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FAIRYTAIL 心を失くした少女

作者:アルト♪
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第1話 ハルジオンでの出会い

 
前書き
こんにちわこんばんわ、アルト♪です!


第1話、投稿できました!

2話に分けてもいいかと思ったのですが1話で終わらせたかったので詰め込んじゃいました
読みづらい等ありましたらすいません

8/16 誤字報告あり、修正しました

注意しているつもりなんですが……やはり見落としてしまいます
報告してくれた方、ありがとうございます! 

 
784年 ハルジオン港



「あのぉ……お客様? 大丈夫ですか?」

もうすぐ発車時刻となる列車の中で一人の少年が倒れ、呻いており駅員は困惑気味に声をかけていた。

「あいっ! いつもの事ですから!」

「ナツ……着いた、起きて」

「うぷ……ぉ、おぉ……もう二度と列車には乗らねぇ……うぷ!」


倒れる少年 “ナツ” の隣にはちょこんとしゃがみ込む白髪の少女 “シロ” と青い猫 “ハッピー” がいた。


「情報が正しければこの街にサラマンダー……イグニールがいるはずだよ!!」

列車を降り、街の様子を見渡すハッピー


「うん……」

先に降りたハッピーにならい、シロも列車を降りる。

するとーーー



シュポー!!!


背後で汽笛の音が響き……列車はハルジオン港を出てしまう。


「「あっ」」



「たぁーすぅーけぇーてぇーーーー……」



ナツを一人乗せ……



「……発車しちゃった」

「……うん」


十数分後ーーー


「うぷ……あぁ……まだ揺れてるぅ……」

「重症だね、ナツ」

「うん……」



ナツを回収し終え、目的の為街の散策を始めた二人と一匹。


「もうぜってぇ列車になんか乗らねぇぞぉ……」

「それいつも言ってる」

「もーしっかりしてよ、ナツぅ……イグニールを探すのにそんなんじゃ見つからないよ?」

「あぁ……今度こそ! ぜってぇこの街に火竜(サラマンダー)……イグニールがいるはずだ!」

ハッピーの言葉で元気を取り戻すナツは目を輝かせ、拳を握り声を上げる。


「あいっ! 火竜といったら、イグニールしかありえないよね!」

「……そう?」


自信満々なナツとハッピーの隣で首を傾げるシロ。だが、何も言うことはなくただナツの横を歩いていく。



しばらくすると、少し離れたところから多くの女性の歓声が聞こえ始める。

「きゃー! 火竜様よぉ!!」

「こっち向いてー! 火竜様ぁ!」


「ほらっ! 噂をしたらなんとやらだ!!」

「あいっ!!」


聞こえてくるその声にナツとハッピーは駆け出し、集団の中へと割り込み、入っていく。

その後ろで一人、ぽつんとおいてけぼりを食らったシロは……


「……多分、違うと思う……けど」

無表情でそう呟き、姿の見えなくなったナツとハッピーが戻ってくるのを待つことにし、その場に座り込む。

「……ん」


ふと、視線を逸らした先に映った一人の少女……

シロはじーっとその少女を見つめると、何気なく、立ち上がり……足を進めた。



数分前ーーー


(な……なに!? この胸のドキドキは!

あたし……どうしちゃったのかしらっ!?)


女性たちの集団の中に一人、旅の魔導士である少女 “ルーシィ” がいた。
彼女も噂に名高い “火竜” がいると話を聞き、一目見ようと来たのだが……

有名な魔導士を前に何故か胸のときめきが急激に強くなり、頬を赤らめ目の前の彼から目が離せない彼女。


そこへーーー



「イグニール!! イグニール!!」

桜髪の少年、ナツが突然女性達の群れの中から飛び出してきた。
その瞬間、ルーシィははっと我に返る……


「……あ、れ? (あたし……何、を)」

何をしていたのか、思い出そうと思考を巡らせ始めた時……



スパコーーーンッ!!!


「ッッッッ!? いったぁああああっ!!

何よっ!? 誰!?」


突如、後頭部に大きな衝撃をくらい頭を抑えながら振り返るルーシィ。するとそこには……

「あ……元に戻ってた、ごめん……
催眠にかかってるみたいだったから……」

ルーシィの背後には右手に大きなハリセンを持ったシロが立っていた。

シロの言葉に困惑を露わにするルーシィ。

「え、あぁ……うん、ありがとう(て、だからっていきなり叩く? しかもハリセンで……)」

苦笑を浮かべながら、そう言うとシロは「そう……」とだけ、返し集団の方へ目を向ける。


「おかえり、ナツ……どうだった?」

集団の中から戻ってきたナツとハッピーに声を掛ける。

ナツは手を横に振り、「いあ……」と返す。
「ダメだった、ニセモンだったわ」

「そう……」

ナツの言葉を聞き、その場を去ろうとした瞬間……その言葉を聞いた女性達が一斉にナツに襲いかかる。


「ちょっと!! 火竜様はすごい魔導士なのよ!!」

「しつれいじゃない!! 謝りなさいよ!!」

「うげっぶっ!? んだてめぇらっ!?」

叩かれ蹴られのナツ、終いにはぽーいっと遠くへと投げられ、地面に転がっていく。


「まぁまぁ君たち……彼らも、悪気はなかったんだろう」

火竜と名乗る男がそう一声かけただけで女性達はすぐさま男に群がる。

「あーん、優しぃー♡」

女性達に囲まれる男を静かに見つめるシロ。そんな彼女に気づき、男はパチンッとウィンクを送る。

だが……


「……ナツ、そろそろ行こ?」

シロは男に目もくれず、ナツの袖を引っ張り立ち去ろうとする。

「ちょちょちょ! 待ちたまえ君達……そうだ、君たちには特別にこの私のサインをプレゼントしよう、友達に自慢したまえ」


「キャーいいなー♡」

「羨ましいー♡」

「あたしもほしーなー♡」

無視された男は慌ててナツたちを呼び止め、即興で書いたサインを手渡す。
それを見ていた女性達は再び黄色い声を上げる。

が……


「いらん」

ぱしっとサインを叩き落とし、いらないと断言したナツの言葉に女性達は再び怒りを露わにし、ナツをボコボコに殴り倒す。

殴り倒されるナツを置いて、ハッピーを抱き離れるシロ。

「ぐほっうぎゃっ何、だよっ!? つか、助けろよ!! シロ!」

「……頑張れ」

「薄情者ぉおおっ!!」

女性達の怒りを喰らい続けたナツは結局元凶の男が発した船上でのパーティへの招待の一声で治まり、ナツは解放された。


「いってぇ……」

「あいやー……凄かったね」

「……うん」

「つーかシロ! おま、なんで助けてくれなかったんだよ!?」

「ナツなら大丈夫だと思ったから」

ナツからあがる抗議の声にも首を少し傾げ、当たり前のようにそう返したシロ。

その表情に感情の色は見えず……、ナツはパチパチと瞬き次いではぁと、ため息をひとつつく。

「まぁいいけどよぉ……にしても一体なんだったんだ、ありゃぁ……」





「ほんと、いけ好かないわよね」


一人ブツブツと愚痴を零していたナツの言葉にシロとハッピーとは別の声、ルーシィの声が返した。


「んあ?」

「……さっきの」

ルーシィの方を向き、先ほどハリセンで叩いた相手であることに気づいたシロに苦笑を浮かべながら、ルーシィはナツとハッピーを見やい、言った。


「あたしはルーシィ、さっきはありがとね」

ルーシィの言葉に首を傾げる一人と一匹。


「……お腹空いた」


ーーーーー


シロたちはお礼をしたいというルーシィの申し立てでハルジオン港にあるレストランで料理をご馳走になっていた。

が……



ガツガツガツガツッ!!!!



ムシャムシャムシャムシャッ……


「あんふぁいいひほがぶぁ」

「……うん」


「あ……ははは、ナツとハッピーにシロ……だっけ? もう少しゆっくり食べなって……なんか飛んでるし」


ルーシィの目の前で遠慮なしにどんどん胃袋の中へと消えていく目の前の料理とぽいぽいと飛んでくる食べカスに苦笑を浮かべるルーシィ。


「はぁ……あ、それでね……さっきのあの火竜(サラマンダー)って男、魅了(チャーム)っていう、人々の心を引き付ける魔法を使っていたの

何年か前に発売が禁止されてるんだけど……やらしい奴よね」


食べ進めるシロたちに先程会った男の使った魔法の説明を続けるルーシィ。
その様子にシロは食事の手を止め、ルーシィを見つめる。

「……魔法、詳しい」


「ふふん、こー見えてもあたし一応魔導士なんだぁ! まだギルドには入ってないんだけどね」

「ほぼぉ」

シロの言葉に勢いついたルーシィは更に話を広げる。

「あっギルドってのはね、魔導士たちの集まる組合で、魔導士たちに仕事や情報を仲介してくれる所なの!
魔導士ってギルドで働かないと一人前って言えないものなのよ」

「ふが……」

「……そうなの?」

「みたいだよ?」

「ふぅん……」


「でもねでもね!! ギルドってのは世界中にいっぱいあってやっぱ人気あるギルドはそれなりに入るのは厳しいらしいのね……
でね! あたしの入りたいトコはね! もう、すっごい魔導士がたくさん集まる所で、ああ……、どーしよ!! 入りたいけど厳しいんだろーなぁ……」

「いあ、そんなこともねぇぞ?」

「あぁ、ごめんねぇ魔導士の話をしてもわかんないわよね!」

ほぼノンストップで言葉を続けたルーシィにナツとハッピーはそのいきおいに圧倒され、少し呆れた様子でルーシィを見つめる。

「ほが……」

「よく喋るね」

「あむ……おかわり」

「て、シロはまだ食べるのね……」


食事を始めて数十分、未だに注文と食事の手を止めないシロに唖然とするルーシィ。

「はぁ……あ、そういえばあんたたちは何しにここに来たの?」

「あい、イグニールを探しに来たんだ」

「今回は確実だと思ったんだけどなぁ……

けど、あの男はイグニールじゃなかったな」

ナツの言葉にこくりと頷くハッピー。


「あい、火竜って姿じゃなかったもんね」


ナツとハッピーの会話にぱちくりと目を見開くルーシィ。

「見た目が火の竜って……人間としてどうなのよ、それ……」

引き気味にナツとハッピーの会話で疑問に感じた部分のコメントを何気なく、ルーシィは呟いた。
すると今度はナツが目をぱちくりと瞬かせ……


「ん? 何言ってんだ? イグニールは本物のドラゴンだぞ?」

と、言い放った。



「ほん、ものの……ドラ、ゴンって……て!

そんなのが街中にいるわけないでしょ!?」

ナツの言葉に仰天したルーシィはすかさずナイスなツッコミを入れる。

「「はっーーー!!!」」


「オイィ! 今気づいたって顔すんなぁ!」

ナツとハッピーの反応にはぁとため息をつくルーシィ。その隣ではやっと満足したのか、食事の手をようやく止めたシロ。

「あはは……じゃあ、あたしそろそろ行くけど……ゆっくり食べなよね」

ルーシィは席を立ち、シロたちにそう告げるとレストランを出るために歩き出す。

が、その言葉にナツとハッピーは過剰な反応を見せーーー


「ご馳走様でしたッ!!!!」

「でしたッ!!!!」


涙を流しながら、盛大な土下座をした。


「きゃぁあ!? やめて恥ずかしいから!!」


「……でしたー」


土下座を止めないナツとハッピーを必死に止めるルーシィの前にナツたちを真似て自身も土下座を始めたシロ。

ルーシィのツッコミは途切れることを知らず……



「シロも真似しなくていいわよぉおおおっ!!」





ーーーーー




ルーシィにご馳走になってから数時間後、ハルジオンの街で時間を潰していたシロたちは港を一望できる公園のテラスにいた。



「ふあー……食った食った!」

「あい! いっぱい食べたねー」

「……まだ足りない」

「シロは食べ過ぎだよ……」


満足気なナツとハッピーの横で物足りなさそうに呟くシロに苦笑を浮かべるハッピー。

ふと、海を見つめていると唯一明かりのついている一隻の船に目がいく。
その船を見つめ、昼間にあった会話を思い出すナツ。

「あー……そーいや、あの船で偽物のイグニールがパーティやってるんだったなぁ……ぅぷ、気持ち悪ぃ……!」

「想像しただけで気持ち悪くなる癖治そうよ……」

「……吐く?」

しゃがみこむナツの背を同じくしゃがみこみ、撫でるシロ。

その背後で……


「あ! あれでしょあれ!! あの船で今日あの有名な妖精の尻尾の火竜様がパーティやってるんでしょ!」

「「っ!」」
「……」

「あーん♡ いいなぁ、行きたかったなぁ」


シロたちの背後で女性たちのしていた会話にピクッと反応を見せるナツとハッピー。
シロも黙って船を見つめ……


「妖精の尻尾……?」

「……火竜」


ギッ……と船を見つめ、睨むナツ。だが……


「うぷやっぱ無理……っ」

途端に口元を抑え、吐気を堪えるナツ。

「はぁ……」

「……吐く?」




ーーーーー



「ちょっと!! 何するのよ!」

ここは、偽の火竜が開催するパーティ場の船の中……その中で大勢の男に囲まれ、身動きの取れなくなっているルーシィの姿があった。

この現状までの経緯を簡単に語ると……

ルーシィはシロ達と別れた後、公園で魔導士雑誌である “週刊ソーサラー” で憧れる妖精の尻尾について読んでいた。

すると、突然偽の火竜が背後から現れ、妖精の尻尾に入れてあげる代わりに船上パーティに来てくれと言われ……パーティに参加したのだが……


なんとその船はフィオーレ王国の隣国、ボスコへ行く奴隷船だったのだ。

そして、偽の火竜に騙されたルーシィは火竜の手下に捕まってしまっていたのだ。

「っ……ちょっと! 離しなさいよ!」

「ふん、威勢のいい小娘だ……なんだ、お前星霊魔導士だったのか?

しかし、これはいらないな……契約を結んだ(オーナー)しか使えないんだ、つまり僕には必要ないってことさ」

偽の火竜はそう言い、ルーシィの腰にあった鍵を奪い取ると窓からぽいっと海へ捨ててしまう。

「あっ……(これが……こんなことをする奴が……妖精の尻尾の魔導士か!?)」

ルーシィは悔しさと怒りで涙を流す。


「っ最低の魔導士じゃない……!」



ルーシィが悔し涙を流した瞬間……


バキッーーー!!!!

船の天井を突き破り、何かが降ってきた。

「な、なにっ!?」

ルーシィは驚愕で目を見開き、落ちてきたものを見つめると……そこには桜髪のナツがいた。その姿に自然と、ルーシィは笑みを浮かべる。

「んっ!? 貴様は……昼間のガキっ!!?」

「ナツっ!!」



「……おぷ! やっぱダメだ気持ちわりぃ」

が、船に降り立った数秒後、乗り物酔いを起こし、倒れてしまう。


「えー!? かっこわる!!」


「あれー? ルーシィ? 何してるの?」

「ルーシィ……」

「えっ」


ナツの降ってきた方から聞き覚えのある声がし、見上げるとそこには白い羽を生やしたハッピーとローブを羽のように広げ、飛んでいるシロの姿があった。

「ハッピー! シロ!! 騙されたのよ、こいつに……あたしを妖精の尻尾に入れるって言われて……それで」

思い出し、再び悔しい気持ちが湧いてきたのか、拳を握るルーシィ。
そんなルーシィを見つめ、スッとルーシィの隣に降り立つシロ。

「……ルーシィ、これ」

「え……あ、これ……!」


シロがルーシィに差し出したのは先程、偽の火竜に投げ捨てられた星霊の鍵だった。
ルーシィはぱぁっと笑みを浮かべ、鍵を受け取る。

「飛んできたから……拾った、これ……ルーシィの」

「そうよ! ありがとね、シロ!!」

「……うん、ハッピー」

ルーシィからのお礼に頷き答えるとシロはハッピーに視線を送る。

「あい! じゃあ、ルーシィちょっと我慢してねー!」

「え? え……きゃぁ!?」

ハッピーはそう言うとルーシィの体に尻尾を巻き付け、再び飛び立った。
そして、シロも飛び立とうとし……一度止まり、ナツを振り返る。


「……ナツ」

「大、丈夫っだ……シロも行けよ、うぷっ」

「……うん、分かった」

ナツの言葉に頷くと今度こそ本当に飛び立ち、船を去る。


「ちょ、ちょっとハッピー!? ナツは!? それに女の子たちも……!」

ルーシィだけを抱え、脱出したハッピーに声を上げるが……


「二人は無理!!」
と、ハッピーの声がし、ルーシィも諦める。
そしてふと、目の前に広がるただっ広い海を見つめ……


「そうだ! ねぇハッピー! 海に近づくことできる?」

「え? 出来るけど……どうして?」


「いいから早く!!」

疑問を投げかけるハッピーを急かし、海面へと近づくように指示を出し、海面に手が触れられる位置まで降下すると……一つの鍵を手にする。



「いくわよ……

開け!! 宝瓶宮の扉! アクエリアス!!」


その唱え声と共に、眩い光が海面から発しられ、次の瞬間人魚の姿をした美しい女が姿を現した。


「魚ー!!」

「あたしは星霊魔導士よ! 契約した星霊を呼び出せるの、さぁアクエリアス!! あの船を何とかしたいの……お願い!」


「……チッ」

「ちょ……今あんた、舌打ちしたかしら!?」

「今そんなこと気にしてる場合じゃないよね!?」

「ルーシィ……ハッピー」


コントのような会話をしていたルーシィにツッコミを入れるハッピー。
そして、ルーシィたちに近づくシロ。
シロはアクエリアスに気づき……


「……宝瓶宮の鍵……黄道十二門……」

「黄道十二門って?」

「黄道十二門って言うのはね、この世に12個しかない星霊の鍵で、超レアで強力な星霊を呼ぶことが出来るのよ!」

ハッピーの疑問に再び自信満々に答えるルーシィ。で、あったが……


「うるさい小娘だ……いいか、次鍵を無くしたら……殺す」

「「ご、ごめんなさい……」」

アクエリアスからの殺気にガクブルと震えるルーシィとハッピー。
ルーシィの姿にどこか満足したのか、アクエリアスは魔力を高めると……脇に抱えていた壺を海に振り下ろす。すると、壺から大量の水が溢れ、海の水を混ざると大きな波を作り出す。

「あたしまで一緒に流さないでよー!!」

「あいやー!!!」

それはルーシィとハッピーを巻き込み船を港へと押しやる。
唯一、大波を避けることのできたシロは船が港に衝突するさまを見つめ……

「……危ない」
と、呟いた。




港まで流されたルーシィは膝をつきながら、目の前のアクエリアスに文句を告げる。
ちなみにハッピーは目を回してしまっている。

「ちょっと……あたしまで一緒に流す!?」

「しまった……ついでに船まで流してしまった」

「あたしを狙ったんかい!!」


「ふん……二週間は呼ぶな、彼氏と旅行に行く…… “彼氏” と、な」

「二回言うな!!!」

アクエリアスはふっと笑みを浮かべると星霊界へと帰っていく。
そして入れ違いにシロがルーシィたちの元に辿り着く。

「……何してるの?」

「あ、シロ! あんたは巻き込まれなかったのね……あ、そういえばナツは……!」

シロが無事なことにひと安心すると船に乗っていたナツのことを思い出し……ルーシィは船へと走り出す。


そして、船に辿り着き、ルーシィが見た光景は……

「ナツー! っ……」

怒りを露わにしたナツの表情……その先には偽の火竜やその手下共がいた。


「お前が……妖精の尻尾の魔導士……?」

「あぁ? それがどーした」

俯き加減で偽の火竜にはナツの表情が見えていなかったが……顔を上げ、羽織っていた上着を脱ぎ捨てると……



「俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツだ!! お前なんか見たことねぇっ!!」


「なにぃ!?」

「ナツが……妖精の尻尾の魔導士!?」

「あい! ちなみにシロとオイラもだよー」

「そーなの!?」

隣にたどり着いたハッピーの言葉に驚きを隠せないルーシィ。



「あ、ぁああの紋章! ほんもんだぜ、ボラさん!!」

「ばかぁ! その名で呼ぶなぁ!!」

「ボラ?」

「ボラ……紅天のボラ……何年か前に、タイタンノーズっていう魔導士ギルドを追放された奴だね」

首を傾げるルーシィに説明するハッピー。


「くそってめぇらのせいで全て台無しだ!!! ちっ、これでもくらえぇ!!!」


ボラは自暴自棄となり、ナツへ向け火の魔法を放つ。

「っ! ナツっ!!!!」
ナツはその炎を避けることもなく受け……、ルーシィは心配になり駆け寄ろうとする。

だが……それをハッピーが止めてしまう。

「ちょ、ハッピー!? なんで……」

「大丈夫! 見てて……」

「え?」


「……ナツは、あの程度の男……負けない」




ぽそりと呟いたシロの言葉が静かに流れた時……炎をナツが食べてしまう。


「え?えぇえええええっ!? 炎を……食べちゃった? 」

「あい!」

「火……まさか、ナツが本物の……」



「……火竜(サラマンダー)


「へっ……食ったら力が湧いてきたァ!

いっくぞぉー!!」

炎を食べ終えたナツは手に炎を纏い、ボラに突っ込む。
その姿を見て、不意にシロはサッとルーシィの前に立つ。


「え……シロ?」

「動かないで……危ない」

シロの言葉に首を傾げたルーシィだったが、次の瞬間……



辺りが炎やら瓦礫の破片やらで荒れ狂う。

「きゃあぁ!? 何これ!? 」

荒れ狂う中よく見てみるとナツが拳に炎を纏い、殴ったり口から火を吐いたりと暴れていた。


「な、なんなのよこれ……火を食べたり火で殴ったりって……」

「それがナツの魔法…… “滅竜魔法”
竜迎撃用の魔法だよ! イグニールがナツに教えたんだ……」

「へ、へぇ……」

「でも、シロの後ろにいれば安全だよ!」

「え?」

ハッピーの言葉に首を傾げるルーシィはシロの方へ視線を向ける。

すると、シロの目の前に迫ってきた炎がシロの目の前で溶けるように消える光景が目に入った。


「……魔法が、消えた?」

「これが魔法解除(マジックキャンセル)シロの魔法の一つだよ」

その間も飛んでくる炎を消していくシロ。


そして……



やっとナツの気が治まり、落ち着きを取り戻した頃には……


「これが……妖精の尻尾の魔導士……すごい!! すごいけど……やりすぎよぉ!?」



港は壊滅状態になっていた。

「あい!」

「軍が来る……」

「やっべ逃げんぞっ!!!」

シロの呟きを聞き、瞬時にナツはシロとルーシィの手を取り、逃走を図る。


「なんであたしまでぇ!?」

「だって、俺達のギルド入りてぇんだろ?」

「あ……」


そう言い、振り返ったナツは眩い笑顔をルーシィに見せた。

その笑顔を見て、ルーシィもぱぁっと嬉しそうに笑みを浮かべる。


「うん!!!」



笑顔で軍から逃げるナツとハッピー、ルーシィの後ろをついて走るシロ……

シロはふと星が輝く空を見上げ……


「……お腹空いた」

ぽつりと呟いた。



始まりの音が響く……







“……忘れないで……忘れて……



思い出して……思い出したくない……














大嫌い…………愛してる……”


 
 

 
後書き
如何だったでしょうか?

それにしても第1話、無事投稿出来ました……良かった!


次はいつになるか分からないのですがなるべく早めに投稿をしたいと思います

では、次のお話でまたよろしくお願いします

誤字等ありましたら報告、お願いします 
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