貴族も大変
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第五章
「勿論そうした方々にはお給料をお支払いしてです」
「そうしてですか」
「衣食住もです」
そうしたものもというのだ。
「全てです」
「支給ですか」
「そうしなければです」
イアンは毅然とした声でペーターに言い切った。
「貴族の家ではありません」
「貴族の家ではですか」
「私も含めて使用人はです」
その誰もがというのだ。
「高給、そして衣食住を提供してです」
「いてもらうのですか」
「そうしたものです」
「お金をかけるものですね」
「そうです」
これまたはっきりとした言葉だった。
「それはどのお家でもなので」
「このハイデンバーグ家もですか」
「左様です、そしてこのハイデンバーグ家をです」
「僕が継ぐのですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「そしてそのうえで、です」
「お家の切り盛りもですね」
「してもらいます」
「そうですか」
「はい、そうです」
まさにというのだ。
「それもまた貴族の務めです」
「そしてそういうこともですか」
「学んで頂きます」
イアンの言葉は生真面目な、それだけに有無を言わせぬものだった。そうした話をしてだった。
登校するとその学園は修道院の様に規律正しいが修道院とは違い優雅でしかも使う様に言われる言葉もだ。
修道院のものは真面目な口調を言われたが貴族のそれは優雅なものだった、ペーターはその言葉を使ってみて言った。
「どうもこうした言葉は」
「慣れていませんか」
「そうなのですね」
「はい」
どうにもとだ、教えてくれるクラスメイト達に話した。
「僕、いえ私は修道院にいたので」
「そうです、私と言われて下さい」
クラス委員が彼にそこを注意した。
「一人称も違うのです」
「修道院では立場が下の場合でしたが」
「そこが違いまして」
「いつもなのですね」
「はい、この学園の中ではです」
優雅な口調、そして物腰でクラス委員はペーターに話した。
「常に私で、です」
「物腰もですか」
「ハイデルバーグ卿の物腰は軍隊的で」
修道院で身に着けた動きをそれだというのだ。
「そこをです」
「貴族的にですか」
「変えられて下さい」
「私の動きは軍隊ですか」
「軍人のお家の方も多いですが」
軍人の中にはだ、所謂代々武門の家である。例えばドイツのシュバルツブルグ家は多くの中央政府軍務大臣を出しているその筋の名門だ。
「この学園は文の学園でして」
「武門とはですか」
「違いますので」
だからだというのだ。
「軍隊的な動きではなく」
「貴族的な」
「そうしたものを備えられて下さい」
こう言われてその仕草までレッスンを受けさせられた、下校すれば家庭教師に教えられてだ。
スポーツやピアノも教えられていった、休日は祖父や両親と共に慈善施設への慰労や様々な家への訪問、祖先の陵墓へのお参りそれに使用人達が開くパーティーの費用を出してそしてそれへの出席等とだ。
休日もなくだ、彼は言うのだった。
「忙しいですね」
「はい、これがです」
彼のスケジュールを管理するイアンが休日の仕事を終えて自室で着替えている彼に話した。
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