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盲導犬

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第三章

「訓練を受けてね」
「身に着けたんだ」
「そうよ、絶対にね」
 こうプリンスに言うのでした。
「それで訓練を受けて身に着けさせられたのよ」
「そうなのかな」
「まあそのうちわかると思うわ」
 ミミはプリンスに穏やかな声で言いました。
「あんたもね」
「だといいけれど」
「まあとにかくご主人がお外に出た時はね」
「僕がだね」
「ご主人をお願いね」
「うん、僕のお仕事はさせてもらうよ」
「そういうことでね」
 こうお話してでした、そのうえでです。 
 プリンスは大槻さんの盲導犬となりました、そして大槻さんがお仕事マッサージのそれをする時はいつも先導をしたり注意をしたりする様になりました。
 奥さんもいつも一緒です、ですが。
「あっ、ここは」
 信号を見て立ち止まるライトが光ったのを見て止まりました。それを受けて大槻さんも足を止めます。奥さんが言う前に。
 そして電車に乗る時もです。
「階段の昇り降りは注意して」
「エレベーターはこうして乗って」
「プラットホームには落ちない」
「何かと注意しないと」
「人もいるし」
 とかくです、何かとでした。
 プリンスは注意をして大槻さんを先導しました、そして進んだり立ち止まったりしてです。
 大槻さんの盲導犬を務めていきます、とかくです。
 注意することが一杯あってです、大槻さんが外出を終えてお家に戻る度に思うのでした。
「いや、本当にね」
「大変でしょ」
「全くだよ」
 玄関で休みつつその玄関に来たミミに答えます。
「何かとね」
「お外は危険が一杯っていうからね」
「その通りだよ」
「私は家猫だからお外のことはよく知らないけれど」
「家猫って?」
「お家を縄張りにしている猫なの」
 こう言うのでした。
「それが私なのよ」
「それが君なんだ」
「そうよ、お家からは出ないの」
「だからお外はなんだ」
「知らないの」 
 そうだというのです。
「私はね、けれどね」
「お外のことは知ってるんだ」
「テレビでね」
「ああ、動く画面の」
「それで観ているから知ってるの」
「お外のこともだね」
「そうよ、だからね」
 だからだというのです。
「あんたの大変さもわかるわ」
「そうなんだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「わかったかしら」
 こうプリンスに尋ねてきました。 
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