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Exhaustive justice

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三話

人の為、悪を裁く。
正義と云う名の汚名を被る。
全ては世を回すため。
それが間違いだと気づいても、
もう、戻れはしないだろう。



ダメージを受けながらも能力を巧みに使い、痛み分け、及び距離を取ることに成功。
ただ距離を取っただけなら、その行為は無意味となる。
先程も2mあろう距離を一瞬で詰めてきた瞬発力に速度、そしてこの破壊力、異端と呼ぶに相応しいだろう。
だが、零司は動かずに、煙が立ち込める教室全土へ目を配らせる

「回りに地雷を撒いたな?」
帝は受け身の為に自ら吹き飛んだ瞬間、手榴弾の爆発の衝撃を利用し、爆風で小型対人地雷を飛ばし、接近戦しか出来ない零司を近づけさせぬよう、罠を張り巡らせた。

「一回の跳躍でこの大量の地雷を避けれるか?いくら貴様が速かろうと、空中に居るときは加速出来まい…」

帝は零司に見せるよう、侮蔑する様に少笑を溢す。
この行動により、零司の動きに制限を掛け、次の対策を練る余裕が生まれた。

「見たところによると、地雷の種類は対人地雷、踏んだ瞬間にぶっ飛ぶ信管を使ってやがるな…めんどくせぇ」
零司は悪態を吐き出し、先の爆風で破れた制服を脱ぎ捨てて、シャツの中に着ていたタンクトップ姿となった。

いつの間にか廊下には群衆。
先の凄まじい戦闘音を聞き付けた生徒や教員達が集まって来ている。

帝は横目ながらも群衆に軽蔑の視線を送る。
批判も肯定も、「ガヤガヤ」と騒ぎ立てるのが気に入らない。
思考に、心に、ノイズが走る。
この気持ち悪さはなんだ?、と。

騒ぎ立てるな、と喉元まで出掛かるが口には出さない。
中立共にはかける言葉など無い。

『自分は兵器(せいぎ)である』
それは、生まれた時から浴びせられた言葉だ。

『悪を許すな』と、
『君しかいない』と、
それが最適格なのだと。

『俺は悪を裁く絶対的な正義(へいき)である』
…ノイズが増していく。


零司は帝の心情など知らない。
ただこの青年は、彼への否定を吐き出した。
たった一言で、彼の心へと断ち切った。

「帝…お前の正義は間違ってるぞ」



ーー何?
その一言が絞り出せなかったのは、呆気に取られたからだろうか、帝は停止する。

彼は帝へと真っ直ぐ視線を向けて否定する、と吐き出したのだ。

行動が理解出来ない。
言葉が理解できない。


「世の中の悪を取り除いてる事が正義では無いと言うのか?」

帝は鋭い眼光で零司を睨みつけた。
額には血管が浮き出ている。
しかし零司は尚も真っ直ぐと彼に向き合った。

「世の中が悪とする者を倒すこと"だけ"が正義なのか?それにお前のやっていることはもはや悪を取り除くだけでは無い」


ーーそんなことは知っている、
口に出そうにも喉元で止める。

ーー今何を思った、これは正義だ。正義の行為である。

間違えてなどいないと自分に言い聞かせ帝は怒りを抑えこもうとした。

「よもや、貴様のような人間に正義を語られるとはな…」
「考えを改めろ、今なら許してやる」

ーー許す?
ーー許すだと?
ーー認めろというのか、俺が間違えてると。

帝は一度身震いを起こして激昴を放つ。

「考えを改めろだと!?ふざけるな!貴様のような奴に何が分かる!」


帝は血色を変えて零司を怒鳴った。

「何も分からないさ、だがお前はいつもやり過ぎなんだ。行き過ぎた行動はいつかは自分の身を滅ぼすぞ?」

ーー偽善者が何を語るのだ。
零司は帝を改心させたいのだろう、しかしその言葉は帝へと届きはしない。
その言葉は彼を、彼の人生を否定しているからだ。

帝は小さく言葉を吐き出そうとするが、
「おい!零司!ここに居たのか!」
何者かが群衆を掻き分けて零司へと叫びかける。
零司の友人か、この騒ぎでは駆けつけるのも当然だろう。

確か、軍司怜央。だったか
零司とつるんでいる様だが目立つ行為はしていない。
あれは野次馬共と同じ中立だろう。

ーー…

ーーいや。

ーー奴は悪だ。
この男が零司を庇うのなら、それは悪を庇うと言うことだろう。
それでいい、これからも。

帝は怒りを消しかけて怜央という男に視線を向けた。
そして怜央が教室に一歩踏み入れると。
一瞬。邪悪な笑みを浮かべた。

怜央の足元にゴロリと手榴弾が転がる

「何!?」

零司が即座に動きを起こす。
怜央はいきなりの事に対応出来ず、立ち尽くすが零司が咄嗟に手榴弾を拾い上げ、窓へと向かい投げる。
帝は即座にリボルバーを構えて二発、弾丸を放つ。

鈍い音が廊下中に響きわたり、その場に零司は膝を着いた。

零司の左肩と左腿から真っ赤な血が散る。

「くっ…!」
零司は苦痛に顔を歪ませながらも帝を睨みつける。

「…貴様は甘いんだよ、そうやって戦いの途中に友人などに構ってるからこうなるのだ」

偽善者が、と吐き捨てると
零司は溢れんばかりの怒りの感情を込めて帝を睨み付ける。
まるで『殺してやる』と言わんばかりに。

「その怪我ではもう勝ち目は無いだろう、諦めろ」
ーー諦め、堕ちるがいい。
『偽善者にはそれがお似合いだ。』と


「今のも正義の為の行動か?もし爆発したらなんの罪も無い人たちすら巻き込んでたんだぞ?」
零司の呟きに帝は「ふん」と鼻を鳴らして語りかける。

「今のはレプリカだ、安心しろ俺は悪人だろうと殺しはしない。罪と同等の罰を受けさせるだけだ。無論、貴様の友人もその内の一人だ」
帝はわざとらしく笑みを浮かべる。

零司は目を見開き驚愕を見せる。
「何だと!?」

「この戦いが終わったら貴様の友人を"尋問"するつもりだ」
帝はリボルバーを持った手を広げて笑みをよく見せる。

「そんな事、させるかよ…!」
零司は立ち上がろうと地面に手をつけて身体に力を入れるが震えるだけで立ち上がりはしない。
当然だ、先に放った弾丸には毒が塗りこんである。
段々血が巡り身体中に激痛が走るだろう。
血に溶けてそのうち分解される為に致死性も後遺症も無いが、今は動けるわけはない。

しかし、
「全員、離れろ…帝、お前もだ…!!」

ーー離れろだと?
零司は苦悶の表情を見せて自身の頭を抑え込む。
あまりに異常な状況に立ちすくんでしまう。


「これは何事ですか!?」
この騒動にまた一人野次馬を掻き分けて女子生徒が現れた。
腰まで伸びた黒髪に凛々しい顔立ちをしたその女子生徒はこの状況に怯えていた野次馬達を除け、彼らに近寄って行った。

そして、零司を見た途端に驚愕の表情を見せ、大声をあげる。

「全校生徒は直ちに校外へ避難しなさい!今すぐに!!」
それを聞いた生徒達は各々訳はわからずとも一斉に逃走を図る。

「…なんの真似だ…?生徒会長、」
帝は『生徒会長』の女を睨みつけると彼女
は二歩と廊下へ下がって帝に警告をする。

「あなたも早く避難しなさい、死ぬことになるわ」

「何を、」
突然、零司の皮膚が禍々しい黒い色の皮膚へと変貌していった。
「!」
髪が伸び足まで伸びきると、顔を俯かせながら立ち上がった。
…その目に光は無くまるで理性を感じられない。

やがて彼は俯かせた顔を帝へと向けてニヤッと笑う。

その行為だけで帝は背筋が凍るのを感じ一歩後退するーー
と、零司はもうすぐそこまで迫っており、攻撃体制に入っていた。

「なッ!?」
帝の身体に拳がめり込むと同時に、打ち出された打撃の衝撃が教室中に広がり、今更になって地雷が反応を受けて盛大に連鎖爆破を起こした。

堪らぬ衝撃で三階から身を投げ出されるも未だに何が起こったのかはわからない
吹き飛ばされながらも上を見上げると、


狂戦士は髪をはためかせながら第二波を放つ体制を取っていた。

ーー。
思考をする時間もなく、第二波が放たれ、帝は意識を手放した。 
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