる

湖に着く頃には霧が濃すぎて前方が良く見えない。奥にあるはずの紅魔館すら確認できない

どう湖を渡るか悩んでいると辺に向こう側へ渡るための橋があるのに気づいた
誰も使って無い様で管理もされてないのかボロボロだったがどうにか渡る事が出来た

だけどなんかおかしい
入り口に近づいてるはずなのに戦闘音がまるで聞こえない


(もしかしてもう終わったのかしら?)


考えうる最悪の状況を予想しながらそれでも前に進む。ここまで来て何もしないまま帰りたくはない
この静かさはまだ戦闘が始まってないと信じながら門に近づく


そこには





「えっ?」






血まみれの紅美鈴が横たわっていた
 
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