ソードアート・オンライン~白と青の軌跡~
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黒と白
前書き
今回は少しだけ暗いです
では、本編へ!
電話を切ってからすぐに電車に乗り、ダイシーカフェに向かう前にある場所に向かっていた。
ライくん……蒼くんの家族には私が帰還した時、既に彼がどうなったのかは知らされていた。
私が起きた時には、お母さんとお父さん、兄さんに祐歌さんと遥ちゃんがいた。
「………お母……さん……?」
「明日奈…!」
「戻ってきてくれて…良かった……」
お父さんとお母さんは泣きながら私に笑顔を向ける。
兄さんはホッとしていて、その横には泣きそうな祐歌さんと遥ちゃん。
「祐歌…さん…遥…ちゃん…ごめんなさ………」
私は2人に謝ろうとした。
2人の兄であり、弟である彼の命を犠牲にして戻ってきた。
だが、言葉は続かなかった。
何故なら祐歌さんが私を抱き締めたから──
「明日奈は悪くない、貴方は頑張ってくれた……」
「お姉ちゃんが…お兄ちゃんを沢山守ろうとしてくれてたの私達知ってるよ…?」
辛いはずの遥ちゃんは涙を浮かべながら私に微笑んだ。
「ごめん…なさい…!」
蒼くんの家族はこんな私に今まで通りに接してくれている。
その事が罪悪感を感じる。
だから、私はダイシーカフェに行く前にここに来た。
「………祐歌さん。」
「……あら、明日奈じゃない。」
蒼くんが大好きだった場所。
朝は綺麗な朝日が見れて、夕方には夕焼けが、夜には都内でも珍しいほどに星空が綺麗に見れる数少ない場所。
祐歌さんが良くここに来る事を知っていた私は、ここに居るかもしれないと思って来た。
「どうしたの、こんな所に。」
微笑みながら答える変わらない祐歌さん。
「………お願いがあるんです。」
大学生でありながら、私のお父さんが働いてる会社の手伝いをしてくれてる。
「お願い?」
祐歌さんは、きょとんとして首を傾げた。
キリトくんの話が本当なら、ログアウトしたSAOプレイヤーが現れたゲーム『アルヴヘイム・オンライン』通称『ALO』はお父さんの会社がサーバー。
もし、祐歌さんがこっち側に来てくれれば……
「………私達を助けて、祐ちゃん……」
昔は彼女の事を"祐歌さん"ではなく、祐ちゃんと呼んでいたため目の前にいる祐歌さんはピクッと動いた。
「……その話し方って事は京子さん達には内密って事ね。」
私は全てを話した。
祐ちゃんが自分の弟をそんな風にする人とは思えない、だから私達の味方になってくれるはず……
「……やっぱり須郷はほっとくべきでは無かったわね…」
「…須郷さん?」
「分かったわ、私の方でも動いてみる。」
「……ありがとう、祐ちゃん…!」
「可愛い妹のお願いだもん、聞かない姉なんていないよ。」
大人の女性とはこんなにも美しいのかと女性の私でも見惚れていた。
その後、私はダイシーカフェに入り椅子に座った。
「ごめんね、遅くなって…」
私以外は全員来ていた。
それもそのはず、本来の待ち合わせ時間はとっくに過ぎている。
「いや、大丈夫だ。」
この場にいるのは、キリトくん、リーファちゃん、リズ、シリカちゃん、クラインさん、エギルさんだった。
──あれ、一番ここに居るはずのシノのんの姿が…
「ねぇ、キリトくん。」
「…ん?」
「シノのんは?」
「……………。」
私の問に言葉を詰まらせるキリトくん。
私は疑問に思い皆を見るが、皆顔を伏せる。
「……シノンは、帰ってきてない……」
「……え?」
キリトくんがポツポツと話し始めた。
「この世界に戻ってきてないプレイヤーが、約150人いるのはアスナも知ってるよな?」
「えぇ……、まさか……!」
キリトくんは顔を伏せたまま、静かに頷いた。
「……シノンはまだ戻ってきてない、そしてシノンと同じように合ってる人達も『ALO』内で閉じ込められてる可能性があるんだ……」
全ての始まりは同じゲーム。
私は手に力を込めて、勢いよく椅子から立ち上がる。
「アスナ…さん…?」
私の行動に驚いたのかリーファちゃんが控えめに聞いてくる。
「私、行ってくる…そのALOっていうゲームに。」
私はエギルさんにお辞儀してから外に出ようと扉に手をかける。
でも、扉は開かれることは無かった。
「離して、キリトくん。」
外に出ようとした私の手を止めるキリトくんの手。
「1人でやるつもりなのか?」
「えぇ、彼とシノのんを救うためなら何でもするわ」
「ライアが居るという根拠は無いんだぞ?」
私はキリトくんを睨みながら言葉を放った。
「彼のいない世界を毎日毎日平然と笑って生きていけるほど私は強くないわ、泣いて目が腫れて部屋に閉じこもって、今でも鮮明に思い出すの……どれだけかき集めても散っていく彼の身体が……それがどれだけ辛いか君に分かるの!?」
「辛いのは俺達だって一緒だ!」
「貴方には分からないわ、目の前で最愛の人を失う辛さなんて!」
2人の言い合いは続いていく──
「じゃあ、何も出来ずに目の前で相棒を失った俺の気持ちが分かるのか!」
「貴方の辛さなんて私の辛さのほんの少しにしかならないじゃない、相棒って言ってるけど貴方が彼と関わったのは"たったの2年"じゃない!」
「……たった…?たっただと……!」
キリトは言われたくない言葉を言われたことによって怒りを顕にした。
キリト自身わかっていた、彼とはたった2年しか関わっていないが共に命を懸けて背中を合わせた仲。
それを誰かに否定された気がした。
「ふざけるな、ライアを失って辛いのが自分だけだと思うな!たった2年でも俺達は共に"命を掛けて背中を合わせて戦った仲"だ、それを誰かに否定される権利なん……「いい加減にして!」」
キリトくんの言葉に被せて怒鳴ったのは今まで静かにしていたリーファちゃんだった。
「……いい加減にして下さい、ここで言い合って何の得があるんですか。」
「スグ、悪いけど少し黙っ…「うるさい!」……。」
「アスナさん、ライアさんを失って辛いのは分かります、でも今はそんな事をしてる時じゃないと思うんです。生きている可能性が1%でもあるなら、1人よりも皆で立ち向かった方が上手くいくと思いませんか?」
リーファちゃんが私に微笑みながら言った。
その微笑みを見て私は少し冷静になった。
「……そうね、ごめんなさい冷静さを失ってたわ…」
「いえ、冷静さなんてこんな状況になったら失っちゃいますよ。そして、お兄ちゃん?」
私から視線を動かしてキリトくんを睨むリーファちゃん。
キリトくんは固まってヒッと声を上げた。
「お兄ちゃんは過剰に反応しすぎない!分かった?」
「は、はい…!」
リズも溜息を吐いてエギルさんに合図を出した。
「エギル、部屋空いてるわよね?」
「あぁ、お前らの頼みだから開けてあるぜ。」
「ナーヴギアを持ってきて正解でしたね。」
「今は何か中でイベントやってるんだろ?」
私とキリトくんは皆が何の話をしているのか全く分からず、ぽかーんとしていた。
すると、リーファちゃんが笑顔で教えてくれた。
「今からALOに行ってあるイベントを受けます、そのイベントこそが私達の目的です。」
──あ、だからナーヴギアを持ってきてって言ったのね…
やっと謎だったナーヴギアの持参する理由がわかり、隣の部屋へと誘導される。
「よし、向こうでとりあえずどこに集まるか…」
「同じ場所からのログインだから大体同じ場所からスタートのはずだけど。」
「行ってみれば分かるだろ!」
全員がベッドやソファで楽な態勢になったのを確認してから、皆である言葉を唱えた。
『リンク・スタート!』
後書き
長かった……
次回は遂にアルヴヘイム・オンラインです!
では、また次回!
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