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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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MR編
  百四十八話 暴飲、暴食、そして歓談

 
前書き
はい、どうもです。

と言う訳でいよいよ、BBQ開始となります。

今回は日常っぽさにに重点を置いた回になりますので、暴れまわるキャラとか、暗い話とかはないですw

では、どうぞ! 

 
本来、バーベキューというものにはいろいろと準備が必要なものだ、各種材料を初め、グリルや鉄板、網、等の調理器具と各種食器は勿論、必要量の炭や着火剤、外でやる場合は、虫よけスプレーや日焼け止めが必要な場合もある。

それをすると、VRMMOでの準備というのは大分楽なものだ。食材の調達こそ時間がかかったものの、食器などは重プレイヤー達は時折行うローテアウトの暇つぶし為にちょっとした食器類は自分で持っていたりするし、炭や着火はタップ一回でよいうえ、虫よけも日焼け避けも必要ない。

そんなこんなで食材集めの翌日、体よく集まったいつものメンバーとスリーピングナイツ、それに加えて外部からの何人かのお客様たちで、森の家前は大いに盛り上がり、準備も万端に整っていた。
乾杯の音戸を取るのは、家の前に立ったアスナだ。

「えーっと、コホン!みんな早く食べたそうなので、前口上とかは無しってことで!それでは!スリーピングナイツのみんなとの初めての顔合わせを祝して……乾杯!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
その声と共に、暴飲暴食の宴が始まった。

────

「お前が、絶剣だな?」
「?うん!えーっと……」
アスナと共に飲み物を飲んでいたユウキの下へ歩み寄る、大柄な火妖精(サラマンダー)が居た。アスナには見覚えのある顔だ。

「あ、ユウキ、こちら、サラマンダー領の将軍で、ユージーンさん」
「よろしく頼む」
「で、まぁ、ユウキの方は、紹介は必要ないみたい、ですね?」
「あぁ、噂は聞いている」
「えっと……ユウキです!絶剣なんて呼ばれてるけど、あんまりボクは実感ないんだよねぇ」
苦笑して握手を交わすユージーンとユウキを見ながら、アスナの方はなんとなくこの後の展開に予想が付き始めていた。

「謙遜するな、話に聞く限り、大した武勇伝だ、いずれ俺とも一戦交えてもらいたい」
「うん、勿論!機会があればいくらでも!」
「うむ、ただ、今回は少し違う話をしに来た」
「?」
小首をかしげるユウキを真っ直ぐに見て、ユージーン将軍ははっきりと言う。

「お前と、お前のギルドはどこの種族にも与していないと聞いている。であれば……一つ、サラマンダ―に手を貸してはもらえないだろうか」
「え、えぇ!?僕らが!?」
「驚くことではあるまい、野良デュエルでのあれだけの活躍と、ギルド1パーティでのアインクラッドフロアボスの討伐、これだけの功績があれば、当然そう言う話もあるものだ。無論、報酬に関しては十二分に払う用意がある、考える価値はあると思うが……」
「おっと、抜け駆けはいただけんな、ユージーン将軍?」
と、不意に彼の後ろから、凛とした女性の声が響いた。それを聞いたとたんに、ユージーンの表情が渋いものに変わる。

「……サクヤか」
「応とも」
「私もいるヨ~」
彼の背後に居たのは、足まで伸びる長く美しい髪に和装と刀を携えた風妖精(シルフ)の女性と、若干露出の多い服装に癖のあるブロンドと猫のような鼻と瞳の猫妖精(ケット・シー)だった。

「?」
「えっとね、ユウキ、あちらがシルフ族の領主で、サクヤさん、其方がケット・シーの領主の、アリシャさん」
「うむ、始めましただな、絶剣君」
「色々、話には聞いてるヨ~!」
「あ、うん!初めまして!」
二人と順番に握手をする間、ユージーンは憮然とした態度でそれを見ている、あくまで、強引に誘うつもりはないということなのだろう、とはいえ……

「全く、少し目を離した隙にもう手を出しているとは」
「案外抜け目ないっていうか、手が早いよねー、ユージーンは」
「人聞きの悪い言い方をしないでもらおうか。俺はあくまで、普通の交渉をしていただけだ」
「フッ、よく言う」
「?」
剣呑、とは言わずとも、互いをけん制するような会話をする三人に、ユウキが首を傾げる。それを見て、サクヤが苦笑し肩をすくめた。

「なに、君たちを味方に引き入れたいのは、サラマンダ―だけではないという事さ。私達も、その話がしたかったのでな」
「声を掛けるタイミングをうかがってたら―、ユージーンに先を越されちゃったって言う訳だヨ。君たち、有名人だからネ~」
微笑みながらそんなことを言うサクヤとルーに実感が無い、と言った風の様子でユウキが首を傾げる、その様子に苦笑して、サクヤが続けた。

「今は、どの種族も地上側のグランドクエスト第二弾に向けて戦力を集めている最中でな。どこの種族も、君たちのような強力な戦力は喉から手が出るほど欲しい。逆に、他の種族にはとられたくない、と言う訳だ」
「ボクたち、そんなに有名なの?」
「ニャハハ、自覚してないのがまた凄いよネ~、アインクラッドのフロアボスを1パーティで撃破しちゃうって、それくらい凄いことなんだヨ?」
「う、うわぁ、どうしようアスナ、知らないうちにボク達って凄く目立ってた?」
「というか、私も最初は結構驚いたんだけど……」
結構色々言ったんだけど覚えてない?と、苦笑して、どうやら本当に目立つことをしている自覚が無かったらしいユウキに、呆れるべきかその器の大きさを称えるべきかと迷いながら苦笑する。

「まぁ、とはいえ私達も、一プレイヤーとして他のプレイヤーのプレイングを強制する気はない。既に契約している勢力があるならそれはそれでいいし、その辺りは君たちの裁量だ、返事も急ぐ訳では無い。将軍殿も、それで良いな?」
「ふん、言われるまでもない」
憮然としたまま腕を組むユージーンに片目を閉じながら肩をすくめて、サクヤはユウキを見る。彼女は少し迷うように視線を彷徨わせたが、数秒でうんと頷いて苦笑した。

「えーっと、ごめんなさい、今はとりあえず、そう言う方向でプレイしようっては思って無いです。みんなにも聞いてみるけど、多分みんなそうだと思う。種族同士の戦いとか、傭兵とかうまく出来るきがしないし、それに……」
そこまで言って、ユウキは一度アスナの方を見て、また笑った。

「いまは、アスナ達と一緒に、沢山したいことがあるから!」
「………ふ、そうか。なら、野暮なことはしないでおこう」
「ん~、ざんね~ん。一緒に戦ってみたかったヨ」
「別段、共に戦うだけならば機会もあるだろう、気が変わったら、いつでも連絡をしてくるがいい」
「あ~、やっぱりちゃっかりしてル~」
再びそう言ったルーと、言われて眉をぴくつかせるユージーンに、朗らかな笑いが場を包んだ。

────

「もぐ、もぐ、んぐっ」
「すっごい食べっぷりですねぇ」
「んっ、昔からよく言われるんです、見た目の割に大食いだねって。でも今日は特別ですよ、アスナさん達の料理はほんとにおいしいです」
「ですよねぇ、ALO中探しても、アスナさんとサチさんの料理よりおいしい料理はそうそう見つからないんですよ~」
そんな事を話しながら草むらに座って料理をパクついているのは、タルケンとレコンだ。二人そろって緑色の髪を揺らしながら、串に刺された肉をぱくついている。サチとアスナがスパイスを選んだその味付け肉は、絶妙な香ばしさと塩気、滴る肉汁の旨みでいくら食べても飽きが来ない。

「そう言えばアスナさんって、キリトさんの恋人なんですよね」
「はい、リアルでも付き合ってるらしいです。あんなに気立てがよくて、美人で」
「料理が上手くて、しかも強いお嫁さん」
ユウキと共に談笑に興じているアスナと、肉にかぶりついている少年剣士を交互に見比べる。

「リア充ですねぇ……」
「リア充ですよねぇ……」
嫉妬と言うより完全に諦め加減なトーンで二人そろってはぁ、とため息をつく。青春を生きる少年たちの、哀しき空気が流れた。と……

「あら、タル、どうしたんですか?」
「なんでアンタはため息なんかついてんのよ」
そんな声が背中から投げかけられる。振り向くとそこに、シウネーとリーファが並んで立っていた。

「あ、リーファちゃん!」
「シウネー、何時の間に居たんですか」
「えぇ、つい今しがた」
「ごめんなさいタルケンさん、レコンが変な事言いました?」
「えぇ!?」
「あぁ、いえいえ」
タルケンが苦笑しながらヒラヒラと手を振るうちに、二人は対面に座りこむ。

「で?何話してたのよレコン、どーせつまんない話につき合わせてたんだろうけど」
「ど、どーせって、ひどいよリーファちゃん~……」
「ふふ、仲がよろしいんですね」
「そんな事無いですよ~」
「無いの!?」
憑りつくしまもなく返された一言に、再びショックを受けたようにレコンが突っ込む、その様子に苦笑しながら、タルケンが問うた。

「二人は、付き合いが長い?」
「はい、中学の頃の同級生なんです。高校は別なんですけど」
「それが残念だよね……分かってたけどボクは高校もス……リーファちゃんと一緒が良かったなぁ」
「そう?あたしはそうでもないけど」
「さ、さいですか……」
あからさまに落ち込むレコンの肩を、ポンと、タルケンが叩く、その様子を見ながらリーファが笑った。

「まぁ、別にこっちで会えるからいいじゃない、あ、ALOをあたしが始めたきっかけも、レコンなんですよ」
「あら、それなら、レコンさんは大分古参のプレイヤーさんなんですか?」
「あ、はい。あんまり実力は見合って無いですけど……一応最古参?の部類だと思います」
「へぇ、それなら、今度色々と教えてもらえませんか?ウチのギルドシステム面にまだ慣れてない所もあって。このゲーム、突き詰めていくとかなり奥が深くて……」
「あぁ、分かります。スキル面の話する掲示板の議論とか、結構今も白熱しますし、ボクでよかったらいくらでも」
どうもややゲーマーとしての部分で気が合うらしい二人の議論に、女性二人が苦笑する。と、不意にリーファが、何かに気が付いたように言った。

「そう言えば、そうやって並んでるとなんか二人って……」
「?」
「……ぶっ……あははははは!!!!」
「!?え、り、リーファさん?」
話し合う二人をじっと見つめていたリーファがいきなり盛大に吹き出す。シウネーが目を剥いた。男子二人も驚いたように彼女の方を見る。ひとしきり笑って目尻に浮かんだ涙をぬぐいながら、何とか息を整えてリーファはようやく三人が固まっていることに気付く。

「ご、ごめんなさい……はーっ、急に笑っちゃって、ふぅ……いやその、タルケンさんが現実のレコンによく見たら凄く似てて、思い出して笑っちゃって、ホントごめんなさい……」
「ふむ……」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ~、丁度今のタルケンさんの髪を黒くした感じで……ごめんなさい、ホント、勝手に分からないところで笑っちゃって……」
「成程、これがレコンさんのリアル……」
「あの、シウネー?あまり僕の方をじろじろ見られても困るんですが……」
急に興味深そうな顔をしてタルケンの顔をじろじろと見始めるシウネーに、タルケンが身を引いた。と……レコンが遠慮がちに手を挙げる。

「あの~……」
「あ、はい、ごめんなさいレコンさんリアルの事を……」
「あ、いえそれはいいんですけど……リーファちゃん、リアルの僕の顔思い出しただけでそこまで笑われると流石にショックなんだけど……そんなに面白いの僕の顔……」
「え?あー、あれ、そう言えば結構ちゃんと思い出せるけど、なんでだろ……」
首を傾げるリーファになんとも微妙な気分になりながら苦笑するタルケンはなんとなく、リーファとレコンを見比べながらフッと考えた。

「(あれ?実はレコンさんも案外向こう側なのでは……?)」

────

一方その頃、会場各地ではやや舌の肥えた者達による料理談義もちょっとした者になり始めていた。

「んん!?この香り……」
「お、なんだよノリちゃん、此奴の良さがわかんのかい?エギルが持ってきたんだが、いい感じのなんつーか、まろみっつーの?それと香りがあってよう」
ツボのような形の酒甕を持ち上げて、スンスンと匂いを嗅いだノリが驚愕の表所で目を輝かせるのに、様子を見ていたクラインが聞く。すると、彼女は大いに嬉しそうに甕をパンパンと叩いた。

「わかるもなにも!此奴はアタシが大好きな古酒(クース)にそっくりだよ!どうしたのさこれ!?」
「あぁ、それか。沖縄の酒に香りが似てるんで、今回に合わせて調達してきたんだ、気に入ってもらえたんなら、入手先を教えるか?」
答えたエギルに、若干引くような高速でノリがうなづく。

「頼むよ!アタシはこれが大好きなんだよ……!」
「おっ」
言いながら、ノリはトクトクと音を立てて氷の入ったジョッキに三分の二程度の量の酒を注ぐと、傍らにあった水差しから水を注いで手早く水割りを作る。少しジョッキを回して全体を馴染ませると、一気にそれを飲み干した。

「おぉっ」
「ほぉ、良い飲みっぷりだな」
「かはーっ!良い!染みるぅ!!酔えないのがほんとに残念だねぇ!」
「お、おいおい!俺のも残してくれよ!」
言いながら二杯目を注ぎ始めるノリに、一人で飲み干される危険性を感じてクラインもジョッキを取り出す。肉を焼く手を止めたエギルも、自前のグラスにクラインから酒を注いでもらう。

「なんなら改めて乾杯でもするか?」
「おっ、んじゃぁまたこの出会いに乾杯か?」
「そんなんじゃあ繰り返しさ!新しい酒飲み仲間に!」
まるでバイキングか何かのように、大声でグラスを掲げたノリを見て、エギルとクラインは一瞬目を見開く、何時かプレイした北欧を舞台にしたファンタジーゲームや映画の一シーンが、脳裏に木霊する。
大柄な男たちと、負けず劣らず豪快な女の、二度目の杯……

「おうよ!」
「良き出会いと友に!!」
「「「乾杯!」」」
ガシャン!という盛大な音が、肉の焼ける匂いと共に木霊した。

────

さて、年長者たちが酒盛りをする中、タルケンと同じく凄まじい勢いで食事を平らげている一角が居た。

「はむっ、まぐ」
「んぐっ、もぐ」
「アンタたち、ホントによく食べるわね……」
呆れ顔のリズの目線の先で次々に肉を平らげて行くのは、シリカとアイリである。二人とも幸せそうな表情で串にささった肉にパクパクとかじりつくと、結構なスピードでそれを咀嚼、嚥下していく。二人とも口は小さいのに、よくもまぁこうも食べる物だと、一通りの食事を終えて腹が膨れているリズは苦笑した。

「二人とも、どうせなら野菜も食べたらどう?」
そんな卓に、アウィンことヤミが皿を以って歩み寄ってきた。並んで食べるシリカとアイリの対面、リズの隣に座ると、苦笑しながら数種類の野菜を乗せた皿を差し出してくる。
すると肉を食べる手を止めた二人はしかし、あからさまに嫌そうな顔をした。

「う、野菜ですかぁ?」
「えー、こんなにお肉あるのに……」
「あら、野菜だっておいしいわよ?」
明らかに嫌そうな態度を示す二人に、ヤミは憮然とした態度で皿を押し出す。と、二人が綺麗に揃って身を引いた。それを見て、いよいよ彼女は目を細めた。

「ふぅん?」
「えっ?」
「あっ」
その反応に、シリカが頭に疑問符を、アイリが引き攣った顔をした。あからさまな反応の違いをリズがいぶかし気に見ていると、唐突に横に居るヤミがキョロキョロと周囲を見回し始めた。

「?どしたの?」
「んー?別に、何処かにおいしそうに食べそうな子は居ないかと思って……あぁ、君!テッチ君!ちょっと来て頂戴!」
「?うす」
ヤミが呼び止めたのは、ターキーを食べながらウロウロしていた大柄なノームの青年、テッチだった。ヤミたちのテーブルの横まで来た彼は、女子ばかりのそのテーブルになぜ自分が呼ばれたのか分からないらしく軽く首を傾げる。

「貴方、野菜は好き?」
「え?」
「野菜よ、好きなの?嫌いなの?」
ヤミの、有無を言わせないその問いに、たじろぎながらテッチは頷いた。

「え、えーっと、どちらかと言えば、苦手っす」
「そ、結構よ。じゃあ……」
言いながら、ヤミは手元からシリカたちに差し出していた皿を持ち出して、今度はテッチに差し出す。そして……

「このニンジンを食べなさい」
「え」
皿の上に乗せられた、輪切りにされた焼きニンジンを指さした。様子を見ていたリズが流石にポンポンと肩を叩く。

「ちょ、ちょっとヤミ、いくらなんでも、苦手って言ってる相手にそれは……」
「ちょっと苦手なくらいの子じゃないとダメなのよ。さ、食べて、大丈夫よ、絶対おいしいわ、賭けても良い」
「いや、でも」
「食 べ て ?」
「う、うす……」
笑顔で、しかし一切の反論を許さないその語調に気圧されるように、結局テッチはニンジンに手を出した。
手に取った少し厚めのそれを、口に運んで、咀嚼する。

「…………」
困ったようにその眉尻を下げて、細目の青年はパリポリとニンジンを咀嚼する。その様子を固唾を飲んで三人の少女が見守る中……

「……?」
彼は不意に、首を傾げてどう言う訳か二枚目のニンジンに手を出した。再び咀嚼して数秒の後、また三枚目に手を出す。

「「「おぉ……」」」
「どうやら結論が出たみたいね、どう?おいしいでしょ?」
「あ、うっす!甘くて、軽く塩が効いてて美味いっす!」
「うん、分かってもらえたなら結構。これ、ちょっとだけ岩塩に近い調味料の素材を振ってあるの、良い舌ね」
ニコリと笑ってヤミは満足げにうなづく、視線を傾けると、興味深々といった様子でこちらを見ているシリカと、苦笑しながらもしっかりと皿に目を向けているアイリが目についた。

「さて、それじゃ改めて聞くけど……二人とも、どうせなら野菜も食べたらどう?おいしいわよ?」
「は、はい!」
「いただきまーす」
言いながら、二人は野菜をぱくつき始める。その様子を満足そうに見てから、ヤミはテッチに向き直る。

「悪かったわ、見本みたいに使って。ごめんなさい」
「あぁ、いや、いいっすけど……ニンジン、こんなに美味くなるんっすね」
「どれ?あむ……ほんと、ヤミ、これおいしいわよ」
「取ってきたの、貴女達だけどね?」
苦笑しながら答えた彼女もニンジンを一口食べると、少し笑って言う。

「まぁ、グリーン・スペンソニアの野菜は私も味見してたから。わざわざ取ってきたのに、食わず嫌いで口にも入れないっていうのはあれじゃない」
「それはそうよね……それにしても、結構手慣れたプレゼンだったじゃない?」
「うっす、ちょっと驚きましたけど」
「クスッ、ホント、ごめんなさい。……むかし、あんな感じで母さんたちに野菜食べさせられたのよ。これで一応八百屋の娘だから、その辺厳しくてね」
肩をすくめたヤミに、テッチが驚いたように食べる手を止める。

「え、八百屋っすか?」
「そーなの!ヤミのお家八百屋さんなんだよ!!」
「へーっ、それ初めて聞いたわ」
意外そうにリズも目を見開く、ちなみにシリカは、食べるのに夢中で話を聞いていないようだ。

「まぁ、そんなに話すようなことでも無いし、最近じゃもう珍しくなっちゃったけどね、と、リアルの話はここまで。野菜食べたら、お肉も食べなさいね」
「え?いいんですか?」
肉を食べるように推奨するような発言に、またしても意外そうにテッチが聞き返す。それにヤミは少し笑って答えた。

「いいも何も、BBQで肉食べずに何食べるのよ。それにね、テッチ君、野菜で舌を休めながら食べると、肉もよりおいしく感じるの。「バランスよく食べる」って、そう言う意味でもあると思うわよ?」
「成程、流石っす!」
そう言って再び肉をぱくつきだすテッチとアイリを見ながら、ヤミは再びクスリと笑う。
と、不意にリズが耳打ちをした。

「……そう言えば、ヤミが食材屋やってたのって、だからなの?」
「え?あぁ……まぁ、そうかもね……おいしいって、人を幸せにするじゃない?あの世界って、元の食材がおいしいと料理スキルなくても料理が少しマシになるシステムだったから……」
少し遠い目をして、ヤミは照れくさそうに笑う。

「ずっと見てきたみたいに、そうしたかったから、かもね」
よくわからないわ。そう言って、ヤミはまた肩をすくめた。
 
 

 
後書き
はい!いかがだったでしょうか!?

と言う訳で今回は、BBQがてらに普段のメンバーと、スリーピングナイツ組の交流を中心に描いてみました。
全体を通して、ナイツのメンバーが全員出るようにしたいなと思っていたんですが……ジュン……ゴメン……

それ以外のメンツに関してはある程度一部のメンツに関しては個性も出しつつ、少し親しみの持てる話になったかなと思っております。

BBQ編はこのあたりでそろそろ折り返し地点になります、次回はBBQと言う舞台は変化せず、少し真面目なお話もいれていく予定です。

ではっ!

 
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