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FAIRYTAIL 心を失くした少女

作者:アルト♪
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3話 ハコベ山にて

 
前書き

前回から少し日が空いてしまいましたすいません

他に少しかけ持ちしているのもあるので時間が空いてしまう時が続くかも知れませんが……すいませんm(_ _)m

では、早速本編、やって行きます


……本当ならこの回でハコベ山を終わらせたかった……(泣) 

 


馬車に揺られ、30分ほど……
「うっぷ……まだ、つかねぇ……の、か?」

「まだ……」

「あいー」

「もぉ……ほんとあんたって乗り物ダメなのねぇ……」

馬車に乗り込み数秒で乗り物酔いを起こし、伏せるナツの隣で馬車に乗る前に買っておいたお菓子を食べるシロ……ナツの心配はしていない様子。

同じく、ナツの心配をせず魚をくわえてるハッピー。そして、相変わらずの乗り物酔いっぷりのナツに苦笑を浮かべるルーシィ。

ナツの呻き声が静かに響く中、ふとルーシィはギルドを出る前の事を思い返していた……




ギルドを出る前……ルーシィが、ミラから聞いた話とは……


〜回想〜


「……そうね、いずれ知ることだし……先に知っておいた方がルーシィにもいいかも知れないわね」

「え……?」

ミラは苦笑を浮かべながらルーシィを見やう。


「ルーシィ……シロのこと、貴女はどう感じた……?」

「へ? え、と……」


ミラからの問いかけ……それはシロについての印象だった。

ルーシィはハルジオン港での出会いから今までのことを思い返す。


「どう……て、ちょっと変わった子な感じだな……と……あ、あまり笑わないと言うか……無表情が多く感じました……(というか、出会ってから1度も笑顔見たことがない……? ……え、あたしまさか嫌われてる!?)」

内心、笑顔を見たことがないことに今更気づき、ドキドキするルーシィであったが……ミラはふぅと一つ、溜息をつきそして……口を開く。


「そう……そうね……シロ……あの子は、笑わない……」

「……え」



「いいえ……あの子は……全ての感情が欠落し失くなっているの……そして、記憶も……

あの子には……シロは、このギルドに来るまでの記憶が無いのよ」


「っ!! ミラさん……それって……」


ミラの言葉に目を見開き、ミラを見つめるルーシィ。
ミラは俯きながら、ぽつりぽつりと語り出す。


「昔……5年くらい前かしら……マスターが、雨の降る中、あの子をギルドへ連れてきたの……」





ーーーーー




「マスター! そいつは……?」

「子供……ですか? マスター」


5年前……、雨の降る中一人の女の子を連れ帰ってきたマスターマカロフにその時いたメンバーは興味深そうに近づいた。

一気に囲まれ、マカロフの後ろに少し下がり隠れてしまう女の子……

「おぉおぉ、これこれそんないっぺんに近づくな」

マカロフの静止で少し距離を置き離れたメンバーたち。
そこでようやっとマカロフは女の子を振り返りながらメンバーに紹介を始めた。


「出先でのぉ、雨の降る中暗い洞窟で一人おったのじゃ……聞いてみたところ、家族もおらんようでの」

この時、一人で暗い洞窟にいるのは危険と感じたマカロフの誘いに女の子は応え、ギルドへと来たようであった。


マカロフの紹介を聞き、納得した様子のギルドメンバーたち。


「そうでしたか……初めまして、私はエルザだ、君は?」

ギルドメンバーを代表し、この時はまだ子供で幾分か背の小さかったエルザが声をかけ、挨拶をした。

だが……


女の子はエルザの差し出した手を無表情で見つめるのみ……微動だにせず、ただただエルザの手を見つめていた。


「……? どうした……」

「エルザが怖いんじゃねぇーのかぁ? アッハハッ!」

「なんだとっ!? 」


この頃、現在の様に活発で喧嘩っ早かったミラの挑発する言葉に耐えられず、声を張り上げてしまうエルザ。

そんな2人にギルドメンバーたちはドキドキと距離を置いた時……









「……分からない」


『……!』


突然、ギルドメンバーたちの声ではない声が聞こえた。
それは、今まで一言も声を発しなかった女の子の声だった。

ずっと上の空のような様子であった瞳をふっと動かし、女の子は不安げにマカロフを見つめる。

マカロフもその眼差しに気づき、柔らかく笑みを見せると次にギルドメンバーたちを見やった。



「皆……この子は、記憶喪失のようでのぉ……記憶が無いのじゃ」


「えっ?」

「記憶が無い!?」

「マジか……」

「……本当ですか? マスター……」


「うむ……住んでいたところや親の顔……それどころか、自分の名前すら……覚えておらんようでのぉ……」


そう語ると、マカロフは一息言葉を切り、ふっと表情に影を落とす……。


「どうやら、この子は……笑うことや怒ること……泣くことも、全て……忘れてしまっておるようじゃ」


マカロフの言葉にしぃん……と、静かになるギルド……その時ーーー


ザッ! と、女の子の前に一人の人物が立った。

それは……



「へぇー……お前、記憶ないのな」

「っ?」

「「ナツ!!」」

女の子の前に立ったのは幼いナツであった。

ナツは未だ、無表情の女の子を見つめ……そして、にっと微笑んだ。

「記憶が無いならよ!……ここで新しい記憶、作ればいーじゃん!!」

「……新しい、き……おく?」

ナツの言葉をオウム返しのように呟いた女の子に、満足げに頷くナツ。


「そうだ! お前らギルドに入るんだろ!? ギルドの奴らは皆家族だからな!! 楽しい思い出……ここで作ればいーじゃん!」


その、裏表のない……真っ直ぐな言葉を発したナツにマカロフはもちろん、エルザやギルドの大人たちも笑みを浮かべ、見守っていた。

「……私……いい、の? 家族……私、も?」

首を傾げながら、目の前のナツに問い返す女の子。

そこに……
「たりめーだ! おいナツ!! てめぇだけカッコつけて何先走ってんだよ! 俺だってまだ話してねぇのに抜け駆けすんなクソ炎が!」

パンツ一丁の男の子、グレイがそう文句をたれながら、ナツへとガンを飛ばしながらも女の子に声を掛けた。


「んだとっ!? 遅れるてめぇが悪ぃんだろこのクソ氷!!」

「あぁ!? やるか!?」

「やってやらァ!!」

一触即発……喧嘩が始まるか……と、思われた時……


「やめんかっ!!」

ゴチィーーーンッ!!!

「「ぎゃぁああああああああああああ!!!」」


エルザの鉄拳が二人の頭に落ちた。


「まったく! 喧嘩をしている場合ではないだろう……はぁ、すまなかったな」

エルザは深いため息をつきながら、伏せる二人を超え、再び女の子と向かい合った。


「では……改めて……私はエルザだ、今日からよろしくな」

先ほど同様、自己紹介をし、手を差し伸べたエルザ。
女の子も先ほどと変わらず、手を見つめるだけであった……が


「あーもう! じれってぇな! いーかお前! こーいう時はな!」

見つめるだけの女の子に痺れを切らしたミラが女の子の手を取り、握った。


「黙って、こう! 握手すりゃあいーんだよ、分かったか?」

「……あく、しゅ……これが?」

手を握られているのを見つめながら、ミラに問いかける女の子。

「おう! そーさ! あたしはミラだ! よろしくな!!」

「ちょっと待てミラ、なぜ貴様が先に握手をしているんだ? 差し出していたのは私だぞ」

自身よりも先に手を握ったミラに不満を感じたのか、文句を呟くエルザ。

だが……、ミラはしてやったと言った様子でふんっとエルザを、鼻で笑うと……


「へっ! お前はちんたらしてっから、あたしに越されんだろ? 文句言われる筋合いはねぇな!」

「なんっ、貴様ァ! そこになおれぇ!」

「お!? やるかァ!!」

「今日こそ……!」


「「決着着けてやるー!!!」」


ドンガラガシャーン!! と、派手に喧嘩を始めたミラとエルザ……

周りの大人たちは止めようとするがその激しさに飛び交うものから避けることしか出来ない様子であった……。

そして、次第に二人の喧嘩はギルド全体を巻き込み、誰もが混じり合う、乱闘が開催された。
(この時マカロフは壊れゆくギルドを見つめ、涙を流していたそうだ……哀れマカロフ)

乱闘をしているのにギルドメンバーたちの表情には、笑みが浮かび、どこか楽しそうであった……。

その光景を静かに見つめていた女の子の隣にふっと、影が指しそちらを振り向くとそこには目を輝かせながら女の子を見つめる、ナツがいた。


「へへ! どーだ? 楽しいとこだろ? ギルドってのは!」


女の子はナツを見つめてから乱闘が続く目の前の光景を見つめる……そして


「……楽しい……分からない、でも……ひかってる」

そう、ぽつりぽつりと、ゆっくり呟いた。


女の子の返事にナツは満足したように笑みを深め、頷くと……


「じゃあ、まずはお前の名前な!! 名前が無いのは不便だかんなぁ……」

そういい、うーんと少し考え込むナツ……


「よしっ! お前髪真っ白だろ! だから、お前はシロだ! 綺麗なシロ!! どーだ?」

白くなびく、髪に触れながらそう言ったナツ。

その手をじっと見つめ、女の子……シロはふいに、こくっと小さく頷き


「うん……シロ……私は、シロ……」

満足したようにそう呟いた。


「あぁ! シロ……俺はナツ!! ナツ・ドラグニルだ! よろしくな!!」


ナツも改めて自己紹介をし……すっとシロに手を差し出し、シロは少しの間その手を見つめていたが……

ゆっくりと自身の手を動かし、ナツの手に触れた。

「……よろしく」




ーーーーー




「じゃあ……シロの名前はナツが?」

ミラの語り手を聞き終わったルーシィは、首を傾げながら気になったところを聞き返していた。

「えぇ、安易な感じだけど……記憶も感情も無かったあの子には、覚えやすい名前でもあったのかしらね」

ふふふと微笑むミラは作業を止めていた手をゆっくりと動かし始める。


「ナツがシロに名前を与えたのが影響かは分からないけどね……それ以降、基本シロはナツの隣にいるのよ」

「へぇ……」

「それにね、ルーシィ……あの子は、確かにまだ記憶も感情も……戻ってはいないけど……それでも、少しずつ……感情が芽生え始めていると、私は思うの」


「え……」


微笑むミラ……彼女を見つめ、首を傾げるルーシィにミラはギルドの扉を見やい……


「気になるのなら……行ってみたら? きっと、何かを得られると思うわよ?」

と、呟いた。




〜回想終了〜




「ぅぷ……ま、だ……か?」

「まだ……」

「ナツそれもうずっと言ってるよー?」

「……(何かを得られる……それって)」
目の前で広がる呑気な会話を聞きながら、ルーシィはミラの告げた最後の一言を思い返す。


すると……


ガタンッ!!

と、大きな音を立て、馬車は動きを止めた。

「きゃあ!?」

「う?」

「とまったぁ!!!」

「着いたのかなー?」


「すんませーん、これ以上先へは進めませんわぁ」


目的地に着いたのかと思った矢先、馬車を動かしていた人物から聞かされたのは進めないという言葉……


仕方なく、三人と一匹は馬車を降りて徒歩で目的地を目指す……が


「さーむーいーっ!!! どーなってんのよ!? 山の方とはいえ今は夏でしょ!? こんなに雪が降ってるなんて異常よ異常っ!!」

「そんな薄着してっからだろ」

「あんただって変わらないでしょ!」

もの凄い吹雪の中、薄着で来てしまったルーシィは声を張り上げ、ナツはきょろきょろと辺りを見回しながらルーシィに返す。

「うぅー……それにしても寒すぎる……」

「……ここは、夏でも変わらず雪の降る地……季節の変わらない、一年中冬の山」

ルーシィの後ろを歩きながら、ぽそっと呟くシロ。その言葉にはぁ、とため息をつくルーシィ。

その息は真っ白であった。


寒そうに手をこするルーシィを見つめ、ふとシロは羽織っていたローブを脱ぐと……


パサッーーー

「……え?」

「これ、貸してあげる」

震えるルーシィの肩にローブをかけた。


「え、でも……それじゃあシロの方が」

ローブを脱いだシロの服装はルーシィと変わらないくらいの薄着で、シロの方が寒くなってしまいそうであった……。

が、シロは首を横に振ると

「大丈夫……シロは、寒さを感じないから……問題ない」

と、告げた。


「でも……(感情がないから寒さを感じないってこと……? でも、既にシロの鼻真っ赤だし……手だって……)」

寒さで赤くなり始めているシロの鼻や指先、肩を見つめ、やはりローブを返そうとするルーシィ。


そこに

バサッ!

「う?」

前を歩いていたナツが戻ってき、シロの肩に毛布をかけ、羽織わせた。

「たくっ、んなに赤くなって寒さ感じないなんてあるわけねーだろ、ほらこれ羽織ってろ」

「……ん」


肩にかけられた毛布の裾を握り、顔を埋めるシロ。


「……て、あんた……シロにはほんと優しいのね」

一連の動作を見ていたルーシィは自身との対応の違いに半分諦め、呆れを見せる。

「はぁ? たりめーだろ、シロは大事な奴なんだからよ」

「あー、はいはい……」

何言ってんだルーシィ? と言った様子のナツにため息を深くつきながら文句をやめたルーシィ。

シロがローブを貸してくれたがそれでもまだまだ寒い……

「あ、そーだ!!」

寒さを凌ぐためにある方法を考えついたルーシィ……すると、腰にかけてあった鍵から一つを手に取ると……


「開け、時計座の扉 ホロロギウム!!」

魔法を発動。煙が舞い上がった後に出てきたのは大きな時計とその中に入っているルーシィだった。

「時計だー!!」

「……時計」

「……何やってんだ、お前」

時計の中にいるルーシィを呆れ顔で見るナツ。
ルーシィは時計の中でパクパクと口を動かしているが外には聞こえず……

「いや聞こえねーよ」

「“あたしここにいる”と、申しております」

ルーシィの入っている時計が代弁を始める。

「いや何しに来たんだよ」

ナツのつっこみを聞き、ルーシィはマカオは何をしに来たのだろうと考えてみた。


「“マカオさんはこんな山奥に何しに来たの?”と、申しております」

「知らないの……?」

「知らないでついてきたのかよ? 凶悪バルカンの討伐だ」

ナツの告げたその仕事内容に……ルーシィは一瞬で顔を青ざめる。

「“あたし、もう帰りたい”と、申しております」

「はいどうぞと申しております」

相手に疲れたのか、ナツはルーシィを置いてズカズカと先に行ってしまい、ハッピーもその後をついていったため、ルーシィのところにはシロだけが残っていた。

会話がなくなり、静寂が流れる……。


(……き、気まずい)

「“ねぇ、シロ? 良かったらシロも入らない?”と、申しております」

時計から聞こえた声にそちらを見るシロ。

「……いい、これで充分だから……」
だがシロはそう言うとナツの貸してくれた毛布に顔を埋める。

その姿はまさに小動物……思わず女性のルーシィも可愛いと、見惚れてしまい……


(……はっ! 一瞬気が飛んでた! それにしても、シロ……可愛い)


顔を埋めるシロを見つめ、ほんわかと暖かい空気が流れ始めた時……



ズシィーーーーン!!!

地面が大きく揺れ、ルーシィとシロの目の前に雪煙が舞う。

「な、なにっ!?」

「……これは」

煙が晴れ、シロたちの目の前に立っていたのは……


「うほっ!! 人間の女だ! しかも二人……うほほっ!」

「……バルカン」

凶悪モンスター、マカオの仕事内容のターゲットであったバルカンだった。


「ひぃいいっ!?」

思わず悲鳴をあげるルーシィ……


「お前、喋れんのか……っ!」

言葉を発するバルカンとやる気満々なナツ……だが



「“てか助けなさいよー!!! ”と、申しております」

「にゅぅ……?」


バルカンはナツとハッピーに目もくれず、左にシロを、右にルーシィの入ったホロロギウムを抱え、去ってしまう。


「て、シロを離せやクソ猿ぅうううっ!!」

「“あたしは無視かいっ!? ”と、申しておりますぅぅぅ……」

ルーシィの声を代弁するホロロギウムの声が微かに響きながら、2人を抱えたバルカンは山の奥へと消えていった……。









ーーーーー







バルカンに連れられたシロとルーシィはハコベ山山頂付近の大きな氷で出来た洞穴にいた。


「“な、何よこの状況なんでこんなことになってる訳? てかこの猿テンション高いし!!” と、申されましても……」

「……」

シロとルーシィの周りをくるくると回り、テンションの高い目の前のバルカン……すると

ポンッ! と、いう軽い音と共にホロロギウムが消えてしまう。

「え!? ちょ、ちょっと! なんで消えるのよ!?」

「時間ですので、ごきげんよう」

星霊界へと戻る時間になり、ホロロギウムは消えてしまったようであり、ルーシィは慌てた。

「延長よえんちょー!! ねぇ!!!」

大声を上げるがホロロギウムは戻ってこず……そして


「ウホッ! 人間の女だー!!」

バルカンがルーシィの方へと、飛び込んでくる。



「ひぃいいいいいいいっ!!??」



ズドォオオオオオオンッ!!!!!






「……へ?」

恐怖と驚愕で頭を抱え、目を瞑るルーシィの耳に届いたのは大きな轟音だった……
身体には何も衝撃が来ず、不思議に目をそっと開けると……



「! シロ……?」


真っ白な雪に消えてしまいそうな長い髪を揺らす小さな後ろ姿……その先には恐らく、シロに吹き飛ばされたのであろう、バルカンが転がっていた。



「ルーシィ、怖がってた……相手、シロがする……ルーシィには、近づかせない……」

「シロ……」


相変わらず、感情の見えない表情と言葉使いだが……少しだけ、ルーシィにはシロのその姿に……怒りを感じているように見えた。



吹き飛ばされていたバルカンがゆっくりと身体を起こす……


「……お前、キライだ……お前、倒す!!」

シロに狙いを定め……走り出すバルカン。

だが、突進してくるバルカンをただ見つめ、微動だにしないシロ……

「っ! やめて!! シロ、逃げてっ!!」

思わず声を上げるルーシィ……





「……大丈夫……シロは……分かってる」



だってーーー




「サーーールーーーーーーーっ!!!!」



「……ナツが来るって」

「っ! ナツっ!!!!」

叫び声と共に登場したナツ。

「シロを返せー!!! ついでにルーシィも!! んで、マカオは何処だぁー!!」

「あたしはついでかい!!!」

ルーシィのツッコミを無視し、突進するバルカンから助け出すようにナツがシロを抱え、避ける。

が……



ツルッ!

「「「あ」」」

足を滑らせ……後頭部から地面に転けるナツ。

ゴチィーーーンッ!!



「えぇー……カッコ悪……てか、普通に登場できないのかしら……あ、シロ! 大丈夫!?」

驚くほどカッコのつかない状況で登場したナツに一瞬呆れでため息を深くつく。

だが、シロをナツが抱えていたことを思い出すと慌ててナツが転がっている方を向いた。


ナツは転びながらも、シロが地面とぶつからないように、背中へと乗せていた。

「……大丈夫」

「良かった!」


ナツの上からゆっくりとシロが退くと、ガバッ! と、起き上がるナツ。

立ち上がるナツの後ろにシロと駆け寄ってきたルーシィが隠れる。


「おい! サル!! お前、人間の言葉が分かんだろ? お前、人間の男を知らないか?」


「……男?」

ナツの言葉が通じたようで首を傾げ、オウム返しをしてくるバルカン。

「そーだ! 言え! 何処に隠した!!」

「うわぁ……隠したって決めつけてるし!」

「……お腹空いた(ボソボソ)」←話を聞いてない……


少し首を傾げていると、バルカンはある方向を指さした。

「お! 通じた!!」

ナツは指刺された方へと駆け寄り、目の前に空いていた穴から外を見た。


「何処だ?」

完全に油断していた……その時


ドンッ! と、バルカンがナツを後ろから山の底へと押し落とした。


「っ!? サーーールゥゥゥゥ……」

「ナツっ!!!」

落ちていくナツに声を上げるルーシィ。
だが、すぐに目の前にはバルカンが立ち塞がる……。


「くっ……あんた! ナツに何すんのよ!!」

「オデ、男キライ! 女、好き!!」

鼻息を荒くさせ、そう告げるバルカンの言葉に思わず悪寒が走り、背筋が凍るルーシィ。


「ひぃ……っこんの変態サルが……っ!」

震えるルーシィに、鼻息を更に荒くさせながら近づくバルカン。

そこへ……


「ダメ」

再びバルカンの歩みをルーシィの目の前に立つことにより止めるシロ。

「シロっ……!」

目の前に立つシロをギロッと睨むバルカン。

「オデ、お前も嫌いだ! 倒す!」

バルカンはそう声を荒らげるとシロに再び、突っ込んでくる。

シロは冷静に、バルカンの動きをじっと見つめ、拳が振り下ろされるその瞬間にバルカンの遥か上空へと飛び上がり避ける。


「っ!!」

「……遅い」

地面に着地し、バルカンの方を見つめポツリと呟いたシロの言葉に、バルカンは更に怒りを露わにする。


「お前……許さないッ!! 絶対、殺す!!」

「シロッ!!!」

怒り、シロを倒そうと拳を振るうバルカン。

焦るルーシィの声をよそに、シロは冷静にバルカンの動きを見つめ、右へ左へと避ける。



が……


ふと……シロの動きが止まる。


そして……



ぐぅぅぅぅ……

「……お腹……空いた」


「えぇええええええっ!? (こんな時に何言ってんのよ!?)」

しゃがみ込み、呟きお腹を抑えるシロにルーシィは唖然と呆れを混じらせた声を上げる。

だが、この状況を好機と見たのか、バルカンは……



シロの背後に立つとその大きな両の手でシロの身体をガシッ! と掴み、グググッ……と、力を入れていく……。


「シロ!?」

「捕まえたゾ! これで……殺してやるっ!」


「やめっ!! (助けないとっ! シロを殺させるなんて……絶対、させないんだから!)

お願い! 力を貸して……
開け! 金牛宮の扉!! タウロス!!」

ルーシィの唱えと共に地面に魔法陣が浮かび、そこから大きな身体の牛が現れる。

「モーー!! ルーシィさん! 相変わらずのナイスバディですなー、モー!!」

現れた瞬間からの変態発言で一瞬ルーシィは落胆のため息をつくが……


「今はそれどころじゃないの! お願い、シロを助けてっ!!」


ルーシィの言葉にタウロスは漸くバルカンとバルカンに捕まるシロに気づく。

その様子にタウロスは真剣な表情を浮かべると手に持っていた斧を構える。


「モー……ルーシィさんの頼みならば!!」

「お願いっ!!」

「モォオオオオオッ!!!」


そう声を上げるとタウロスはバルカンを倒すべく、シロを助けるべく攻撃を仕掛けようとする。


「……う?」

タウロスの雄叫びを聞き、そちらへと目を向けるシロ。

そして……シロはその更に後ろへと視線をふっと向ける……。



「……遅い」



「うううおぉおおおおおおお!! サーーールーーー!!!!」


「へっ!?」

「んモッ!?」

「オッ……?」


物凄い叫び声と共に、ナツが落とされた穴から飛び上がってきた。

その姿にルーシィはパァッと笑みを浮かべ、嬉しそうに声を上げる。

「ナツっ!!!!」



火竜と猿と牛が対峙する……



「サル……てめぇ、シロを離せっ!!!」

 
 

 
後書き
如何だったでしょうか

きっと、恐らく……必ず誤字あると思います……!

確認はしているんですが何分見落としが……

誤字発見された際はすぐに報告ください。
早めの修正行います
では、次回……次回で、ハコベ山終わります終わらせます 
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