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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十六話 長崎の街その九

「勿論こっちもそうなってもらうものを出すからな」
「紅茶やコーヒーを」
「そして甘いものもな」
 カステラに限らなかった、このことは。
「出しているんだ」
「そうよね」
「そうだ、ただな」
「ただ?」
「やっぱり長崎にいるとな」
 この街にともだ、お父さんは裕子さんに話した。
「カステラばかり食べるからな」
「飽きる人はいるわね」
「そうした人はいるな」
「ええ、けれどね」
「裕子は違うな」
「私は飽きないわ」
 その名物カステラをというのだ。
「全然ね」
「それは何よりだ」
「だって美味しいから」
 それ故にというのだ。
「物心ついた頃から食べていてお米みたいなものだから」
「だからだな」
「飽きるとかじゃなくて」
「習慣か」
「そんなものになってるから」
 裕子さんにとってカステラ、それはというのだ。
「気にならないわ」
「そうか」
「飽きることはないから」
「そういえば御飯は」
 お米のそれはとだ、早百合さんも言った。
「飽きないですね」
「そうですね」
 裕子さんは早百合さんにはいつもの敬語になった、砕けた口調になるのはご家族だけらしい。ついでに言うと長崎の訛りもご両親には出ていた。
「いつも食べていますと」
「はい、お米の御飯もパンも」
「ですから」
「それで、ですか」
「カステラもです」
 それもというのだ。
「私も飽きないです」
「そうなのですね」
「ちゃんぽんも同じで」
 こちらもというのだ、もう一つの長崎名物も。
「飽きないです」
「いつも食べていても」
「おうどんやお蕎麦よりも食べてきましたから」
 何か長崎らしい言葉だった、とにかく長崎といえばちゃんぽんとのことだ。
「勿論長崎でもおうどんやお蕎麦は食べますが」
「それでもですか」
「私はちゃんぽんはそれ以上に食べてきましたので」
 だからだというのだ。
「習慣になっていまして」
「飽きないのですか」
「そうです」
「では皿うどんも」
 これも長崎名物だ、カリカリの細いフライ麺の上にとろみのある野菜や豚肉、魚介類を炒めたちゃんぽんの上に乗せる様なものをかけて食べる。
「そうなのでしょうか」
「いえ、皿うどんは」
「ちゃんぽんよりも」
「食べていないです」
「そうなのですか」
「私はちゃんぽん派ですので」
 だからだというのだ。 
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