レーヴァティン
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第十五話 沼の屍竜その十
「今から」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「ここから先もだよな」
久志はやや苦笑いになって言った。
「長いな」
「ああ、それはな」
智も頷く。
「やっぱりな」
「行きも長かったしな」
「帰りもな」
そこもというのだ。
「長いな」
「そうだよな、けれどな」
「ああ、帰ってな」
そしてというのだ。
「領主さんのところ行こうな」
「そうするか」
「帰り道もです」
その道については順一が話した。
「モンスターが出て」
「そしてだよな」
「戦いもありますので」
だからだというのだ。
「気を引き締めていきましょう」
「絶対にだよな」
「そうです、むしろ帰り道こそです」
目的を果たしたこの道こそというのだ。
「気を引き締めていきべきです」
「勝って兜のか」
「そうです」
その通りだというのだった、順一も。
「関ヶ原の時の徳川家康の言葉でしたね」
「ああ、そうだったな」
「あの時も実際にそうでしたし」
「勝ってもな」
「そうです、もう一戦ありました」
石田三成に会ってもだ。
「島津家が撤退に移りました」
「敵の真っ只中にな」
戦史にホ回礼のない敵中突破の撤退だ、これを選択した島津義弘は鬼であると言うであろうか。
「そうしたよな」
「そうした戦でしたし」
「俺達もか」
「ドラゴンは倒しましたが」
「森を出るまではか」
「はい、気をつけてです」
そうしてというのだ。
「行きましょう」
「そうだな、じゃあな」
「はい、帰りましょう」
こう言ってそしてだった。
三人は来た道を引き返した、それは実際に血路となった。
第十五話 完
2017・4・25
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