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夢幻水滸伝

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第十一話 岐阜城にてその三

 まずは関ヶ原から逃れた、そして朝まで東に退きつつ陣形をまとめて残った兵達の状況を見ていた。
「数は三万程です」
「一万やられたか」
「はい」
 雅は苦い顔で坂口に述べていた、朝日が眩しいが今はその美しさも見えず苦い顔で戦の話をするばかりだった。
「戦死か戦傷かはぐれたか」
「どっちにしろ一万だぎゃな」
「それだけ失いました」
「随分やられたぎゃ」
 坂口は苦々しい顔で述べた、周りには滝沢と正宗もいる。
「実に」
「そうですね」
「ああ、負けだがや」
 坂口は彼等にとって受け入れられ難い現実を自ら言った。
「完全に」
「申し訳ありません」
「謝る必要はない、勝敗は戦の常だがや」
 坂口は項垂れた雅を言葉で立たせた。
「それはええだがや」
「そう言って頂けますか」
「問題は次だがや」
 これからだというのだ。
「それだがや」
「そうですか」
「そうだがや、岐阜城に入るだがや」
「ではそこで」
「あの城で踏ん張ってだがや」 
 そのうえでというのだ。
「この負けの分を取り返すだがや」
「わかりました、それでは」
「はい、それではです」
「我等もですね」 
 滝沢と正宗も言ってきた。
「岐阜城で戦いますか」
「そうしますか」
「そうするだがや、三万おるだがや」
 敗れはしたがというのだ。
「この三万を岐阜城と周りの砦に置いてだがや」
「我等もですね」
「そのうえで」
「戦うだがや」
 そうするというのだ。
「わかっただぎゃな」
「はい、それでは」
「次は岐阜城で」
「岐阜城は堅城だがや」
 険しい山全体を使って築いた城だ、それだけにその堅固さはかなりのもので坂口にしても絶対の自信がある。
「空からの攻撃もあるにしてもだがや」
「はい、まずは城を守って」
「そのうえで」
「巻き返すだがや、一回の負けで諦めるのは馬鹿だがや」
 だからというのだ。
「まだ戦うだがや」
「わかりました、それでは」
「まずは岐阜城に入りましょう」
「そしてあの城で、ですね」
「籠城戦ですね」
「今度はあの三人もだがや」
 関西の軍勢だけでなく中里達もというのだ。
「意識して戦うだがや」
「はい、あの方々は必ず戦場に出て来る」
 雅は姿勢を正して言った、気はもう取り直していた。
「最初からそう考えてです」
「戦に引きずり出さない様にするのでなくてだぎゃな」
「向こうから絶対に出て来ると考えてです」
 そのうえでというのだ。 
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