過労
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第二章
「一日で辞めた子もいたな」
「正社員の人は」
「研修三日でな」
「そうよね」
「俺は一年いるが」
「というか一年でもね」
「あまりな」
残っている社員はというのだ。
「俺とあと二人位か」
「残ってる人は」
「ああ、そうだが」
「その会社おかしいわよ」
ここまで聞いてだ、留華は確信してこう言った。
「やっぱり」
「そうか?」
「そうよ、ブラックでしょ」
「しかし仕事はな」
「どうしてもっていうのね」
「そうだろ」
こう妹に問い返した。
「やっぱりな」
「けれど八時からでしょ」
「十一時までな」
「それが普通よね」
「そうだな」
「しかも肉体労働で」
酒屋のそれだ。
「あと色々やってるのよね」
「書道もやっているしな」
「何で書道も?」
「お客さんへの贈りもので文章とか言葉を筆で書くこともあるんだ」
酒屋ではというのだ。
「うちもな」
「それでなのね」
「そうだ、そっちの練習もしてフォークリフトの免許もな」
「取る様になの」
「練習しているんだ」
「それで十一時までなの」
留華は眉を顰めさせて言った、ここまで聞いて。
「お家に帰ってくるのはいつも午前様で翌朝も起きて」
「八時からな」
「遅いと一時とかで」
それでとだ、留華はまた言った。
「それで週六日」
「それが仕事だろう」
「いや、それ絶対ブラックよ」
留華は今流行りのこの言葉を出した。
「どう見てもね」
「そうか?」
「そうよ、お兄ちゃん最近痩せたし」
彼をずっと見てきている妹の目から見てもそうだった。
「やつれてきてるわよ」
「そうか?」
「そうよ、今の仕事先考えたら?」
要するに退職してはというのだ。
「そんなのじゃ続かないわよ」
「だから仕事はな」
「そういう訳にはいかないっていうのね」
「辞めて次の仕事がそう簡単に見つかるのか」
翔真はそのやつれてきている、客観的に見てもそうなてきている顔で言った。見れば肌も髪も荒れてきている。
「どうなんだ」
「それは」
そう言われるとだ、留華も返答に窮した。そのうえで兄に返した。
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