喜び
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第五章
「そうだったけれどな」
「そんな贅沢してもか」
「美味いものと酒にリンカーンでもな」
運転手付きのだ。
「全然楽しくも嬉しくもなくてな」
「喜びもか」
「感じなくてな」
それでというのだ。
「つまらなかったぜ」
「御前がそうしたいって思っていた生活だろ」
「それが出来たんだけれどな」
それでもというのだ。
「本当に全然嬉しくなかったよ」
「そうか」
「それでお釈迦様に言われたんだよ」
「どうして面白くなかったか、か」
「ああ、流石お釈迦様だな」
ウボンは仏教徒としてブッダの凄さを述べた。
「色々教えてくれたぜ」
「それは何よりだな」
「ああ、それでな」
「贅沢もか」
「結局な」
「面白くないか」
「何でもかんでも望み通りだとな」
それこそというのだ。
「面白くなくてな」
「願い通りじゃないこともあってか」
「嬉しいとか思うってことだな」
「深いな、けれどな」
「言われてみればだよな」
「俺もそう思ったさ」
ラーマもというのだ。
「本当にな」
「そうだよな、だから俺もこれからはな」
「億万長者とか贅沢とかか」
「ああ、言わないでな」
「今の暮らしでいいか」
「そりゃ贅沢はしたいさ、けれどな」
それでもと言うのだった。
「何でもかんで望みが適うと面白くないってことはな」
「覚えておいてか」
「それから生きていくぜ、まあ夢は夢でもいいか」
笑ってだ、ラーマはこうも言った。
「今の暮らしも悪くないしな」
「こうして働いてビーフン食ってな」
「ああ、漫画とかも読めてな」
「幸せだからか」
「これでいいか、後はかみさん貰って」
結婚をしてというのだ。
「子供もな」
「そうしろよ、じゃあまずはな」
「彼女だな」
「ああ、探すか」
ウボンは微笑んでラーマに返した、そうして休憩が終わるとまた仕事に戻った。そして昼はまた屋台でビーフンを食べて笑顔になったのだった。
喜び 完
2017・5・15
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