ソードアート・オンライン~白と青の軌跡~
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大切な娘との日々
前書き
今回は長いです!
では、本編へ!
ライアがアスナにプロポーズをし結婚した事がアインクラッド中に広まった今日。
2人は84層の静かな所にある家を買い、のんびりと過ごしていた。
「んー、静かだ……」
「そうだね、キリトくん達のお陰で逃げるのがやっとだったもんね。」
アスナは楽しそうにお茶を淹れながら言った。
「クラインなんか泣き出すしな。」
そう、クラインは今までのライアを見ていた分喜びと嫉妬の二つで泣きながら追いかけてきたのだ。
他のメンバーはニヤニヤとしていたのは想像がつくだろう。
「ふふ、嬉しかったんじゃないかな?」
「どうだか、嫉妬かもしれないぞ?」
そんな呑気な会話をして、2人は笑っていた。
アスナが淹れたお茶をテーブルに起き、ライアに話し掛けた。
「ねぇ、ライくん?」
「ん?」
ライアは操作していたウィンドウを閉じて、アスナが持ってきてくれたお茶を飲みながら返事をした。
「前から気になってたんだけど、75層の時と昨日も言ってた"ユイ"って誰?」
ライアは苦い顔をした。
"ユイ"
それは、自分が一番辛い時に出会った『パパ』と呼んでくる娘の名前。
本当の娘ではないが、ライアは本当の娘のように接していた。
「あ……辛かったら話さなく……」
アスナはライアの表情が曇ったことに気づき、言葉を訂正しようとしたがライアの言葉に消された。
「………話すよ、ユイの事を。」
ライアは深呼吸をして、カップをテーブルに置いてからゆっくりと何かを思い出すように懐かしむかのように話し始めた。
「ユイは俺の娘なんだ。」
「え……?」
「あぁ、本当の娘じゃないよ。でも娘と変わらないほどに大切な子だった。」
アスナは一瞬表情を曇らせたが、一つの疑問を感じた。
「だったってどういうこと…?」
「ユイは半年前に俺の前から消えたんだ。」
「え…!」
ライアはウィンドウを操作し、ある物をオブジェクト化させた。
雫のような形をしたもの。
「ユイは、このソードアート・オンラインのメンタルカウンセラーの試作一号と呼ばれるAIだったんだ。」
「AI…?」
「でも、俺達と何ら変わらなかった。本物の知性と感情を持ち本当に……娘のような存在だった。」
ライアは、その雫の形をした物をテーブルに起き再び話し始める。
「でも半年前、75層攻略する前にAIだと知らなかった俺はユイの親を探しに1層の子供を保護してる人の所に行ったんだが見つからなくてさ。その時に軍のユリエールっていうプレイヤーに頼まれて、隠し迷宮にシンカーというプレイヤーがいるから助けて欲しいと頼まれたんだ。」
─────────────────────
「お願いします、シンカーを助けてください…!」
ユリエールは涙目でライアに頭を下げる。
「助けたいのは山々ですが、こちらとしても裏付けをしない限り……」
「無理を言っているのは百も承知です、ですが彼がどうしてるのかと思うとどうにかなりそうで……!」
ライアにはその気持ちがよく分かる。
自分が彼女、アスナに対して思っている気持ちと同じなのだろう。
だが、いくら分かってもソロのライアにとっては命懸けでもあるため簡単には了承出来ないと考えていた時、隣から裾を引っ張られた。
「パパ、大丈夫だよ。この人、嘘ついてないよ。」
「え……ユイ分かるのか?」
「何となくだけど…」
──娘のユイがこう言ってるのに、俺が信じないわけにもいかないよな。
ライアはそっとユイの頭を撫でてからユリエールに向き直った。
「分かりました、微力ながらお力になります。」
「あ、ありがとうございます…!」
ライアはユイに向き直り話し掛けた。
「ユイ、今からパパは危ない所に行ってくるからユイはここでサーシャさんと待っててくれるかい?」
ユイは不満になったのか、ぷいっと横向いて反論した。
「やだ!ユイもパパについてく!」
「ユイちゃん、私とここでお留守番してましょ?」
サーシャが優しくいうが、ユイ本人は断固拒否。
「うーん……、しょうがないか……。」
「大丈夫ですか…?」
「ユイ、大人しくしてるんだよ?」
「はーい!」
元気な返事が部屋に響いた。
「ここが迷宮区です。」
「進む事に現れるタイプ…ですね。」
そんな会話して階段を降りていく。
ライアは剣を装備して、ユイはユリエールに任せた。
「ユイちゃん、大丈夫?」
「うん、ユイ全然怖くないよ!」
「はは、頼もしい娘だ。」
目の前に現れるモンスターを次々と倒すライア。
その度に後ろから「パパすごーい!」という声が聞こえる。
「すみません…頼ってしまって…」
「いえいえ、ユイをお願いします。」
そして、シンカーがいると言われる部屋が見えてくる。
モンスターがポップしなくなったため、ユイはライアの背中の上でおんぶされユリエールはマップを見ていた。
「あ、あそこです!シンカー!」
「ユリエールさん、危ない!」
ユリエールが走り出した瞬間、シンカーの声が響き渡る。
「ユリエール!来ちゃダメだ、その通路はー!」
ライアはユイを危険ではない場所で待たせ、「ここで待ってて。」と言い、ユイが頷くのを確認してから剣を地面に突き刺してユリエールを謎の鎌から守った。
「あっぶねぇ…!」
ライアはすぐにユリエールをユイの近くに行かせ、眼の前の悪魔の前に立つ。
「ユリエールさん、ユイを頼みます!今すぐ安全地帯から転移してください!」
「そんな、貴方を置いていくなんて……!」
「後から追いかけますから、早く!」
──俺の識別でも判断出来ないってことは……90層クラスか……!
ライアはウィンドウを操作し、もう1本剣を装備する。
擬似二刀流の構えだ。
大鎌がライアに降りかかる瞬間、ライアは2本の剣をクロスさせ防御体制に入った。
だが、大鎌が当たった瞬間。
「……ぐっ!?」
ライアは軽く吹き飛ばされた。
──んな……俺のレベルは104だぞ!?
HPを確認するとイエローの1歩手前で止まっていた。
あと一発受ければ、間違いなくあの世行き。
──くっそ……こんな所で負けるわけには……!
必死に身体を動かそうするが、それでも近づいてくる死神の鎌。
そして、遂に最後の1振りが降りかかった。
がライアに刺さることは無く…………
「ユ……イ……?」
──不死属性……?
目の前にいるのは娘のユイ。
だが大鎌は謎のバリアによって弾かれ、ユイの手には炎の剣が握られていた。
そのまま炎の剣が死神を焼き払い、跡形もなく消えていた。
ユイは後ろに振り向き、ライアに……
「パパ、私思い出したよ……」
ユリエールとシンカーに先に転移してもらった2人は、安全地帯で話した。
「じゃあ、ユイ……君はAIなのか……?」
そう、それはユイがこの世界のメンタルカウンセラーAIであるということ。
「はい……ごめんなさいライアさん……この涙も、感情も偽物なんです……」
ライアはしゃがみ、ユイを抱きしめた。
「偽物なんかじゃない。ユイ、君は本物の知性と感情を持ってるよ。だから言えるはずだよ、本当の気持ちを。」
ユイは力強くライアを抱き締め返した。
「私は……パパとこの先もずっと一緒にいたい、ママとも会いたい……!」
ライアは頭を撫でながら優しく。
「あぁ、ずっと一緒だ。ママともすぐに会わせてあげるよ。」
だが、ユイはそっとライアから離れた。
「でも遅いんです……」
「え…?」
ユイは自分が座っている黒い意思を触れながら話した。
「これは、GMが緊急でゲーム内で対応できるように用意されたコンソールなんです。私はこれに触れた事で記憶を取り戻し、パパを助ける事が出来ました。そして、同時にカーディナルに私がいることもバレたので、今の私はカーディナルにとって異物でしかありません。」
ユイは泣きながら言った。
「私は、もう消されちゃうんです……」
「そ……んな……まだ、アスナとも会ってないのに、まだ始まったばかりなのに……」
「パパ、笑って…?」
「無理だよ……僕はもうユイがいなかったら笑えないんだ……!」
「ママが……いるよ……」
ライアは強く抱き締めていたユイの身体が透けていることに気づいた。
「嫌だ……ユイ……いなくならないでくれ……!」
「パパ……皆を笑顔にさせて……私は会えなかったけど……ママを……笑顔に……」
そして、ユイはライナの目の前から……
「あぁぁぁぁ!」
ライアはユイがいた場所に手で殴り、コンソールに向かって立ち上がった。
「ふざ…けるな……カーディナル……いや茅場晶彦……これ以上……お前らの好きにさせないぞ……!」
──まだ、まだ間に合うはずだ……ユイを……アスナに会わせるんだ……もう誰も失いたくない……!
ライアはコンソールのホロウキーボードを叩く。
そして作業が終わった瞬間、衝撃波がライアにあたる。
「っ!?」
軽く飛ばされたライアはすぐに手のひらを確認した。
そこには雫の形をしたオブジェクト。
「……間に……合った……」
ライアはその後、転移し宿に向かっていた。
その時─────
『パパ、笑って……』
愛しい娘の声が聞こえた気がした。
────────────────────
ライアはアスナに全てを話し終えた。
「という事だよ。」
アスナは涙目で、ライアを抱きしめた。
「ア、アスナ!?」
「ありがとう……あおくん……!」
ライアは落ち着いて抱きしめながらアスナの頭を撫でた。
「あぁ、まだ時間はかかると思うけど必ずユイに会わせるよ。」
「うん……必ず会おうね、ユイちゃん。」
アスナは雫のオブジェクトに触れながら言った。
ライアはウィンドウを操作して、アスナに言った。
「明日奈。」
「なぁに?」
「ユイを明日奈が持っていてくれないか?」
アスナはライアの言葉に驚いた。
大事な娘を自分に預けると言っているのだ、驚くのも無理はない。
「え……どうして?」
「きっと、ママと一緒にいたいと思うんだ。」
そう言ってライアはネックレスにして、アスナに渡した。
「………ありがとう、あおくん。」
それから、アスナの首元にはユイの分身が付いたネックレスが付くようになった。
デスゲーム終了まで残り……1週間。
後書き
今回はすごく長かったです…
ユイちゃんの話をちゃんと書きたかったので、許してください。
では、また次回!
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