とある3年4組の卑怯者
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12 拝読
前書き
今回は普段目立たない「あの人」が活躍・・・!?
三人が本屋へ行って数日後、リリィが藤木に「走れメロス」の本を差し出した。
「藤木君、この本返却するわね。これ本当興奮して感動したわ」
「え、いやあ、ありがとう」
「今『トム・ジョーンズ物語』も読んでいるけど、読み終わったら持ってくるわね」
「うん、待ってるよ」
(リリィが持ってきたら、早速読んでみようかな)
藤木はリリィが「トム・ジョーンズ物語」を読み終えて学校に持って来る日を楽しみにしていた。
やがて、一週間が過ぎ、リリィが藤木の机の席に来た。
「あの、これ、まだ2巻までしか読んでいないんだけど、これだけでも学級文庫に置いてもらえるかな?」
「ああ、もちろんだよ!」
藤木は喜んで承諾した。
(ふん、藤木君だけ、仕事頑張っているように見せかけて!くだらない、くだらない!!)
永沢は自分が相手にされていないようで不満に感じていた。
なお、この様子を一人の女子、野口笑子が傍観していた。
「クックックッ・・・」
リリィはそして、3巻を2日後に持ってきて、残る4巻もその週の最後に持ってきた。
「リリィ、凄いね、たった2週間程度で読み終わるなんて!」
藤木は驚いた。
「ふふ、面白くて続きが気になってものすごいスピードで読んじゃったの」
「よし、新しい図書が入ったて皆に伝えなきゃ、ね、永沢君?」
「え?ああ、そうだな」
永沢は素っ気なく返事した。
そして、学級文庫係からのお知らせとして藤木と永沢は前に出た。まず永沢が発言した。
「学級文庫係からのお知らせです。新しい本を学級文庫に置きましたので、ぜひご利用をお願いします」
藤木が続けて言う。
「入ってきた図書は、リリィさんが持ってきた『トム・ジョーンズ物語』です。捨て子の少年が辛いことにも耐えて生きていくお話です。借りたい人は、僕か、永沢君に言ってください」
永沢と藤木が帰ろうとするとき、花輪が二人に声をかけた。
「Hey、君達、是非その『トム・ジョーンズ物語』を読んでみたいけど、OKかい?」
「ああ、もちろんさ。一週間後までには返してくれよ、いいよな、藤木君?」
「うん、いいよ」
(僕が先に読みたかったけど、まあいいか)
藤木は少し残念に思い、花輪が読み終わったら読もうと考えた。
そして4日経ち、花輪は「トム・ジョーンズ物語」の第1巻を返却した。
「これ、すごい面白いよ、Baby。続きを借りてもいいかい?」
花輪は藤木に尋ねた。
「うん、いいよ」
花輪は「トム・ジョーンズ物語」の2巻を借りた。
(よし、早速読むぞ!)
藤木は早速本に手を出した。
休み時間、藤木は熱読した。しかし、永沢は藤木に何らかの憎しみを感じていた。
(いい気になるなよ、藤木君・・・)
この永沢の様子を、野口笑子が傍観していた。
「クックックッ・・・」
藤木は休み時間も、そして家に帰ってからも夢中で読んだ。
花輪が2巻を先に読み終わると、藤木はそれに続いて2巻を借りた。
そして、花輪が3巻を読み終わると、藤木はそれに続いて3巻を借りる。
そして、花輪が全巻読破を達成し、4巻を返却した。その日の夜、藤木も家でちょうど3巻を読み終わった。
(よし、あと1冊だ!)
藤木は最後の巻を待ち遠しく思い、明日を待った。
翌日、藤木は教室に入り、3巻を返却した。そして、最後となる4巻に手を伸ばそうと思ったが、楽興宇文庫の中に入っていなかった。
(な・・・、ない?)
藤木は誰かが借りているのではないかと思った。花輪は昨日返却しているのだし、自分以外では、あとから読み始めている人もいるが、途中を飛ばして読むなんて考えられない。藤木は永沢のところに行って聞いてみた。
「永沢君、『トム・ジョーンズ物語』の4巻を誰か借りているのかい?」
「さあ、僕は知らないよ?藤木君がもう借りているんじゃないのかい?」
「僕は借りてないよ。だからこうして聞いているんじゃないか、学級文庫係だろ?」
「君も学級文庫係だろ?それに君こそ読んでいるんじゃないか?君が責任を取るべきだね」
「そんな、永沢君!そんなこと言わなくたっていいじゃないか!」
藤木は熱くなっていた。そんな時、リリィが現れた。
「どうしたの?」
「藤木君が『トム・ジョーンズ物語』の4巻が学級文庫にないって大騒ぎしてるんだ。僕はそんなの知らないし、藤木君が読んでいたから、藤木君が悪いんだよ」
「そんな酷いこと言わなくてもいいでしょ?みんなに聞いてみたらいいじゃない!」
リリィが永沢を叱った。そして藤木に顔を向けた。
「藤木君、きっと見つかるわよ」
「う、うん・・・」
帰りのホームルームの際、藤木と永沢は学級文庫係として前に出た。
「学級文庫係からのお願いです。『トム・ジョーンズ物語』の第4巻が学級文庫になく、誰かが借りた様子もありません。誰が所持している方はいますか?」
藤木は焦りながら言った。対照的に永沢は他人事のような顔をしていた。
(ふん、君学級文庫係としていい気になってばかりいるからこうなるのさ。これで君はあの本を読破することはできないね・・・)
永沢は心の中で藤木の災難を喜んでいた。誰も心当たりはないようだった。
「藤木君、誰も知らないよ、人が持ってきた本を大事に管理できないようじゃ、君は学級文庫係失格だね・・・」
永沢は馬鹿にしたように言った。
「そんな・・・」
藤木は泣きそうになった。せっかくリリィのために共にお金を出してまで買った本をこんなみっともない形で紛失してしまうなど、信じたくなく、リリィに見せる顔がないとまで感じてしまった。と、その時・・・。
「私、知っているよ・・・」
野口笑子が無表情で発言した。
「の、野口?」
「私、花輪クンが返した日の放課後、遠くからその本を引き抜いてこっそりランドセルに入れて、持ち帰った人を見ていたんだ・・・。クックックックッ・・・」
「それはいったい誰なんだい?」
「藤木のすぐ隣にいる人だよ・・・」
野口が少し笑いながら言った。まさか、と藤木は疑った。そして永沢の顔を見た。永沢の顔がこわばっている。
「まさか、永沢君かい?」
「ぼ、僕がそんなことするわけが・・・」
「永沢には本当のこと、言えやしないよ、言えやしないよ・・・」
「永沢君!」
藤木が泣き顔から怒り顔に変わった。その時、丸尾も立ち上がった。
「永沢君、ズバリ、本当の事を言うべきでしょう!」
永沢は次々にクラスメイト皆に睨まれていった。
「う、わ、分かったよ、白状するよ!・・・その本は僕が家に持ち帰った。藤木君がちやほやされていて僕は悔しくて、羨ましかったんだ・・・」
「永沢君・・・」
「後で僕んちへ取りに来いよ・・・」
「わかったよ、皆さんご迷惑をおかけしました・・・」
藤木はそう言って永沢と共に自分達の席に戻った。
その後、藤木は永沢の家へ向かった。永沢は本を差し出した。
「ほら、受け取れよ。ごめんよ、隠したりして・・・」
「永沢君、なんでそんなことをしたんだい?」
「君が羨ましかったからさ・・・」
「え?」
「君ばかりリリィに頼りにされているみたいであの時どうして僕にはお礼を言ってくれなかったのか、悔しかったんだ!」
「永沢君・・・、もういいよ。僕は君を頼りにしているんだから」
「え・・・?」
「だって、僕たちは同じ学級文庫係じゃないか!」
「う、うん、ありがとう、藤木君、これからも頑張っていこう」
こうして二人は和解した。
藤木は最後の4巻を夢中で読んだ。
藤木は完読した。藤木は「トム・ジョーンズ」の4巻を学級文庫に戻した。そしてリリィに会うと礼をした。
「リリィ、この本僕も夢中で読んだよ、ハラハラもしたけど最後は感動したよ」
「ありがとう、藤木君に読んでくれてこの本選んでよかったわ」
「リリィ・・・」
藤木は完読してリリィに喜んでもらえて嬉しく感じた。そして自分も作中の登場人物のようにリリィと結ばれたらなと内心で思っていた。
後書き
次回:「授業妨害」
2組のある生徒による他のクラスへの授業妨害が3年生の間で悩みとなっていた。この迷惑行為は案の定4組にも及んでおり・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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