夢幻水滸伝
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第十八話 瀬戸内の海戦その三
「ここでかなり減らす」
「あんたもやるね」
「戦だからな、敵の弱い部分を攻める」
「そうして勝つものだからだね」
「容赦なく攻める、しかしだ」
「戦としてはどうにもだね」
「あの心意気は見事だ」
兵を見捨てることなく助け出しているそれはというのだ、流石に全軍ではないがかなりの船を割いて海に落ちた者達を助け出してそうしつつ残った船を前に前にと進めさせていっているのだ。
「誰も見捨てないか」
「見事だね、あたしも好きだよ」
そうした姿勢はとだ、玲子は笑って言った。
「あれはね」
「私もだ、戦ではどうかだが」
「人としてはだね」
「見事だ、正岡君と織田君もだ」
学園では年下なので君付けでだ、吉川は二人を呼んだ。
「我が陣営に加わって欲しいな」
「そうだね、仲間になったらいい酒を一緒に飲めるね」
「そこで酒か」
「あたしは政はしないからね」
ここでもこう言うのだった。
「だからだよ」
「そこは変わらないな」
「まあね、正岡の旦那とはあっちの世界でも付き合いがあってね」
「いい者だな」
「あんな気のいい器の大きい奴はそうはいないよ」
「しかも切れ者だというな」
「そっちもいいんだよ」
頭の冴えもとだ、玲子は吉川に正岡のことを話した。
「まあ兵法はあの通りね」
「弱い部分があるか」
「見捨てないからね」
誰一人としてだ。
「わかっててもそうせずにいられないんだよ」
「それでだな」
「けれどそれがよくてね」
その誰も見捨てない心根と細かいところにもこだわらない器の大きさの為にというのである。
「二年の間じゃ人気があるよ」
「当然のことだね」
「そうだな、是非陣営に加わってもらう」
「織田の坊やもだね」
「自ら積極的に術を使って助けている」
兵達をというのだ、吉川は望遠鏡で彼のその姿も確認している。
「見事だ」
「そういう子だね、あの坊やは」
「いい僧侶になる」
まさにというのだ。
「彼もな」
「だから二人共だね」
「欲しい、しかしだ」
「それにはだね」
「降すことだ」
その彼等をというのだ。
「相手に敵わないと思わせてな」
「そうしてだね」
「来てもらう、攻めてきた相手はそれしかない」
その心を降すことだというのだ。
「破りな」
「荒療治だね」
「それもまたやり方だ、見るのだ」
吉川はここで玲子に戦場をより広く観る様に告げた。
「囲む様に展開させていた船達が戻ってきた」
「速いね」
「これが石炭で動く船だ」
その速度だというのだ。
「これを使えばだ」
「この通りだね」
「戦の場にも速く来てだ」
「攻められるんだね」
「四方から囲み撃つのだ」
流れは違っていたが当初の考え通りにというのだ。
「そして敵を倒せ」
「わかりました」
部将達が頷いてだ、各船に指示を出してだった。関西の水軍は四国の軍勢を囲みそうしてだった。
砲撃を行おうとしていた、だが。
その状況を見てだ、正岡は言った。
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