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小悪党の末路

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第四章

 クラスの面々は誰もいない席を見てだ。口々にこう言った。
「退学か」
「強制退学になったらしいな」
「で、裁判でどうなるかわからないけれどな」
「少年院って?」
「やってきたことがあんまり悪質だから」
 保谷は他にもネットにおいて様々な悪事を行っていた。その中には個人情報を暴露したりといったこともあったのだ。彼は調子に乗って捕まらないと思ってそこまでしたのだ。
 これはネットカフェで自分がしたこととわからないようにしたつもりだった。しかしそれもばれたのだ。
 それで彼は捕まりだ。取り調べの結果だった。
「退学になって少年院か」
「見事に破滅したな」
「そうね。何ていうかね」
「自業自得よね」
「あいつは最低だったな」
 クラスの一人が忌々しげに言った。
「もう何もかもな」
「だよな。人間としてな」
「心の奥底からな」
「下種で卑怯でな」
「とにかく最低最悪だったよ」
 そしてその下劣さ故にだというのだ。彼は。
「ああなったんだな」
「本当に自業自得だな」
「全然同情しないわね」
「けれどね。どうしてなのかしらね」
 その結婚していると中傷された安曇がだ。ここでこう言ったのだった。
「あそこまで碌でもない奴になったのかしら」
「あれじゃないかな。何の努力もせずにね」 
 文芸部の堀口、生徒会長との癒着をでっちあげられた彼が安曇のその問いに答えた。
「他人を羨んで妬んでばかりいたから」
「それで性格も改善しなかったからなのね」
「ああなったと思うよ。悪い方に悪い方に流れていったから」
 それで性格も行動も悪くなりだ。その結果だというのだ。
「ああなったと思うよ」
「それでなのね。ああいう奴になったのは」
「そうだと思うよ。実際に凄い妬み深かったよね」
「ええ、確かにね」
 安曇もわかった。あの性格の悪さは。
「しかも努力もしなかったわよね」
「で、悪事ばかりしてね」
 そのマイナスの感情の赴くままにだ。そうした結果だというのだ。
「ああなったんだよ」
「人間そうした感情を持たずに」
 安曇はここで言った。
「努力しないと駄目ってことなのね」
「道徳の教科書みたいだけれどそうだろうね」
 それが正道だろうとだ。堀口は言った。
「ああならない為にはね」
「そうか。そうなんだな」
「そういうことなんだな」
「人間やっぱり。努力して心をちゃんとしないとな」
「ああなるんだな」
 自分達で言うのだった。そうしてだった。
 彼等はその空席を見ていた。もうそこには誰もいない。そしてそのことを誰も悲しまず自業自得と思うだけだった。全ては自分の捲いた種でしかないからこそ。



小悪党の末路   完


                          2012・5・22 
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