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子供ではない

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第三章

「これでわかって頂けますか」
「あっ、それは」
 警官は碧の手にある一枚のカードを見た、それは自動車の普通免許だった。その免許を見てだった。
 警官も納得した、そのうえでさらにだった。
 碧に対してだ、こう言った。
「まさか成人の方だったとは」
「そうです」
「いや、まさかそうとは」
 免許証い書かれている碧の生年月日と彼女の外見を幾度も交互に見ながらそのうえで言うのだった。
「思いませんでして」
「はい、主人ですから」
 碧は智和の左手を自分の右手で持って警官に話した。
「ご安心下さい」
「わかりました、そうですか」
「はい、そうです」
「失礼しました」
 警官は智和に深々と頭を下げて謝罪した。
「実は貴方が幼女を誘拐しようとしていると」
「誘拐!?」
「そうした通報がありまして」
「じゃあ周りのひそひそ話は」
「はい、そうしたお話だったかと」
「いや、俺はそうしたことはしないですから」
 誘拐どころか犯罪になる様はことはとだ、智和は警官に必死の顔と言葉で話した。
「絶対に」
「疑いは晴れましたから」
「当たり前ですよ」
「今回は本当に申し訳ありません」
「だといいですが」
 警官は智和に再び頭を下げてだった、そのうえで二人の前から姿を消した。こうして彼の疑いは晴れたが。
 家に帰って碧にだ、苦々しい顔で言った。
「俺そんなに怪しいか?」
「そうは思わないけれど」
 碧も困惑を隠せない顔で応える。
「別に」
「そうだよな、何でなんだ」
「たまたまじゃないかしら」
「たまたま?」
「そう、誰でも一度は疑われることはあるじゃない」
「まあそれはな」
「だからね」
 碧は苦々しい顔のままの夫にさらに言った。
「別にね」
「気にすることはないか?」
「気にしてもね」
 それこそというのだ。
「仕方ないし」
「だからか」
「もう忘れてね」
「ゲームでもしてか」
「そうしたら?」
「そうだな、全く署までとかな」
 妻の言う通りに忘れることにしたがそれでもと言う智和だった。
「一瞬何だって思ったよ」
「それはね」
「誘拐犯とか何なんだよ」
 疑われたこと自体が非常に不愉快な智和だった、だが妻の言う通り気にしても仕方ないのでそれでだった。
 この時は妻が言う通りゲームをして別れることにしたが。
 またこうしたことがあった、今度は二人で神戸の街中を歩いて食べ歩きをしていた。歩く場所は中華街だ。
 独特の赤と漢字の市街を二人で歩きつつ楽しく食べ歩いていたがここでだ、少し柄の悪そうな少年達が二人の前に出て来た。
 智和は彼等を見てならず者かと思ったが周りに人が多いので助けを呼べる、少なくとも碧は逃がせると思って身構えつつも安心した。だが。
 少年達は智和にだ、咎める顔で言うのだった。 
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