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タガメ

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第三章

「タガメを見ます」
「他のお水の虫もよね」
「そうなります、それでどうしたら市長さんになれるんですか?」
「市長さんは皆に選ばれてなるから」 
 選挙のことを話すのはまだ早い、枝織はこう考えて夏樹に話した。
「だからね」
「それで、ですか」
「まずは物凄くお勉強していいこともしていってね」
「そうしてですか」
「皆に凄い人って認められたらね」
 夏樹にわかりやすく話していった。
「そうしたら市長さんに選ばれるわ」
「そうなんですか」
「だから頑張ってね」
 枝織は微笑み話した。
「これから」
「はい、頑張ります」
 実際にとだ、夏樹は枝織に答えた。そしてこの日からだ。
 夏樹はこれまでよりも遥かに勉強に励む様になり意地悪なことやケチなことはしなくなり行いもあらたまった。その我が子を見てだった。
 両親は驚いてだ、夕食の時に夏樹本人に問うた。
「急に勉強しだしてどうしたんだ?」
「家のお仕事も手伝ってくれるし」
「どうしたんだ」
「何かあったの?」
「うん、僕市長さんになるんだ」
 夏樹は両親に強い声で答えた。
「そうして街のお水を奇麗にしてね」
「この前言っていたタガメをか」
「見たいのね」
「そう、だからね」
「勉強してか」
「いいこともしてるの」
「そうしてるんだ、絶対にね」
 夏樹は強い声のまま言った。
「僕市長さんになるから」
「そうか、本気か」
「本気で市長さんになるのね」
「そうだよ、この街のね」
 こう言ってだ、夏樹は食べた後で自分の部屋に戻って勉強をするのだった。両親はその息子を見てそれで言った。
「何ていうかな」
「またえらいことを考えだしたわね」
「市長さんになるのか」
「あの子が」
「それを目指して勉強するなんてな」
「嘘みたいよ」
 こう二人で話した。
「あの子がね」
「何をしたいかとか考えたこともなかった子がな」
「いきなりそんなことを言って」
「お勉強していいことをするなんてね」
「続けばいいな」
 二人で話すのだった。
「このまま」
「そうよね、けれどね」
「ああ、親としてはな」
「続く様にしてあげましょう」
「そうしような」
 二人は息子のそのやる気を見て尊重することにした、そして彼がテストでいい点を取ってきたり家事を手伝うと積極的に褒める様にした。これがだった。
 功を奏してだ、夏樹は頑張り続け。
 成績はよくなり人格も磨かれていってだ、ある国立大学の法学部に入ってからゼミの教授に笑顔で言われた。 
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