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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第三十一話

 
前書き
どうも。新作の執筆と相まってヤバイ忙しさでした。 

 

―木曾の部屋―

「てめぇ…………、お人好しも大概にしやがれ。」
 
オレは、壁のそばに座り込んでしまっている摩耶を睨みながらそう言った。
 
事の次第は五分前、急に部屋にやって来た摩耶から、『二号にお前の昔話しをしてやるよっつったら断られた。』という話をしてきた。そんで、オレはそのまま摩耶に右ストレートを食らわした所だ。

「…………あぁ、余計なお世話だとは思ったさ。だけど、あそこまで必死になって頑張ってたあの二人を見てたらな…………つい。」
 
それを聞いたオレは、摩耶に近づいて、摩耶の胸倉を掴んで持ち上げた。そのまま摩耶を睨み付ける。摩耶はついさっきの一件があってか、すでに涙ぐんでいた。
 
「そのつい、情に流されて、可哀想に思ってっつってどれだけ相手のプライドを傷つけてきたと思ってんだよ!ましてや、相手は男の二号とあまり気の強くない春雨だ!どうなるかわかんねぇだろ!」
 
普段のオレは、こんなに怒鳴り散らすということはあまりしない。基本的に軽く睨んだら相手はすぐに反省するから。
 
しかし、この摩耶と天龍は、オレも容赦なければ相手も容赦ない。今回の場合は、摩耶が悪いことしてしまったという自覚があるから、そこまでボロボロにはしてないが。
 
「だぁー、もー!お前は暫くあの二人に近づくの禁止!分かったか!?」
 
オレのあまりの勢いに圧倒されてか、「お、おう。分かったよ…………。」と、元気なく答える摩耶。
 
「ったく…………もう部屋戻っとけ!オレは二人に話付けてくるから!カギは開けとけ!」
 
オレはそう言い捨てると、扉を豪快に閉めて、そのまま歩き出した。
 
…………後で摩耶はちゃんとフォローしとかないとな。
 
しかしある意味、摩耶には感謝しなければいけないかもしれない。
 
おかげであの二人の雷撃の練度は上がったし、奇襲も成功していた。おまけに話を聞く限りだと、なかなか落ち込んでたようだ。
 
ここからなんなのこれ位、となってくれたら、一気に成長できるのだが…………まぁ、春雨にしても二号にしても、まだまだ着任してからそんなに日が経ってないからな…………不安だ。
 
オレはそう考えながら、曲がり角を曲がる。しかし、殆どあてなく歩いている訳だが、二号と春雨はどこに居るんだろうか?
 
聞いた話だと、二号は摩耶に大見得切ったらしいし、春雨はその後を追ってどっか行ったらしいし…………。
 
「――それで、これからどうするんですか?」
 
不意に、そんな声が聞こえた。
 
「?」
 
辺りを見渡すと、図書館の扉が開いていることに気付いた。中を覗きこむと、窓際の席に向かい合って座っている二号と春雨がいた。
 
「(何やってんだ?)」

オレは別にすぐに飛び出しても良かったのだが、こいつらが一体なんの話をしているのかが気になったので、盗み聞きすることにした。
 
「――おう、最早木曾の昔話どうこうじゃなくて、単純に摩耶さんに負けて、おまけに塩まで送られたのが目茶苦茶腹立った。だから――」
 
そう言った二号の顔は、物凄いどす黒かった。かなり怒っているらしい。そりゃそうか。あそこまでボロクソにやられたらなぁ…………。
 
まぁ、そこまで落ち込んで無さそうで良かった。
 
「今度は一、二ヶ月かけて、確実に摩耶さんに勝つ。それで無理なら、何回でも、勝つまでやってやる。」
 
…………わお。
 
どうやら二号の怒りは半端じゃないらしい。普段はあまり感情を表に出さない分、余計に迫力がある。
 
だけど、目の前の春雨が若干涙目になっていることに、二号は気付いているのだろうか。女を泣かせることは、男がしちゃいけないことランキングの堂々一位だ。
 
ま、オレはどちらかと言うと泣かせる方だが。
 
しかし、このままだと暴走しかねねぇな。いつぞやのどこぞの馬鹿みてぇにな。
 
オレのことだけどもさ。
 
「あんまり熱くなるんじゃねぇぞ?」
 
経験者は語るということで、あいつらに警告でもしようと考えたオレは、図書館に入りながらそう言った。
 
「木曾さん!?いつの間に!?」
 
春雨がすごく驚いてた。なんだ、てっきり春雨の事だから気付いてたと思ったのに。
 
「…………さっきからそこで盗み聞きしてたよな?」
 
二号は、表情を変えないままこちらを睨んできた。おぉこわ。
 
「んー、バレてたか。ま、それにしても、けちょんけちょんだったらしいな。」
 
「…………おう。」
 
てっきり怒ってくるなりなんなりしてくると踏んで言ったのだが、思いの外反応が薄かった…………額に青筋浮かしてるけども。
 
「んで、リベンジしたいと?」
 
オレは単刀直入に聞いた。
 
「おう。」「はいっ!」
 
二人は、同時にそう言った。二号だけが五月蝿く言ってんなら止めようかとも思ったが…………春雨も乗り気とは意外だ。つーか、さっきから意外なことばっかだな。
 
まぁ、春雨が乗り気だろうがなんだろうが、
 
「お前らの勝ちだろ。むしろ明日からの摩耶が心配で仕方ないね。」
 
オレは止めるんだけどな。
 
「「…………?」」
 
二号と春雨は、鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。前々から思ってたが、一体どんな顔に言うのが正しいんだろうか。
 
「摩耶ってさ、『新入りと見習いにここまでやられるとは~』とか言ってなかったか?」
 
まぁ、さっき聞いたから確実に分かるんだが。ここは木曾スゲーとか思わせとこう。

「は、はい。」
 
「そうだ。たかが着任三ヶ月と一、二週間の二人だ。しかもダメージ与える方法は雷撃のみ。お前らはすげぇよくやった。」
 
これは、恐らく誰に聞いたとしても同じことを言うだろう。うちの鎮守府でもトップクラスの摩耶相手に、だ。
 
「所で、摩耶はどうせオレの昔話しを話そうとかしたんだろ?」
 
これもさっき直接聞いたが、まぁどうでもいいか。

「…………だったらどうした。」
 
二号は相変わらずこちらを睨んだままだ。青筋は無くなってるが、オレが何を言わんとするのかを考えているようだ。
 
 
 
「すげぇよな。艦娘になってから四年以上の奴が、たかがそんくらいのひよっこといい勝負して、それなのに相手を立てようとしたんだからな。」
 
 
 
二号と春雨の表情がハッキリと変わった。他の艦娘がどれくらい勤務してるかなんて知る方法も無いからな。そりゃあ驚くだろうな。
 
「あの試合は提督も見てたんだけどな。下手したら摩耶の奴、出撃機会減るかもな。」
 
ま、んなわけ無いんだけどな。たかがそんなことで摩耶が遠征組にされてたまるか。
 
そんなことを知るよしもないこの二人は、目茶苦茶慌てふためいている訳で。
 
笑いを堪えるのに必死だ。
 
「「…………。」」
 
黙っちゃったよ。二号は下を向いて考えてるし、春雨に至っては涙目だ。
 
…………まぁ、摩耶にも悪いところがあったから多少なりともへこんでもらってるんだ。コイツらもへこんでもらおう。
 
「ま、別にしようってんならオレは止めねぇけどさ。精々頑張りな。」
 
オレはそう言うと、二人の近くから離れていった。
 
 
オレは後から知ったんだが、二号と春雨は摩耶の所に話を聞きに行ったらしい。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。恐らく明日か明後日には、完全オリジナルの作品を投稿する予定です。そのせいでこの投稿時間。泣きてぇ。
それでは、また次回。 
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