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真田十勇士

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巻ノ百 後藤又兵衛その二

 二人はすぐに九度山から堺に向かった、堺に入りすぐにだった。清海は何処か寂しげに堺の町を見つつ言った。
「どうもですな」
「以前よりもじゃな」
「はい、天下を見て回ってこの町も時々見ていますが」
「拙者もじゃがな」
「殿も思われますな」
「来る度にな」
 まさにとだ、幸村も微妙な顔で清海に答えた。
「寂しくなってくるな」
「そうですな」
「どうにも」
「何といいますか」
「この町は次第に中心でなくなってきておる」
「南蛮貿易も下火になってきて」
「利休殿もおられなくなりな」
 そうしたことが重なってというのだ。
「最早な」
「中心ではですな」
「なくなってきておる、商売の中心は堺からな」
「大坂、そして江戸ですな」
「二つの町になってきておる」
 天下の商いの中心はというのだ。
「そうなっておるな」
「はい、まさに」
「だからな」
「堺はですな」
「こうしてな」
「次第にですな」
「寂れてきておるのじゃ」
 そうなってきているというのだ。
「こうしてな」
「左様ですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「それを言うとな」
「仕方ないですな」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「はい、そのことはまずは置いておいて」
「後藤殿にお会いしよう」
 まさにというのだ。
「ここにおられる」
「はい、それでは」
「これから行くぞ」
「そうしましょうぞ」
 清海は堺の寂れていく様子に戸惑いつつもだ、そのうえでだった。
 彼等は堺の中でもひっそりとした場所に来た、そこは広いがそれでも確かにひっそりとした場所にあった。
 その屋敷の前に来てだ、清海は幸村に問うた。
「殿、ここですな」
「うむ、この屋敷がじゃ」
「後藤又兵衛殿がおられますか」
「今な」
「そうですか」
「しかし」
 その屋敷を見つつだ、清海はまた寂しい顔になり言った。
「後藤殿は黒田家において万石取りの方で」
「しかもじゃな」
「はい、家老であられました」
「そうした方であられた」
「官位までお持ちでした」
「しかしな」
 それでもというのだ。 
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