真田十勇士
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巻ノ九十九 さらば都その四
「十二分に働き」
「そして死なぬな」
「その時は」
「それがし達必ずや」
幸村もここで言った、家臣の晴れの場に立会いつつ。
「死ぬ時と場所は同じ」
「さすれば」
「その様に」
「お頼み申す、どうも天下は」
ここでだ、また言った果心居士だった。
「長い目で見て泰平に向かっていますが」
「それでも」
「はい、途中何かあります」
「その何かの時が」
「まさにかと」
その時だというのだ。
「そう見ています」
「では」
「その時に働いて下され」
こう言ってだ、そしてだった。
幸村と筧は果心居士と別れた、そしてそのうえで九度山に戻ろうとしたがふとだった、ここで一人の身なりは侘しいが見事な趣の男と擦れ違った。
その男と擦れ違ってだ、幸村は言った。
「長宗我部殿ですな」
「左様」
盛親は幸村に一言で答えた。
「真田殿ですな」
「はい」
幸村も一言で答えた。
「左様です」
「何度かお会いしていますな」
「関ヶ原の前は」
「またお会い出来て何よりです」
「拙者もです」
「してこれからどうされる」
双方擦れ違ったその瞬間で止まっている、盛親は幸村にそのうえで問うた。
「貴殿等は」
「貴殿と同じかと」
これが幸村の返事だった。
「それは」
「そうか、では」
「はい、時が来れば」
「その時にまたお会いしようぞ」
「ですな、しかし長宗我部殿は」
「わしは貴殿とそこは同じであってもな」
「それでもですな」
「望みも果さんとしていることも違う」
そうだというのだ。
「やはりな」
「その様ですな」
「しかしな、それでもな」
「そこは同じですな」
「うむ、ではまたな」
「お会いしましょうぞ」
こう話してだ、そしてだった。
双方まずは別れた、そのうえで幸村は筧と共に九度山に戻った。そこで再び修行の日々に戻ったが彼ははっきりと感じていた。
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