レーヴァティン
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第十話 巨人その十六
「文明、そして文化は同じ物差しでは測れない」
「ああ、それはその通りだな」
「御前もそうした考えだな」
「ああ、八条学園にいるとな」
とかく世界各地から人が集まって来る学園だ、日本だけを見ても全国から集まってくる学園だ。そこにいればというのだ。
「どうしてもな」
「そうした考えになるな」
「他の文明、文化を認めて受け入れる」
「それが真の文明人だ」
「そういうことだな」
「だからだ、この世界の文明も同じだ」
英雄は久志に言った。
「そうした船もある文明だ」
「変わってるんじゃなくてか」
「そうした文明ということだ」
「そう考えて受け入れることか」
「そこには必然性がある」
「空を飛ばないと向こうの島を行き来出来ない」
「そうした必然性もある、だから空を飛ぶ船も出来た」
英雄はデルフォイで読んだ書のうちの一冊の内容を思い出しつつ言った。
「そういうことだ」
「成程な」
「そうだ、では俺はその船に乗る」
「これからな」
「その為にサラミスに向かっているのだからな」
「港町か、とはいってもな」
サラミスのことを思ってだ、英雄は不意に笑って言った。
「海の港町じゃないな」
「言うなら空港だ」
「そうだよな」
「その港町はまた違う」
「海、川にしても港町はな」
それはというのだ。
「その幸があったりするけれどな」
「空の場合は違う、鳥はあるかも知れないがな」
「鳥な」
「とはいっても海の幸ではない」
そして川の幸ともだ。
「それはない」
「港町っていってもな」
「空港の街と同じだ」
「ええと、あれか」
空港の街と聞いてだ、久志は彼等の本来の世界のその街の名前を出した。
「アンカレジみたいな」
「アラスカのだな」
「あそこみたいな感じか」
「そうだろうな」
「そうか、アンカレジか」
「行ったことはあるか」
「いや、ないんだけれどな」
アンカレジにはとだ、久志は英雄に言った。
「アメリカには行ったことがあるけれどな」
「アンカレジはないか」
「ロスに行ったぜ」
そこだと言うのだ、久志が言ったアメリカの街は。
「あそこにな」
「カルフォルニアか」
「あそこにな」
「あそこは今は日本人も日系人も多いな」
「結構色々な人がいてな」
「その中に日本人も日系人もいてだな」
「結構日本語も通じたぜ」
そうだったというのだ。
「まあアンカレジじゃないけれどな」
「だから知らないか」
「直接はな」
そうしたことを話しながらだ、そしてだった。
二人はサラミスに向かって行った、二人の別れの時は近付いてもいた。
第十話 完
2017・3・17
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