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歌集「春雪花」

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 濡れし袖の

  いかにと問わば

   空の露

 隠す想いの

   波となりしも



 袖が濡れている…なぜ濡れたのかと問われれば、雨が降ったのだと答えよう…。

 泣いたのだと言えば、その理由を問われてしまうから…。

 彼への恋心は…どこまでも隠し通すしかないのだ…。

 心騒ぎ波となり、やがて津波の如く押し寄せようとも…。


 隠すしかない…叶わぬ片想いなのだから…。



 夜もすがら

  小雨そぼ降り

   雫落つ

 流れ恋しき

   海となりせば



 一晩中、小雨が降ったり止んだり…その都度、屋根から滴り落ちる雫が音を立てている…。

 こんな淋しい雨音を…彼は聞いているだろうか…。
 いや…聞いているはずもないか…。

 雨雫は流れゆくが…私のこの想いも募りゆき…


 あぁ…もう海のようになってしまったよ…。

 そこに私はただ一人…ポツンと佇むしかないのだけれど…。



 
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